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タグ : ふ~みん(公認心理師) , メンタルヘルス , 認知行動療法・認知バイアス
2022年7月8日
最終更新日 2024年7月30日
目次
「認知のゆがみ」という言葉を聞いたことがありますか?弊社ブログにおいて過去10パターンの認知のゆがみを取り上げました。
関連項目:【精神科医監修】認知の歪み?10パターンの考え方の癖を解説!
「ゆがみ」と聞くとあまり良いイメージを持たないかもしれません。認知のゆがみとはそもそも何か、何を原因として認知のゆがみが生じるのか、どんな認知のゆがみの治し方があるのかなどをみていきたいと思います。
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認知のゆがみとは、精神科医のベックが基礎を築いた概念で、一言で表現すると「考え方のクセ」のことです。思い込みによって物事を正しく解釈できなくなる現象や、ネガティブな気持ちを起こしやすい考え方・物事のとらえ方のことを指します。
認知のゆがみは現実を不正確に認識させたり、ネガティブな感情のきっかけとなってそのような気持ちを強化し長期間持続させたりします。その結果、些細なことで落ち込んでしまいがちになり、抑うつや不安という感情がうまれるなど生きづらさにつながることもあると言われています。
では具体的にはどのようなものを認知のゆがみと言うのでしょうか。ベックの弟子、バーンズが発展させたと言われる代表的な認知のゆがみを見てみましょう。
白黒思考 | 善か悪か、0か100かという極端なとらえ方で物事を見てしまうこと。完璧主義。 例えば、テストの成績は100点じゃないと納得できず、90点では最悪だと感じる。 |
過度な一般化のしすぎ | 1、2度の出来事を“いつも”と思い込み、わずかな出来事でも気にしてしまうこと。 例えば、友人を食事に誘ったらたまたま都合が悪く断られたことを「いつも断られる、嫌われている」と思い込む。 |
心のフィルター | 物事の否定的な側面ばかりに目が行き、それが全てだと思い込んでしまうため、肯定的な側面があっても偶然だと思い、悲観的にとらえてしまうこと。 例えば、仲の良い友人とケンカをしてしまったために、これまでの楽しい思い出が全部なかったことのように感じる。 |
マイナス化思考 | 何でもないようなことや良いことであっても悪いことに置き換えてしまうこと。 例えば、友人からのメールの返信が遅いと「嫌われているからだ」と考える。 |
結論の飛躍 | 十分な根拠がないにもかかわらず、自分にとって不利で悪い結論を出してしまうこと。 例えば、転勤が決まった際「どうせ新しい場所ではうまくやっていけない」と考え不安になる。 |
拡大解釈/過小評価 | うまくいかなかったことや自分の短所を「向いていない」などと大げさに(拡大)評価し、うまくいったことや自分の長所は「このぐらい当たり前」などと大したことではないと(過小)評価すること。 例えば、パソコン作業は得意だが電話対応が苦手な人が「パソコンはできて当たり前、電話ができない自分は事務職には向いていない」と考える。 |
感情的決めつけ | 理性ではなく、自分が抱いている感情を根拠にして物事を判断してしまうこと。 例えば、テストが不安で仕方なく「きっとうまくいかない」と決めつける。 |
べき思考 | 自分や他人に対して、~すべき、~でなければならないという自己基準があり、その基準に見合わないと怒りや落ち込みにつながり、「ダメだ」と感じてしまうこと。 例えば、テストを受ける日まで勉強も体調管理もしっかりしなければならないと思っていたのに当日体調不良になってしまうと「自分はダメな人間だ」と感じる。 |
レッテル貼り | 他人や物事に対し極端なイメージのレッテルを貼り、その他の部分は見えなくなってしまうこと。 例えば、何かのきっかけでAさんは意地悪な人だと思い込み、親切にされても距離をおいて接している。 |
個人化 | 自分と関係のない出来事でも、責任があるのではないかと関連づけて考えてしまうこと。 例えば、上司が家庭の問題でイライラしているが「自分が何かしたかもしれない」と落ち込む。 |
関連項目:落ち込みの原因は自己注目にあり?理想と現実と原因帰属|対処法も解説
代表的なものを見るだけでも多くのゆがんだとらえ方があることがわかります。人間関係の様々な場面を想定した心理テストや、インターネットサイトでこれらのゆがみや性格傾向をチェックできるものもあります。簡易的なテストでチェックできるのはお手軽ではありますが、実際に認知のゆがみをしっかりチェックできているのかというと『…』なものが多いのも事実。きちんとした手続きを経た認知のゆがみをチェックするテスト(学術的には尺度と呼びます)をいくつか紹介します。
丹野義彦先生他によって作成された19項目で構成された尺度です。後に紹介する認知の偏り測定尺度はこちらのTESを参考に作成されています。
自己志向的誤推論(自身に端を発した誤推論)と他者志向的誤推論(他者や外界に端を欲した誤推論)を測定する尺度です。10項目で構成されているため実施が簡易です。
