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スキーマ療法とは?自動思考とスキーマの心理学|精神科医監修ブログ

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2023年5月5日

精神科医監修のもと自動思考とスキーマとスキーマ療法を心理学的に解説

 

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自動思考とは?


考え方には癖があることをご存知でしょうか?過去にも『認知の歪み』のコラム内でご紹介してきましたが、人にはそれぞれ『つい陥りがちな考え方の傾向』があると言われています。『考え方の傾向』自体は決して悪者ではなく、この傾向のおかげで物事を効率的に理解したり過去の経験を活かして行動ができたりする大切な役目ももっています。

 

例えば、飲食店の店員さんがお客さんに挨拶をしても返事がもらえないというシチュエーションにおいて、その都度「無視された!ショック!」と思っていたら仕事に差し支えます。蓄積してきた経験と経験に基づく知識があるため「返事がないことはよくあること。みんな休みの日くらいボーっとしたいよね。」と受け流すことができているわけです。

 

上記のように何かあったときにふと思い浮かぶような考えを自動思考といいます。自動思考の内容は人それぞれで、先ほどの例のように受け流すために上手く働く一方で、内容によっては逆の結果を引き起こすこともあります。例えば、先ほどの「どういう状況であれ無視するなんてひどい!」という自動思考も存在し得るわけです。自動思考があるから生活がスムーズに運ぶけれど、内容によっては不適応を起こす可能性もある、ということです。

 

 

私たちは自動思考に影響され何らかの行動を取り、その行動によってまた自動思考が出現し次の行動へとつながるという連鎖を起こしています。要するに、何か出来事があるたびに自動思考という「考え」を経て、そこから感情や思いが生まれるのです。一方、自動思考をあえて意識することはありませんよね。実際、友人に声をかけて返事がなかった瞬間に「自分は返事をしてもらえないと無視をされたと感じ、悲しくなるという自動思考をもっているので落ち込んでしまいそうだ」とやたら冷静に分析できる人は稀です。他方、コツさえ掴めば自分の自動思考に気付くことは可能なんです。

 

スキーマとは?


自動思考を形づくるにあたり、更にその下に『スキーマ』というものが根を張っています。スキーマとは、心理学の世界では「認知の土台となっている、価値観・ルール」のことをさします(伊藤, 2018)。自動思考はコツさえ掴めば意識化できますが、更に深い部分にあるスキーマに気付くことは非常に難しいと言われています。加えて、そこに手を加えるということはとても時間と根気を要する作業になります。スキーマにアクセスする体系立ったアプローチをスキーマ療法といいますが、伊藤(2018)はこれについて「いわば心の体質改善」と表現しています。それほどにスキーマは深い部分に潜んでいるのです。

 

 

スキーマは幼少期から様々な経験を経て形づくられていきます。気持ちが満たされたか、そうではなかったか…その結果、どう感じるようになったのか…。自動思考と同様に、世の中を渡っていくにあたって「つらくない」、つまり不適応にならないタイプのスキーマであれば問題化することはないでしょう。問題化するとき、つまり不適応なとき、どんな傾向がみられるのでしょう。

 

伊藤(2018)によれば、スキーマ療法を考案したヤング博士によると、人は誰でも5つのエリアの中核的感情欲求を持っているといいます。これは子どもが育つときに、親など養育者との関係の中で満たされたいと願う当たり前の欲求です。同時に、大人になっても欠かせない「内なる子ども」のニーズでもあります。中核的感情欲求が満たされないとき、以下のようなスキーマが生まれることがあります。

 

  • 「ひとりぼっち・つながれない」スキーマ(愛されたい…守られたい…が満たされないとき)
  • 「自信がない・ひとりじゃできない」スキーマ(有能な人間になりたい…が満たされないとき)
  • 「他者優先」スキーマ(自分の思いを自由に表現したい…大切にしたい…が満たされないとき)
  • 「がんじがらめ」スキーマ(自由にのびのびと動きたい…が満たされないとき)
  • 「野放し」スキーマ(自律性のある人間になりたい…が満たされないとき)

 

上記のようなスキーマが根底にあると、スキーマから生まれる自動思考も当然影響を受けていきます。私達はその自動思考で考え行動するので、例えば、ひとりぼっち・つながれないスキーマが根底にある場合は、そうでない場合よりも『他人は信じられない』という考えに結びつきやすいでしょう。

 

スキーマ療法とは?


