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タグ : ayano(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2021年3月25日
最終更新日 2024年9月13日
【精神科医監修】マインドフルネスシリーズ オンラインでマインドフルネスをご体験いただけます |
メンタルヘルス、セルフケアに関する情報をお届けしています!
私たちは、すでに過ぎ去った昔の出来事を思い返したり、これから起こる未来のことを考えたり、“今”ではないどこかに思いを馳せたりします。懐かしい思い出に浸る時間、将来に気持ちが躍動する瞬間は人生を充実させます。過去の前例を参照することで未来を拓くヒントを得ることもあるでしょう。ポジティブな過去、将来に思いを巡らすことは一般的な人間の営みであり、時に創造的な営みだと言えますが、注意していただきたいのが、過去・未来へのネガティブなとらわれです。
過去の失敗・後悔、将来への心配・不安ですね。ネガティブなとらわれは、怒りや悲しみ、恐怖といった感情を生み出します。かけがえのない“今”が、過去・未来によって浸食されてしまうわけです。過去や未来、評価や判断にとらわれず、“今、この瞬間”を大切にする生き方・心理過程、それが【マインドフルネス】です。日本マインドフルネス学会は、マインドフルネスを以下のように定義しています。
“今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、 評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること”
やや概念的な定義だと感じられるかもしれませんが、マインドフルネスは非常に具体的です。トレーニング(呼称としてはエクササイズが一般的)を通じて、マインドフルな状態を体験、獲得していく、という体系化された手続きがあるんです。概念的どころか、トレーニングの回数を重ねることで、マインドフルな状態になるためのコツを掴んだり、マインドフルな状態が発達したりすることを指して『脳の筋トレ』と例えられるほどに実体的だったりします。
※ちなみに…マインドフルネスの対義語は、「マインドレスネス」(Mindlessness)、「マインドワンダリング」(Mind-wandering)。“とらわれ”の逆ですから“さまよい”がイメージしやすいでしょうか。あちこちに意識が飛び交っている状態です。
私のひいき目を差し引いても、最近、『マインドフルネス』脚光を浴びてますよね。試しにCiNii(学術情報ナビゲータ[サイニィ] 国内の論文、図書・雑誌などのデータベース)で『マインドフルネス』をキーワードに検索してみると、2021年3月現在までおよそ1000件がデータベースに登載されています。最初の報告が2002年、2015年あたりからデータベース搭載が急増、同水準を維持しています。
グラフは筆者作成
マインドフルネスが国内で脚光を浴び始めた2015年、何があったんでしょう。調べてみると、“Google(グーグル)社が研修メニューとしてマインドフルネスを取り入れている”と国内メディアが取り上げ始めたのが2014~2015年あたりのようです。
ちなみに、Google社は2007年頃よりマインドフルネスを導入。その後、Googleに加え、Yahoo!(ヤフー)、ゴールドマン・サックス、アップル、ナイキ、インテルなど大企業もマインドフルネスを導入。日本においても、メルカリ、Sansan、リクルート、パナソニック、トヨタ自動車株式会社など数多くの有名企業で導入されるようになったのは皆さんご存知の通りです。
続々と有名企業がマインドフルネスを取り入れていることからおわかりのように、“マインドフルネスは正式なヘルスケアの一種”なんです。信仰する宗教、宗派の制限による機会損失を減らすために、“宗教色を取り除く”という工夫を取り入れているのも企業から好まれる一因かもしれません。
注目度が上がるメリットの一つは、様々な研究者によるリサーチが進むことです。多分に漏れず、マインドフルネスも多くの研究報告が蓄積されてきています。例えば、Holzel ら(2011)によるMRIを用いた研究では、マインドフルネスによって後帯状皮質、側頭頭頂接合部、および小脳部分灰白質の増加が確認されています(※1)。この辺りの知見を基盤として、記憶力や学習プロセス、生産性や効率性の向上を期待され、ビジネス領域への爆発的な広がりにつながったんでしょうね。その他にも、ストレスや不安、うつ病や睡眠障害といったメンタルヘルス不調への効果が報告され(※2、※3)、【科学的に立証されたマインドフルネスの効果】としてメディアに取り上げられるようになりました(こちらもどうぞ:【精神科医師監修】マインドフルネスとは③効果、副作用を解説!)。
マインドフルネス研究者の一人であるWilloughby B Britton氏は、マインドフルネスの効果が誇大に宣伝されることで、科学的根拠に基づいた治療を受けられなくなるとの懸念を示し、その効果はまだ科学的根拠が不十分であることを指摘しています(※4、※5)。2021年に発表された、エビデンスが強いシステマティックレビュー(メタアナリシス)においても、メンタルヘルスに対し好影響を認めるものの、まだまだ研究の余地があると結論づけられています(※6) 。
頼りないように感じてしまうかもしれませんが、科学的根拠とは反証に対し説明を重ねるプロセスを経て慎重に積み上げられていくものです。つまり、マインドフルネスは科学的に検証する価値を認められているとも言えるわけです。『あれにもこれにも効果があります!』って一見魅力的ですが、冷静になれば怪しいですもんね笑
まとめてみればこういうことです。
※1 Holzel BK, et al.(2011). Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Research: Neuroimaging,191(1),36-43. ※2 Khoury B, et al.,(2013). Mindfulness-based therapy: A comprehensive meta-analysis. Clinical Psychology Review,33(6),763-771. マインドフルネスにおける209件の研究、1万2000人以上のデータを対象としたメタ研究では、マインドフルネスは、ストレスや不安感の減少、うつ病緩和に効果的であることを結論付けています。 ※3 Black DS, et al.(2015). Mindfulness Meditation and Improvement in Sleep Quality and Daytime Impairment Among Older Adults With Sleep Disturbances A Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine,175(4),494-501. 中程度の睡眠障害を抱えた高齢者を対象として研究をおこなったところ、マインドフルネスによって睡眠の質が改善され、睡眠衛生教育(主には認知行動療法に基づいて良質な睡眠を得ることを目的として行われる)よりも効果が高かったことを報告しています。 ※4 Nicholas T. Van Dam, et al.(2017) . Mind the Hype: A Critical Evaluation and Prescriptive Agenda for Research on Mindfulness and Meditation. Perspectives on Psychological Science,13(1),36-61. ※5 Health Day News「Be ‘Mindful’ of the Hype」October 10, 2017 ※6 Julieta Galante, et al.(2021). Mindfulness-based programmes for mental health promotion in adults in nonclinical settings: A systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. PloS Medicine, January 11. |
【監修】 本山真(精神科医師/医療法人ラック理事長)
【執筆】 ayano(公認心理師・臨床心理士) 医療関係を中心として経験を積んできました。 メンタルヘルスに対する偏見やスティグマの解消、メンタルヘルスサービスのアクセシビリティ向上に関心があります。 |