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タグ : メンタルヘルス , メンタル不調・精神疾患解説 , 本山真(精神科医師・産業医)
2021年11月27日
最終更新日 2022年7月28日
確かに痛みがあるのに病院で検査を受けたら異常がない。『気のせいでは?』と言われてしまったけど確かに痛い…。一体この痛みは何なんだろう。もしかしたら重大な病気なのでは?
その痛みや吐き気などのご不調、ご不調に伴う不安感、もしかすると身体表現性障害(身体症状症及び関連症群)かもしれません。本ブログでは、身体表現性障害を精神科医師が解説します。
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身体表現性障害とは『さまざまな苦痛を伴う身体症状が長期に持続し,適切な検査を行っても身体症状を医学的に説明できる異常が認められない疾患』です。
痛みや不快感、吐き気といった身体症状があり、日常生活に支障をきたしているのにも関わらず、原因となるような疾患等が認められません。
心と身体の相互作用による結果と考えられており、遺伝的要因や環境的要因(ストレスなど)、その人の特性(パーソナリティ特性や認知特性)が原因だと考えられています。近年は生物学的要因(神経伝達物質やホルモンのバランス)の関与も示唆されています。
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医療機関を受診して検査を受けて、医学的な問題は見つからないという説明を受けても『自分は大病にかかっているのではないか』、『現代の医学では解明できない奇病にかかっているのではないか』といった強い不安を抱え、複数の医療機関を受診していることもあります。患者様はあくまで身体疾患(体の病気)を疑ってらっしゃるため、心療内科・精神科への受診が遅くなってしまうことも珍しくありません。
身体表現性障害の診断は『精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM-5)』の診断基準に基づいて行われます。
身体表現性障害には4つの下位分類があります。そして診断の際に用いられる『精神疾患の診断・統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)』の改定に伴い、最新版である第5版(DSM-5)から『身体症状症および関連症群』という名称に変わりました。
従来の『身体表現性障害』という分類は『身体症状及び関連症群』、『身体化障害、疼痛性障害』は『身体症状症』、『心気症』は『病気不安症』、『転換性障害』は『変換症/変換性障害』に変更され、『他の医学的疾患に影響する心理的要因』が追加されています。DSM-5日本語版が刊行され数年経過していますが、まだまだ変更後の名称に馴染みがない方も多いのではないでしょうか(かく言う私も馴染んでいません笑)。
①身体症状症(身体化障害・疼痛性障害)
慢性的な身体症状が長期的に持続し、日常生活に支障をきたします。
胃痛や胃の不快感、体がだるさ、吐き気、めまい、微熱、動悸、手足のしびれ、身体の痛みなど、多岐にわたる身体症状がみられますが、適切な検査をしても異常がみられません。ご自身としては不調を自覚しているわけですから、医師から異常がないことを説明されても納得はできません。納得のいく説明を求める結果として医療機関の受診を繰り返すことが増えるわけです。原因のわからない不調が続くことにより、抑うつや不安の合併が見られる病気でもあります。
訴えは通常は30歳以下で始まります。大半の方は複数の身体症状を有しますが、重度の症状を1つだけ有するという方もいます。治療は、病因・病態に応じて行われるため多岐にわたり、効果も様々です。
薬物療法として、抗うつ薬が疼痛症状に効果があるとされています。また、心理療法として、認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)、リラクゼーション法などが有効とされているほか、必要に応じて家族に対して心理教育が行われることもあります。
※心理教育:本人や家族に、必要な知識や情報を伝え、どう問題に対処するかを一緒に考えていくこと。そうすることで、本人や家族がどう問題に取り組んだらよいか分かったり、治療に対するモチベーションにつながったします。
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②病気不安症(心気症)
些細な身体症状や正常な身体機能(鼓動など)を誤解してしまい、自分は『病気にかかっているのだ』、または『かかるのではないか』といった強い不安を抱きます。実際に身体症状がある場合もあれば、ない場合もあります(身体症状がある場合も、軽度な症状です)。
不安に伴い、生活や人間関係に支障をきたします。不安にとらわれ仕事や生活における役割が手につかなくなったり、医師や周囲の人間に安心できるような言葉を繰り返し求め、周囲の人をうんざりさせてしまうこともあります。医療機関で重篤な病気が否定されたとしても、納得することが出来ず、不安や心配が長期に渡って続きます。
発症は成人期初期に最も多く、男女差はありません。病気不安症は慢性化する傾向がありますが回復することもあります。治療においては医師との信頼関係が重要となる他、認知行動療法が有効だとされています。
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③変換症/転換性障害
変換症は、神経系の病気によく似た身体症状が特徴です。突然、腕や脚の麻痺、痙攣発作、失明や失声、難聴といった神経症状や神経学的障害が生じます。変換症は、ストレスや心的外傷といった心理的・精神的なストレスを、身体症状として経験(転換)するものと考えられています。過去には『ヒステリー』と呼ばれていたこともあります。
発症は、小児期後期から成人期早期にかけてが多い傾向にありますが、どの年齢でも起こりえます。男女差では、男性よりも女性の方が多くみられます。治療としては医師との信頼関係が重要になります。考えられる身体的な病気を否定し、重篤な病気ではないことを伝えると、安心して症状が軽快または消失していくこともあります。また、心理療法として認知行動療法や催眠療法が用いられることもあります。
【参考】
催眠療法|厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
身体表現性障害(身体症状症及び関連症群)は、症状を説明する身体疾患が認められないことが特徴の一つです。したがって身体疾患の可能性を除外することが必須となります。
身体疾患を除外するための検査を実施していない場合は、まずは他科のご受診を案内する場合や、血液検査を提案する場合があります。健康保険適応の場合、心療内科・精神科の初診は2500円~3500円ほどかかりますが、血液検査等を実施した場合、窓口負担が1000円~2000円ほど高くなります。
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