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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2024年4月26日
最終更新日 2024年8月2日
進級、進学、就職、転職、退職、結婚や出産など、人生にはたくさんの転機があります。転機を迎えるとき、気持ちが不安定になることはありませんか?筆者は進路を考えるとき、いつも漠然とした不安を感じたり、自分の進路に自信を持てなかったりしていました。そこで今回のブログでは、転機を迎えるときにどうして不安になるのか、どうやって乗り越えていくのかを考えていこうと思います。
【参考】
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G-life(ジラフ)
人生は、様々な人との関わりや自身の選択によって進んでいきますが、これを“キャリア”と言います。アメリカの心理学者スーパーはキャリアを「人々が生涯において追求し、占めている地位・職務・業務の系列」と定義づけています。キャリアと聞くと、どんな学校に通って、どこに就職して、どんな役職になって、というような経歴をイメージされるかもしれませんが、どんな仕事に就くのかも含めて広く生き方を示す言葉でもあるんです。
キャリア発達については様々な心理学者が理論を提唱しているので、少し紹介します。
スーパーのライフステージ理論
①成長段階:0-14歳
身体的な発達と自己概念の形成を主とし、自己の興味、関心や能力に関する探究を行う発達段階。仕事に関する空想、欲求が高まり、職業世界への関心を寄せる時期。
②探索段階:15-24歳
色々な分野の仕事があること、そのための必要条件を知り、自己の興味関心などにあわせ、特定の仕事に絞り込んでいく段階。その仕事に必要な訓練を受け仕事につく段階。
③確立段階:25-44歳
キャリアの初期の段階。特定の仕事に定着し、責任を果たし、生産性をあげその仕事に従事し、職業的専門性が高まり昇進する。
④解放段階:45-65歳
確立した地位を維持し、さらに新たな知識やスキルを身に付けその役割と責任を果たす段階。キャリア上の成功を果たすことができれば、自己実現の段階となる。この時期の最後には退職後のライフ・キャリア計画を立てる。
⑤下降(解放)段階:65歳以降
悠久の仕事から離脱し、新たなキャリア人生を始める。地域活動、趣味・余暇活動を楽しみ、家族との交わりの時間を過ごす。
①~⑤の一連のキャリア発達をマキシサイクルと言い、各段階の移行期に起こる出来事のことをミニサイクルと言います(例えば、転職や異動、定年を迎えることなど)。マキシサイクルの中でもミニサイクルが起こり、次のライフステージに向かう間に「新成長―新探索―新確立」という期間が繰り返されてキャリアは発達していきます。
スーパーの理論のマキシサイクルが回るときには、職場等での自分の立場や、社会の中での役割も変わっていきます。人は、大きな環境の変化があったり、初めてのことに取り組んだりすると、体や心に負荷がかかります。謂わば成長痛とも言える負荷を元気に乗り越えられる人もいれば、負荷に圧倒されたり、焦りを感じたりする人もいるでしょう。
例えば、学生は社会に出たり仕事に就いたりするための準備期間です。特に高校や大学に進学する時には、将来何をやりたいか考えて進学先を決める人もいると思います。そして、進学や就職のために勉強をしたり、考えることもやることも多く大変な時期です。そこで進路が中々決まらないことで不安になったり、臨んだ進路に進めず挫折したりといった困難が生じることもあります。
仕事に就いてからは、自分の立ち位置を維持したり、何かに挑戦したりする時期です。しかし、急に仕事内容が変わったり、役職が変わったり、自分では決められない配置転換があったり、環境が変わると仕事ができていても心身に負担がかかります。
高齢になると、仕事を続ける人辞める人がいると思いますが、人生の終わりに向けて生き方を考えていく時期になります。しかし、今まで通り働きつづけようと思っても身体の自由がきかなくなり、今まで問題なくやれていたことが億劫になったりすることがあります。また、定年で退職した後、ずっと仕事に生きてきていた人が急にやることがなくなって不安になったりすることもあります。
【参考】精神科医監修|男性とライフサイクルとメンタルヘルスとーリスクの高いメンタル不調ー
このような困難にぶつかったとき、どのように乗り越えていくと良いのでしょうか…。
尾野(2017)の研究では、若年就業者におけるキャリア焦燥感とその緩和要因について調査されています。その中では、自分の考えや問題の原因を整理すること、独学で新しい知識やスキルを身に付けること、具体的な短期目標を設定して実行していくことによって、現状を冷静に把握したり、今まで気づかなかった自分の強みに気づいたりして、自分のキャリアに対する切迫感が緩和されることが示されています。
また、中本ら(2021)の研究では、一度メンタル不調に陥り仕事から離れた後、どのように仕事に戻って行ったか、どのように考え方が変化していったかが示されています。これまでプライドをもって働いていた人が、職場の人間関係や新しい仕事内容で上手くいかなくなったりしたときに心身に負荷がかかり、メンタルの不調を起こします。そこで病院を受診したり、休職したりして仕事から離れることで現状を整理し受け止めていきます。
【参考】
休職している期間は働いていないことへの焦りや不安が生じますが、メンタルが回復していき、改めて自分がなにをしたいのか、どのように働きたいのかを模索することで今後の方針を考えていくようになります。
ここで参考になるのが、アメリカの心理学者シャインが提唱した“キャリア・アンカー”という概念です。これは、仕事や人生において何を大切にするのか、何を軸にするのかを、船の錨(アンカー)で例えた言葉です。
8つのキャリア・アンカー
①専門・職能別能力
自分の得意な分野において、さらに能力を伸ばしていきたいと、専門家であることを重要だと考える。
②全般管理能力
経営管理に関心があり、リーダーや責任のある地位に就きたいと考える。
③起業家的創造性
学生時代から企業したり、新しく事業を起こしたり、とにかく試してみたいと考える。
④保障・安定
地位は関係なく、安定した雇用を維持することが重要と考える。
⑤自律・独立
プライベートが侵害されず、自由に生活できることを重視する。
⑥奉仕・社会貢献
自分のやることが価値のあるものであることが重要だと考える。
⑦純粋な挑戦
非常に困難な状況を乗り越えたいと考え、乗り越えることが「成功」だと考える。
⑧生活様式
ライフスタイル全体のバランスと調和を重視したいと考える。(ワークライフバランスを大切にする)
この8つに限らず、自分にとって何がキャリア・アンカーなのかを考えることは大切です。例えば、ずっとやりたかった仕事に就けても負荷が高くて続けられなくなっては悲しいですよね。そこで、自分が望むのはその仕事を続けることなのであれば、働き方を工夫することで負荷を下げると良いかもしれません。また、仕事以外に好きな趣味などがあるのに、仕事が忙しすぎて取り組めないというのも辛いものです…。大事にしたいのが趣味であれば、忙しすぎない仕事を選ぶ必要があるかもしれません。
まずは自分が今どのような状態にあるのか把握し、自分にとって何が大切か考え、そのためには何をすればいいか具体的に目標を立てていけると良いのではないでしょうか。
参考文献
【解説】 ぶち(公認心理師・臨床心理士) 自分はやりたいことができているだろうか、周りの人はもっとこうしているんじゃないか、と焦ったりすることもあるかと思います。 でも自分の人生は自分で進んでいくものなので、自分のやりたいこと、やれることをじっくり探していけると良いのかなと思います。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |