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2023年8月11日
最終更新日 2024年8月2日
さて、突然ではありますが、みなさんは日々の生活の中で以下の項目にどのくらいあてはまりますか?
□漠然とした不安を抱えている
□ソワソワして、落ち着きがなくなる
□テンションが高くなり、興奮してしまう
□緊張する場面が多い
□肩こり、頭痛がひどい
□匂い、音、光、人から受ける影響に過敏
□カフェインをしばしば取っている
□対人関係で気を張り、疲れてしまう
ちなみに筆者である私は、チェックが沢山つきそうです。。。
みなさんはどれくらい当てはまりましたか?
コロナ禍も落ち着きを見せるなか、お仕事によってはリモート業務から対面での業務に少しずつ戻り始め、人との関わりが増え緊張する場面が以前より多くなったことで負担に感じている方もいるかもしれません。私自身も、満員電車に乗るたびに、不安を感じたり緊張してしまうことがあります。また、スマートフォン等の電子機器が普及し、便利な世の中であると同時に、気づかないうちに、光や音といった刺激に晒されている機会も増えています。
【参考】
私たちが生きていく上で不安とストレスはつきものです。不安やストレスは様々な形で私たちの生活に支障をきたします。そもそも「不安」とは、起こりうる危険に対して生じる感情であり、危機的な状況から自分を守るために欠かせないものですが、行き過ぎてしまうと心身に悪影響をもたらしてしまいます。
【参考】
また、環境の変化による刺激や緊張の影響が続くと自律神経に対して大きな負担となります。「自律神経」とは、呼吸、循環、消化、代謝、体温調節、排泄、生殖などの活動を調整している神経です。
自律神経は、私達の意志とは関係なく働いています。したがって、自律神経と上手に付き合うためには少しのコツがいります。自律神経と上手に付き合うためのコツを知り習慣化し『安心』を少しずつ育むことができれば、不調時や問題が発生した時も、気楽な状態を保つことができ、逆境や挑戦にも対応できるようになります。
今回は、自律神経に関する比較的新しい理論である『ポリヴェーガル理論』を取り上げ、ポリヴェーガル理論とはどのようなものかを紹介し、自律神経の持つ可能性について説明していきます。
※2023年現在、ポリヴェーガル理論は科学的に証明されていると言い難い理論です。自律神経の仕組みを理解しようとする考え方の一つ、それ以上でも以下でもないという取り扱いが正しいでしょう。更なる検討がなされることを期待しています。
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ポリヴェーガル理論とは、イリノイ大学精神医学科名誉教授 スティーブン・ポージェス(Stephan W.Poges)博士が1994年に発表した、自律神経系の適応と反応に関する新しい理論です。
先ほどもご説明した自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つに分けられます。
この2つの神経は、シーソーのような動きで私達の身体のバランスを保っています。
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今回ご紹介しているポリヴェーガル理論を発見したポージェス博士は、交換神経と副交感神経の中でも特に「副交感神経」の働きに注目しました。ポージェス博士は研究を進めていく中で、「つながりを育む」という哺乳類の特性に着目することで、私達人間の副交感神経をさらに2つに分けられることを発見しました。
すなわち、自律神経は、交感神経と2つの副交感神経の計3つの神経で成り立っているとうことになります。この2つの副交感神経はそれぞれ「背側迷走神経」と「腹側迷走神経」と呼ばれています。「背側迷走神経」とは、主に一人でリラックスする際に働き、「腹側迷走神経」は他者と心地よく過ごす時に働く神経です。
浅井(2021)は、背側迷走神経を「休息と消化を司る『バッグスイッチ』」、腹側迷走神経を「他者と心地よくつながる『フロントスイッチ』」とまとめています。それでは、改めて交感神経と副交感神経の成り立ちを説明していきたいと思います。
まず、土台の部分に「バッグスイッチ(背側迷走神経)」と「フロントスイッチ(腹側迷走神経)」の2つで構成されている副交感神経があり、前者を「休息・消化モード(背側迷走神経)」、後者を「つながりモード(腹側迷走神経)」と言います。私達人間にとってこの2つの副交感神経が育ち、うまく機能していることが重要です。
活発に活動したり危険を察知した時には「交感神経」が働きます。交感神経は「戦う・逃げるモード」(闘争・逃走反応)への切り替えを行う神経です。人混みの中で押された時にイライラしたり、怒っている人や騒がしい場所の近くにいるとドキドキして不安になるのは、交感神経が自分自身を守るために働いているからです。交感神経がほどほどに働くことは大切ですが、近年、過剰に働いている人が増加していると言われています。
自律神経には、もう1つ注目していただきたい機能があります。その機能は「凍りつきモード」と呼ばれています。私たち人間をはじめ、哺乳類全般は交感神経では対応しきれない場合があります。例えば、動物が外敵から命を守るために「死んだフリ」を実際に行うことがありますが、それこそが「凍りつきモード」であり自分を守ることを目的とした副交感神経の働きです。
凍りつきモードに陥ると、生命を維持することのみを目的として人体はあらゆる生体活動を低下させます。人間における低エネルギー状態は、うつやひきこもりといった困りごとの可能性を高めます。本来であれば、アクセルである交感神経が高まった後は、副交感神経がマイルドなブレーキとして働き「休息・消化モード(背側迷走神経)」か「つながりモード(腹側迷走神経)」に落ち着きます。2つの副交感神経の土台が育っていないと、急ブレーキともいえる「凍りつきモード」に陥ってしまうというわけです。
現代社会ではアクセルを担う交感神経と、ブレーキを担う副交感神経を酷使し疲弊している人が増えてきています。
一体どのように自律神経と付き合っていくことが望ましいのでしょうか。その答えは、2つの副交感神経の中でもフロントスイッチの役割を担っている「腹側迷走神経」にあります。他者とのつながりを司る腹側迷走神経がしっかりと機能することで、自分の中で起こる感情や反応に客観性が持てるようになります。ストレスがかかる場面や緊張する場面に対して、「つながりモード(腹側迷走神経)」に入ることができれば、心身が穏やかな状態に戻ることができるのです。
参考文献
【執筆】 真田(公認心理師) 今回はポリヴェーガル理論に基づいて、自律神経の仕組みについて解説しました。次回は自律神経のバランスを取るアプローチをご紹介しようと思います。 |