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精神科産業医監修|職場の健康診断~産業医の職場巡視とは~

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2024年7月12日

職場の健康診断である産業医の職場巡視とは何か解説

労働者が50人以上の職場で選任する必要のある産業医。その役割は「労働者の健康と安全に関して、専門的な立場から助言や指導を行なうこと」です。様々な業務がありますが、そのうちの1つに「職場巡視」というものがあるのをご存知でしょうか?

 

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【監修】

本山真

株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役

日本医師会認定産業医/精神保健指定医

医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長

【執筆】

chico(公認心理師)

 

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産業医による職場巡視とは?


産業医による職場巡視とは事業場を見回り、業務内容や作業環境が労働者に有害な影響を与える恐れがないか確認することです。もう少し詳しく説明すると、職場巡視の目的は次のようにまとめられます。

  • 職場における安全衛生上の課題を指摘してもらい、改善するため
  • 業務内容や労働環境を産業医に理解してもらうため
  • 従業員や組織全体のことを産業医に理解してもらうため

私たちが健康診断を受けて生活習慣を見直すきっかけとするように、職場も専門家である産業医に定期的に見てもらうことで、リスクを早期発見し、より良い状態にしていく契機とすることができます。産業医による職場巡視は「職場の健康診断」と換言できるかもしれません。

 

なお、産業医に職場や従業員のことを分かっておいてもらうことは当然重要ですが、逆に従業員に産業医がどんな先生なのか分かっておいてもらうことも大切です。みなさんの職場で、産業医の先生の顔を知っている社員はどれくらいいるでしょうか?そもそも産業医の存在を知らない方も多いかもしれません。職場巡視は、産業医の先生に対する認知度を上げる機会となります。従業員の方が、必要なときに「先生に相談してみよう」と思いやすくなれば、不調の早期発見や予防になり得るでしょう。

 

産業医による職場巡視は義務なのか?


労働安全衛生規則第15条により、産業医の職場巡視は、基本的に月1回行うことが義務となっています。違反した場合は50万円以下の罰金を科される可能性もあります。

 

〈労働安全衛生規則第15条〉

「産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」

 

職場巡視を行わずにいて、労働災害が発生した場合は「安全配慮義務違反」とされる可能性が高くなります(精神科産業医監修|労働安全衛生法をわかりやすく解説)。

 

産業医の職場巡視の基本ステップ


職場巡視はどのような流れで行うのが良いのでしょうか。基本的なステップを、岩崎(2015)に基づきPDCAサイクルでご紹介します。

 

PLAN

①年間の職場巡視を計画

②業務内容や業務工程を改めて確認

③日程や同行者を調整

〈ポイント〉

ただでさえ日々の業務が多忙ななか職場巡視を実施するわけですから、可能な限り効率的・効果的に行いたいものです。職場巡視のご担当者様につきましては、ある程度事前準備をしておくことをおススメします。産業医の先生に特に重点的に巡視してほしい場所やテーマがあれば、事前に整理しておいたりチェックリストを作っておいたりするのも有効です。

 

DO

④職場巡視を実施し、その後に打ち合わせ

⑤巡視報告書を作成

〈ポイント〉

産業医による職場巡視当日は、可能な限り普段の職場の様子を見てもらうようにしましょう。職場巡視の結果、改善すべき課題が見つかったらそれはより良い職場をつくる絶好のチャンス!全てを即時解決することは困難ですから、改善の優先度も確認しておきます。改善すべきポイントに加えて、良く出来ている点についても確認しておきましょう。職場全体へとフィードバックすればモチベーションアップに繋がるかもしれません。

 

CHECK

⑥改善した事項について、産業医へ計画や報告を提出

〈ポイント〉

すぐに対応できない事項については、計画や検討事項を書いておきます。この段階で巡視報告書を完成させることをおススメします。職場内での共有がスムーズになるだけでなく、労働基準監督署などから情報提示を求められた場合にも速やかに対応できるからです。

 

ACTION

⑦衛生委員会で報告、審議

⑧対策後にも残るリスクへの対応を計画

〈ポイント〉

労働者50人以上の職場であれば、産業医の選任だけでなく、衛生委員会の設置も義務となっています。衛生委員会にて、巡視の結果を報告し、必要な改善策を話し合いましょう。指摘を受けたにも関わらず対処しないまま事故が起きた場合、「安全配慮義務」を怠ったとして責任を問われる可能性があります。

 

職場巡視のチェックリスト


職場巡視では、具体的にどのような箇所を見てもらうのがいいのでしょうか。重量物の運搬方法、危険物質の保管方法、化学物質の取り扱いなどなど…製造業の作業職場は、チェックしてもらうべきポイントが分かりやすいと思います。一方でオフィス職場では、従業員の危険に直結するようなリスクが少ないため、想像しづらいかもしれません。

 

作業職場とオフィス職場とに共通して産業医に巡視してもらうとよい項目をご紹介します。

✓温度や湿度は快適か

✓受動喫煙防止対策、換気などはできているか

✓作業に適切な明るさがあるか

✓騒音はないか

✓整理・整頓・清掃が実施されているか

職場環境は、そこで一日の大半を過ごす従業員の健康状態に、大いに影響します。特にパソコンを用いた作業が行われている場合、眼精疲労などを防ぐため、明るさの確認が不可欠です。

【こちらもどうぞ】

 

✓健康診断は定められている通りに実施されているか

✓休憩室の環境は適切か

✓長時間労働になっていないか、有給休暇は取れているか

✓ストレス対策は実施されているか

体の健康だけでなく、心の健康にまつわる部分もチェックします(ストレスチェックについてはこちら:【医師監修】企業が取り組みたい職場メンタルヘルス対策)。職場巡視では、現場の管理者と産業医が意見交換することもできるため、働き方を見直すチャンスになり得ます。

✓安全通路や非常口は確保されているか

✓消火器や消火栓、AEDや救急用具は整備されているか

✓防災備品は管理されているか

心身の健康リスクだけでなく、防災の観点からも巡視できると理想的です。特にオフィス職場では軽視されやすいポイントですが、社員の安全確保、さらに企業のBCPにおいても重要です。

 

産業医による職場巡視は、リスク低減による改善だけではなく、取り組みや工夫を増やすことによる「より良い職場づくり」にも繋がります。ただ、巡視を実施するだけして、具体的な改善案は放置されてしまう場合も。どこまでどのように改善したらいいのか、外部の専門家やサービスに相談するのもおススメです。

 

参考文献


岩崎明夫(2015)労働衛生対策の基本④職場巡視のポイント 産業保健21 80,12-15.

三浦那美(2023)産業医がすべき職場巡視とは?目的やポイントについて徹底解説!mediment(2024年2月16日参照)https://mediment.jp/blog/industrial-physician-workplace-patrol

リモート産業保健(2024)産業医による職場巡視とは?目的や頻度・法律についても解説(2024年2月16日参照)https://sanchie.net/media/industrial-physician-workplace-patrol-once-a-month-checklist-penalties-explanation/

株式会社メディカルトラスト(2023)産業医の職場巡視とは?巡視の頻度はどれくらい?(2024年2月16日参照)https://www.medical-tt.co.jp/column/1415/

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