スキーマは永遠に変えられないのでしょうか?いいえ、変えられます。それがスキーマ療法です。

 

ただし、上記のようにこころの奥深くに働きかけていくため変えるには根気と長い時間が必要です。そして、多くの場合そのスキーマは自分の考えを形作るコアな部分です。コアな部分に触れることは、深い部分で揺さぶられるということでもあります。スキーマ療法に取り組んで行く中で、少なからず動揺することも想定しておきます。

 

少なからぬ動揺に備えて、まずは「安心できるもの」を用意しましょう。安心できるものとは、イメージでもモノでも構いません。昔幸せを感じた思い出の風景や、好きなキャラクター、大切な人に貰ったペンなど、こころが動揺したときにそこに戻ることで安心できるようなものを用意します。つらいと感じたとき、いつでも現実に戻って来られるようにリストアップしておきましょう。

 

次に、自分の状態がどうなっているのか、以下の要素を使いながら分析してみます。スキーマが刺激されたとき、自分の中の5つのモードがどうかかわりあっているでしょうか。

 

ー傷ついた子どもモード

こころの中の子どもな自分が、怒り・悲しみ・さみしさを感じている状態です。

ー傷つける大人モード

傷ついた子どもモードに対して厳しく接する心の声を指します。

ーいただけない対処モード

傷つける大人モードに更に傷つけられた傷ついた子どもモードが起こす不適応的な行動のことです。

ーヘルシーな大人モード

健康的にものごとに対処していく大人なモードを指します。このモードをうまく動かすことがうまく対処していくための一歩となります。

ー幸せな子どもモード

気の赴くままに遊ぶ、自由な子どもの自分です。

 

傷ついた子ども(不適応スキーマ)がどのように言っているのか?そこに、傷つける大人は、どう追い打ちをかけているのか?例えば、「ひとりぼっち・つながれないスキーマ」に対し、傷つける大人が「どうせ自分は誰からも必要とされていないんだから、一人でいた方がいい!」と追い打ちをかけたとします。すると、更に傷つけられた傷ついた子どもモードの自分が、いただけない対処として「引き籠る」や「敢えて嫌われて、自分が望んで拒否していると思うようにする」などの行動を取るようになります。

 

ここまで分析ができたら、次の段階に進みます。ヘルシーな大人モードの登場です。ヘルシーな大人は、傷ついた子どもに対して肯定的・共感的に関わり愛情をもって接するモードです。「どうせ自分は誰からも必要とされていないんだから、一人でいた方がいい!」という気持ちに対し、繰り返し肯定的な声掛けをしつつ、いただけない対処に対しても否定をするのではなくより良い方法を探求するように考えていきます。その結果、幸せな子どもモードが出てきた場合には見守っていきます。

 

 

ここまでを何度も何度も繰り返し、スキーマを見直していきます。詳しくは、心の体質改善♥「スキーマ療法」自習ガイド 伊藤 絵美(2018)を読んでいただくのがおすすめです。

 

 

参考・引用文献


  • ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 Book2 伊藤 絵美(2011) 医学書院
  • 心の体質改善♥「スキーマ療法」自習ガイド 伊藤 絵美(2018) アスク・ヒューマン・ケア出版部

 

【解説】

maitake(臨床心理士

考え方-広くは価値観や人生観という言葉でも表現できるものかもしれませんがーとは、人それぞれの経験によって培われた「生き方」でもあります。そこには必ず長所があるはずです。

だか上手く行かない、自分の生き方が自分を苦しめている部分があるのかもしれない、そんな風に感じられるときには、自動思考やスキーマを振り返ってみてもよいかもしれません。

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【監修】

本山真(代表取締役社長)

精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長

2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年には医療法人ラックを設立し綾瀬メンタルクリニックを開院。2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

 

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