TESを参考に作成された尺度です。18項目の質問に対し『よくあてはまる』から『全くあてはまらない』で回答、先読み、べき思考、思いこみ・レッテル貼り、深読み、自己批判、白黒思考の6つをチャートで分析できるテストです。
【参考】あなたの考え方チャートを作ってみよう|pdfファイル
では、なぜ認知がゆがんでしまうのでしょうか。
そもそも認知、つまり考え方はこれまでに経験してきた出来事や環境、周囲の人間関係が蓄積されることで形作られます。例えば、家族、友人、会社などの様々な人との関わりの中で「そういうふうにとらえるんだ」と学習するので、元々ゆがんでいた認知が修正される場合もありますが、失敗経験やネガティブな出来事が何度も繰り返されると、物事を悪い方向に決めつけてしまう思考パターンが強まってしまうのです。
たしかに、試験や面接を何回受けても不合格になったり、似たような理由での失恋が続いたりすると、「またか…」「もういやだ」「これ以上傷つきたくない」と思う気持ちからネガティブな考えが浮かんでしまうことは想像できますね。また、誤った認識で記憶したことに由来する場合もあると言われています。
このような原因からゆがんでしまう認知ですが、形成される背景は人それぞれなので正解があるわけではなく、だれしも少なからずゆがみを持っていると言っても良いかもしれません。しかし、極端すぎるゆがみや不必要なネガティブさであったり、それらが長期間にわたっていたりする場合は、修正できた方が生きやすさにつながる可能性があります。
精神科医本山コラム|認知のゆがみは心のコリ?数十件の診察。合間に記録。種々の事務処理。一日を振り返ってみれば文字通り座りっぱなし。人間の体は椅子に座り続けることに最適化されていないのでしょう。肩コリや首コリ、果ては腰痛や膝痛まで。もうボロボロ。日々のマッサージは仕事とセットです。
首コリや肩コリは『あなたは今、生活環境とミスマッチングしているぞ』という体の警告だと読み替えることができるのかもしれません。目に見える身体でさえ自分一人ではどうにかしづらいのに、いわんや心をや、です。『気づけば病に移行していた』というのもやむを得ない部分もあります。目に見えないからこそ、より意識的にコリをキャッチし、コリの段階でケアしておきたいものです。『認知のゆがみ』は、身体におけるコリに相当する心のコリだと考えるとよいかもしれません。
デスクワークという環境を生き抜くために無理な姿勢を続けることが習慣化。結果肩コリ、首コリ、腰痛が伴う、そんな関係性をイメージしてください。肩コリ、首コリ、腰痛の解消法としてのマッサージや、コリを長引かせないためのストレッチが精神科的な治療やカウンセリングに相当するわけですね。
日々を乗り切る結果として身体に生じるものがコリなわけで、認知のゆがみはこれまでの環境をサバイブしてきた結果生じたものだと言えます。つまり、認知のゆがみのおかげで辛いこともありつつサバイブできた歴史もあるわけです。
現在に続く道を生き抜くために生じたコリを『歪み』だとか『偏り』だとか言われてしまうと何だかせつなくないですか?(ブログタイトル全否定ですね)近頃は大分マイルドに考え方の癖と呼んだりしますが、姿勢の癖に置き換えるとすんなり理解できる感じはありますね。
マッサージでコリをほぐすときと同様、認知のゆがみを取り扱うときには『これまでよく頑張ってきたな自分』。そんな気持ちを大切にしてください。
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修正すると言っても、人生経験に基づいて形成された認知はそう簡単に変えられるものではありません。すぐには何とかできなくても、少しずつ対処していけるようになると良いですね。
認知のゆがみの治し方として実践できるいくつかの方法をご紹介します。
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ご紹介した認知のゆがみの治し方は一例ですので、自分に合った方法を見つけるために認知に関する専門の本を読んで知識を深めたり改善方法や治し方を学んだりするのも有効かもしれないですね。
自分ではなかなか気付けないという場合は、カウンセリングを利用し、客観的な視点からの意見を求めてみるのも良いかもしれません。ただしカウンセリングは治療ではありませんので、しばらく継続しても克服できなかったり、思っていたような方向への改善がかなわなかったりする場合もあるということは理解しておく必要があります。
最近では、生きづらさを感じさせている認知や自動的に思い浮かぶ思考を見つけて修正し、気分や行動の変容をめざす認知行動療法(CBT)も広がりをみせています。ご興味のある方はプログラムを受けてみるのも良いかもしれません。
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【解説】 ふ~みん(公認心理師) 『認知』に関する多くの研究は、ネガティブな認知を対象としていますが、中にはポジティブな方向にゆがんだ認知に関する「ポジティブ・イリュージョン」「非現実的楽観主義」と呼ばれる分野の研究もあります。研究者によると、ポジティブな方向に認知がゆがむことで自分を受け入れ尊重する感情が高まり、精神面の健康度が高まるそうです。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |