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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , オタク臨床心理士・公認心理師は語る。
2023年10月27日
最終更新日 2024年7月30日
目次
唐突ですが、みなさん“推し”はいますか?アイドル、俳優、アーティスト、アニメキャラ等々、最近では幅広い分野で好きな人や応援している人のことを“推し”と表現することが多いですよね。
好きな人について語ったり、聖地巡礼をしたり、グッズを集めたりと、“推し”に関する活動を“推し活”と言いますが、その活動が行き過ぎて好きなものを追い続けているのに疲れてしまうことはないでしょうか。そんな“推し”が、アイドルであれば卒業、俳優であれば引退など、突然いなくなってしまうこともあり、「推しは推せるうちに推せ」という言葉も生まれていますよね。
“推し”は私たちの健康を促進してくれるものですが、“推し活”によって生活が苦しくなってしまうこともあります。最近は“推し疲れ”という言葉もあるように、“推し活”が健康の阻害に繋がってしまうこともあるようです。
一口に“推し活”と言っても、ジャンルや推し方によってその内容は様々だと思うので、このブログでは“推し活”の場面や行動別に考えられる、疲れたり苦しくなる要因を考えてみようと思います。
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まず、とても身近で問題が生じやすいのが、SNS等でのやり取りです。同じ人やキャラ等を推す仲間を作るためにSNSを活用する人は多いのではないでしょうか。
そもそもSNSは匿名で利用できるが故にトラブルが起きやすい特性があります。匿名だからこそ普段直接人に言えないような意見や批判が言えてしまい誰かに批判されたり、知らないうちに自分の意見が拡散されていたり…。文字だけのやり取りになることでコミュニケーション自体が難しくなるため、意図せず誰かを傷つけたり、相手の意見が間違ってるように感じた時にキツイ言葉で返してしまったり…。
例えば今回の“推し活”の話であれば、新しく推し始めた人のことを“新規”、昔から推している人を“古参”と呼ぶことがあり、「推している歴が長いほど偉い」と扱われることがあったります。“古参”から見れば“新規”の人の推し方や考え方が間違っていると感じたりして論争が生まれることは多々ありますよね…。どちらの意見も“推し”への想いの強さゆえに生まれているものだと思います。程よく距離を取りつつ、自分の在り方を持っていけるとよいのではと考えます。
いつもSNS上で他者と言い争いになってしまったり、SNS上でのトラブルが続くことで心身の不調が生じてしまったりする場合には、自身のSNSとの付き合い方、コミュニケーションの取り方を振り返ることが必要かもしれません…。
詳しくはこちらのブログもご参照ください。
グッズを買う、ガチャを引く、“推し”に会いに行く…“推し活”にはお金が必要です。(もちろんお金をかけない“推し活”もあると思いますが)その中でも最近だと「投げ銭」は身近なものなのではないでしょうか。例えばYoutubeだと配信者が配信をしている間にコメントを送ることができますが、お金を払うことで自分のコメントを目立たせる「スーパーチャット(通称スパチャ)」と呼ばれるシステムがあります。これがいわゆる「投げ銭」です。
「投げ銭」をすることで、配信者はその視聴者のコメントを読み上げたり、名前を呼んだりと、普通のコメントでは得られない反応を得ることができます。このとき、自分が「推しに認知される」体験をします。この体験を繰り返すためには、他の視聴者よりも高いスパチャをしなければいけなくなりますが、エスカレートしていくと自分の生活を苦しめることにも繋がってしまいます。
【参考】
また、お金を使うとき、最近はクレジットカードやアプリ等のキャッシュレス決済が普通になっています。お金が減る様子が実際に見えないことで、より気楽にスパチャ等の投げ銭をしてしまうこともあるのではないでしょうか。もちろん、推し活をするために働いているという方もたくさんいらっしゃるとは思います。しかし、生活が苦しくなるほどお金を使ってしまって、それでもやめられない場合には適切な機関にかかる必要があるかもしれません。
その他お金を使い過ぎてしまうことについて、詳しくはこちらのブログをご参照ください。
SNSやお金を使うことも含めて、“推し活”は思ったよりもエネルギーを使っているものです。特に推し始めはとても熱心にSNSをチェックしたり、色々なグッズを集めたり、聖地を巡ったり、推し活への活力が高まるときではないでしょうか。一方、推し活に生活が支配されてしまうと、推しにかける力を消耗しすぎてしまったり、推しを失ったときに生活する活力がなくなってしまう恐れがあります…。
このような状態は、バーンアウト(燃え尽き症候群)に近いように感じます。バーンアウトとは、主に仕事やスポーツなどで取り上げられることが多く、何かに熱心に取り組んでいた人が急にやる気を失ってしまうことを言います。
バーンアウトについての詳しい症状などについてはこのブログをご参照ください。
対人援助職を対象にした研究では、強い情熱を持って取り組んでいても、良い結果が得られなければ精神的に疲労してしまうことが示されています。また、情熱が強い人ほど、良い結果が得られない時に精神的な疲労が高まるということも考えられるそうです。仕事でのバーンアウトには趣味などの適度な余暇活動が有効だと言われていますが、どちらかというと余暇活動に当てはまる“推し活”でバーンアウトしてしまって、仕事や日常生活に支障をきたしてしまうのは悲しいですよね…。
強い情熱を持って何かに取り組むこと自体は素晴らしいことです。しかし、仕事でも“推し活”でも、適度にその他の活動や普段の生活と両立させていく必要があります。人によっては“推し活”に「義務感」や「使命感」を抱くこともあるかもしれません。その情熱を少し弱めたり、上に挙げたSNSでのトラブルなどから離れたりすること(SNSから少し離れてみる)で対処していくことが、自分の健康のために大切になります。
参考文献
【解説】 ぶち(公認心理師・臨床心理士) “推し”は本来人生に彩をくれる、我々を健康にしてくれる存在です。好きなもので自分が苦しんだり不調になることはなるべく避けたいものです。 もちろん推し方は人それぞれで、余暇として楽しむ人もいれば、推しが人生という人もいて様々ですが、それぞれ自分の生活に合った推し方ができると良いのではないでしょうか。 筆者は「推しは推せる範囲で推せ」と思って“推し活”にいそしんでおります。健康に、できる範囲で“推し活”を楽しんでいきましょう…。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |