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【気になる効果やエビデンス】音楽療法とは【デメリットはどうなの?】

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2022年10月21日

最終更新日 2024年2月3日

音楽療法の歴史や気になる効果・エビデンス・デメリットなど解説

朝晩涼しくなり、秋の訪れを感じる季節になりました。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、など様々な秋が思い浮かびますね。

 

 

芸術の秋もよく耳にしますが、心理療法にも芸術を活用したものがあることはご存知でしょうか。それは芸術療法と呼ばれており、表現者として創造に携わることで癒しを得るもので、完成した作品の良し悪しよりも作るプロセスを楽しむことが重要だとされています。また、言葉では説明できない感情や心の内面を絵や音楽などの表現手段によって理解することを可能にするので、言語力の有無が関係せず、幅広い場面や対象に適用できる心理療法なのです。

 

芸術療法の中には絵画療法、音楽療法、心理劇、箱庭療法、コラージュ療法などの種類があり、名前だけ聞くとどれも堅苦しく感じるかもしれませんが、実は子どもの頃に楽しんでいたお絵かきやごっこ遊びも内容としては似ているものなのです。…と思うと少し身近に感じませんか?

 

今回はこれらの中から、音楽療法についてご紹介したいと思います。

【こちらもどうぞ】

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日本における音楽療法の歴史


日本ではそれほど馴染み深くない音楽療法ですが、アメリカ、ドイツ、イギリスなどの諸外国では、治療として有効なものだと認められているものなのです。日本での研究の歴史はおよそ50年と言われており、第二次世界大戦の終戦後しばらくしてから、ごく少数の音楽家たちが臨床現場での実践や普及活動を開始したのが始まりとの説があります。

 

日本音楽療法学会によると、音楽療法は「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的にしようすること」と定義されています。

【参考】一般社団法人日本音楽療法学会

 

ちょっと本筋から離れますが、音楽を聴いて悲しい気持ちを癒したり、カラオケで好きな曲を歌ってストレスを発散したりした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はこれも簡単な音楽療法のようなもので、このように、音楽の持つ特性を利用したプログラムを通して行う治療法のことを言います。

 

音楽療法の効果・エビデンス


音楽療法は前述したように言語能力の有無を問わないので、対象は乳幼児から高齢者までと広範囲です。その中でも発達障害児や認知症高齢者を対象とするプログラムも多くあり、実施目的も発達支援、介護予防、病気や事故後のリハビリテーション、認知症の症状緩和、リラクゼーションなど多岐にわたります。音楽療法を通じて人との交流機会をもったり心の安定につなげたりすることなどもねらいとされています。

 

音楽療法の対象

 

例えば、終末期の人が家族や親しい友人と好きな歌を歌う、音楽を奏でる、一緒に聴くことで残りの人生を充実したものとして過ごす時間を増やす、検査や治療に伴う不安や苦痛を和らげリラックスさせる、脳血管障害の後遺症で動作や発語が困難な場合のリハビリとして歌を歌ったり楽器に触れたりする、といった活用方法もみられます。

 

音楽療法自体は集団でも個人でも実施できるので、介護施設など大勢の人が集まる場所での実施はもちろん、寝たきりの人や集団に適応するのが苦手な人への個別の実施も可能です。集団であれば他者との関わりや孤独感の減少につながり、個人であればストレスの解消や抱えている感情へのアプローチが期待されます。

 

音楽療法や音楽介入の効果については、認知症や軽度認知障害における認知機能・実行機能・エピソード記憶の改善、がん患者における痛みや不安などの緩和といったエビデンスレベルの高い報告があります。

 

【参考】

The Effect of Music-Based Intervention on General Cognitive and Executive Functions, and Episodic Memory in People with Mild Cognitive Impairment and Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis of Recent Randomized Controlled Trials

Music Therapy as a Form of Nonpharmacologic Pain Modulation in Patients with Cancer: A Systematic Review of the Current Literature

 

音楽療法のデメリット


このように、とても穏やかで楽しい心理療法のように感じられる音楽療法ですが、デメリットがあることも忘れてはいけません。そもそも音楽が好きではなかったり聴力が低く聞き取ることが難しかったりする人の場合は、ストレスの解消どころか増加につながる可能性があります。また、音楽の働きかけを強く感じる人の場合は、それまで吐き出せなかった感情が急にあふれ出し止まらなくなったり、予想もしなかった情動反応を引き起こしたりすることもあります。

 

音楽療法のデメリット

 

音楽療法に限った話ではなく、仮に周囲から良いと勧められる心理療法であっても、自分自身に合っているかどうかを見極め、専門家の指示の下で行うのが安全です。

 

音楽療法に必要な資格


では、音楽療法の専門家とはどのような人を言うのでしょうか。病院や福祉施設などでプログラムの一環として行われる場合もあるかもしれませんが、医師や看護師ではなく、主に「音楽療法士」という資格をもったスタッフが担当します。

 

音楽療法士はその名の通り、音楽療法を実施することができると認められた人に与えられる民間の資格です。音楽や音楽療法についての知識や技術(どのような音楽を選び、どのように使用するか)に加え、医学・福祉・心理学等の関連分野についての知識、また援助の技術・実践力を持ち合わせている専門家ですので、プログラムの構成や進行役なども担っています。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

最近幼児教育で取り入れられることも多い『リトミック』も、音楽に合わせて動作を行ったり気持ちを表現したりするので、音楽療法の一種と考えられています。小さな子どもたちが注意深く音を聴くことで集中力を養ったり、音に合わせて身体を動かすことで体力向上につなげたりするという見解も見受けられます。

ふ~みん記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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