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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2023年11月10日
最終更新日 2024年8月2日
唐突ですが、みなさんカラオケはお好きですか?
日々生活をしていると、「これは言うと面倒だから言わないでおこう」とか「こういう言い方は良くないから言葉を選ぼう」とか、あるいは「どう言ったらいいか分からないから黙っておこう」とか、会話の中で色々なことを考えることがあると思います。それを後から誰かに話して発散しようと家族や友人に話してみても、上手く伝えられなかったり、共感が得られなかったりして逆にモヤモヤが溜まってしまうことはないでしょうか?
そんな溜まった感情を筆者はカラオケで歌ったり、他の人の歌を聞いたり、通勤中も音楽を聴いたりして発散させています。今回は、音楽が持つ様々な力や、音楽を用いたメンタルヘルスへのアプローチ、音楽を聴いたり歌を歌ったりすることによるストレス発散効果についてお伝えできたらと思います。
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まずは音楽が持つ、感情や気分に対する力についてお話しします。
ストレスを軽減させる
音楽には実際にストレスを軽減させる効果があることがよく研究されています。例えば、手術前後に好きな音楽やリラクセーション音楽を聴くことで、ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」の値が減少したというものがあります。もちろん心理的(主観的)にもリラックスしたり、ストレスが軽減された感覚を得ることはできますし、実際に身体もリラックス状態になっているのです。
感情を動かす
元気な曲:「楽しい」「爽快」「ワクワク」…
穏やかな曲:「和む」「癒される」「落ち着く」…
暗い曲:「悲しい」「憂鬱」「切ない」…
などなど、音楽には感情を動かしたり、生み出したりする力があります。曲の雰囲気によって、また、聞く人によっても異なる感情が生まれると思います。暗い気持ちの時に明るい曲を聞いて元気になれる人もいれば、暗い気持ちの時に同じような心情を歌う曲を聞いて落ちつける人もいます。その感じ取り方や、メロディーを重視するのか・歌詞を重視するのかなどの聞き方の違いはありますが、音楽には私たちの感情を動かす力があるのです。
ただ、しんどい時に明るい音楽を聴いてイライラするときもありますよね…。自分に合った曲の選び方ができれば、ストレス解消の方法を1つ増やせると思うので、少し余裕がある時に色々な音楽に触れてみてはいかがでしょうか…!
感情を感じ取る
少し話を深めると、アレキシサイミア(失感情症)の傾向と音楽を聴くことによる感情の動きが関連していることが示された研究があります。アレキシサイミアとは、自分の感情に気づけなかったり、自分の感情を言語化・振り返ることが難しかったりする性格特性のことを言います。ストレスが溜まったとき、多くの人はそれを言語化したり振り返ったりすることで対処できますが、アレキシサイミア傾向の人にとっては難しく、避けがちな方法になります。
感情(情動)と身体は密接に関係しており、例えば強い不安を感じた時に心臓がドキドキしたりします。アレキシサイミア傾向の人は、そういった感情を抱いたとき言語化して解消することが難しいため、そのまま身体に症状が出やすくなり、不調(心身症)が生じてしまいます。
そこで、音楽が有効かもしれない、という研究があるのです。ある研究では、アレキシサイミアの特徴である「感情の同定困難」(例えば、自分がなぜ怒っているのか分からない)が強いほど、音楽を聴いて生じる感情が大きくなるという結果が得られています。
音楽はもちろん歌詞も大事ですが、もともと言語的な理解ができなくても色々と感じ取れるものです。そのため、感情を言葉にすることが困難なアレキシサイミア傾向の人にとっては、かえって感情を解放させる有効な手段になるのではと言われています。
【音を使うこと(音楽療法など)】
音楽療法の定義
「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の軽減回復、機能の維持改善、生活の質の向上となる行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」
引用:日本音楽療法学会
音楽には、治療的な効果もあります。それはリラックスすることで心身の緊張を解く、といったことだけではありません。例えば、認知症の患者さんに対しては集団音楽療法が用いられることがあります。集団音楽療法とは、複数人で音楽を様々な方法で用いながら行うものです。
▶昔を思い出し、コミュニケーションが促進されて症状が軽減される
▶達成感を味わえることでQOL(生活の質)が上がる |
特に認知症の患者さんの場合は、記憶の想起が難しくなったり、コミュニケーションが難しくなるため、言語だけでなく音楽を用いて交流を行うことがあります。他にも、発達の遅れがある子どもに対しても用いられることがあり、この場合も他者とのコミュニケーションを促進させ、発達を促します。
音楽はリラックスできる雰囲気を作りながら、私たちの能力を引き出したり、他者との交流を促す力があるのです。
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【歌を歌うことで発散】
ここでようやくカラオケのお話ができるのですが…カラオケはストレス発散の例としてよく挙げられるのではないでしょうか。
カラオケには心理的な不安やストレスを解消させる効果があることが示されています。特に歌を歌うことは、音楽を聴くことと比べて心を生き生きと活性化させる作用があると考えられています。
先ほど認知症の患者さんについての例を挙げましたが、高齢の方がなじみのある歌を歌うことで記憶や感情が活性化されます。このように、歌を歌うことは心を落ち着かせるだけでなく、心を生き生きとさせ、人の記憶や能力を引き出す力もあるのです。
最近では「ヒトカラ」の専門店もあったりしますよね。集団で遊ぶことが苦手でも、人前で歌うことが苦手でも、最近は一人で活用しやすい雰囲気があります。一人なら人目を気にせず歌を練習できますし、気軽に気分転換をすることもできます(特に一人を勧めているわけではありませんが!)。一人でなら感情を込めて歌うことも少し抵抗が減るのではと思うので、試してみてはいかがでしょうか。
参考文献
【解説】 ぶち(公認心理師) 今回は音楽の様々な力について、色々な研究などを紹介しつつお伝えしてみました。音楽は、言葉と比べてより簡単に感情を感じ取ったり表現したりできるものなのではないかと思っています。 もちろん自分が抱えているものを言葉で表現できれば、自分の中で整理できたり、他の人からの助けを得やすくなります。そうすれば心身の不調に繋がりにくくなりますし、表現できた方がより生活しやすくなることもあると思います。 しかし、それが難しい人、言語化して振り返る余裕がない時などは、音楽を用いて一旦リラックスしたり、気持ちを発散してみましょう…。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |