ブログ

【精神科医監修】ゲーム依存・ゲーム障害とは?原因・診断基準・治療法を解説

タグ : ,

2026年2月20日

「ゲームがやめられない」は意志の問題ではない ─ゲーム障害を脳と心理から理解する

―ちょっとだけ遊ぶつもりだったのに、気づいたら夜中になっていた

―やらなきゃと思うことがあるのに、ゲームのことが頭から離れない

そんな経験をしたことはありませんか。

 

誰しも一度は『何か』にのめり込む経験をしたことがあると思います。それが“抜けられなくなる”ほど続くとき、そこには脳と心の仕組みが関わっている場合があります。

 

WHO(世界保健機関)は”ゲームにのめりこみ抜けられなくなる”状態を「ゲーム障害(Gaming Disorder)」として分類しました。

ゲーム障害を考えるうえでは、長時間のプレイそのものが問題なのではなく、「日常生活に支障が出ているかどうか」が判断のポイントになります。

本コラムではゲーム障害を解説します。

 

株式会社サポートメンタルヘルス公式LINE ID

メンタルヘルス情報配信中!友だち登録どうぞ!

 

ゲーム障害とは何か|WHOが定めた診断基準と誤解されやすいポイント


近年、「生活に支障をきたすほどゲームがやめられない」状態は、深刻な社会・健康問題として取り扱われており、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類・ICD-11において「ゲーム障害(Gaming Disorder)」として正式に認定されています。有病率は2~5%とされており、これは概ね生活習慣病と同程度の有病率だと言えます。

アメリカ精神医学会のDSM-5においても、正式な診断名としては採用されていないものの、「インターネット・ゲーム障害(Internet Gaming Disorder)」という形で、“さらなる研究が必要な状態”として付録に掲載されています。

ゲーム行動の問題は、社会的にも臨床的にも注目が集まっている領域なのです。

 

DSM-5とICD-11の違い|「依存」と「障害」をどう理解するか


ICD-11では、ゲーム障害を次のように定義しています。

  • ゲーム行動をコントロールできない
  • 他の生活上の関心や活動よりもゲームが優先される
  • 問題が起きているがゲームを続ける、またはより多くゲームをする
  • ゲーム行動パターンは重症で、個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野において著しい障害を引き起こしている

という状態が、12か月以上持続していること。

DSM-5でもほぼ同様に、以下のような特徴を持つ場合に「インターネット・ゲーム障害」が疑われます。

  • ネットへのとらわれ
  • ネットができない時の禁断症状
  • 以前に比べて、ネットをする時間を増やす必要がある(耐性)
  • ネット使用を減らそうとするが失敗におわる(コントロール障害)
  • 心理的、社会的問題が起きていると知りながらネット使用を続ける
  • ネット使用の結果として興味、趣味、娯楽をなくす、または、ネット以外に興味、趣味、娯楽がない(ネット中心の生活)
  • 嫌な気分から逃れるため、または解消するためにネットを使う(気分修正)
  • ネット使用について、家族、治療者、または他の人をだましてきた(嘘)
  • 大切な人間関係、仕事、教育や出世の機会を、ネット使用のために危うくしてきた、または、失った(機能障害)

このうち5項目以上が12か月以上続く場合、臨床的には「ゲーム依存の可能性がある」と判断されます。

 

両者に共通している重要なポイントは、「長時間ゲームをしている=障害」というわけではなく、”ゲームによって社会生活にネガティブな影響が生じていること”、”ゲーム行動をコントロールすることが困難であること”であり、行動嗜癖(依存症)の一種として整理されていることです(関連項目:依存とは何か?依存症との違いは?なぜ依存行動は繰り返されるか?)。

 

なぜやめられなくなるのか|脳の報酬系とストレスの影響


困りごとの分類として行動嗜癖にカテゴライズされているということは、つまり”ゲームがやめられないのは個人の意志の弱さ”ではないということです。メカニズムとして、脳の“報酬システム”が深く関与していると考えます。

報酬系とドーパミン(ドパミン)の働き

ドーパミンは快楽物質と称され、かつては、報酬を得ることで分泌されると考えられてきました(ゲームで言えば、ゲームで勝ったり、レベルアップしたり、レアアイテムを手に入れた瞬間ですね)。近年では、ドーパミンは、”結果”よりも”結果を予測する瞬間”に強く反応する可能性が示されています(Schultz et al., 1997)。つまり、実際の報酬よりも「次はどうなる?」「今回は当たるかもしれない」という期待そのものが、脳に快感を生むのです。ゲームの魅力を高める様々な演出そのものが、神経伝達物質レベルで人間を”ゲームの虜”にさせるわけですね。

刺激への耐性

人間の脳は、同じ刺激を何度も繰り返すと、刺激への慣れが生じます。結果として、以前と同じ楽しさを得るために、より強い刺激が必要になるという現象が起こります(Volkow et al., 2009)。ゲームをもっとやりたくなる、もっと強い敵と戦いたくなる、もっとレアなアイテムが欲しくなる、もっと高いランクを求めたくなるのは、単なる欲深さではなく、脳が刺激に対して鈍感になっていく自然な反応です。刺激への慣れが進むと”楽しむため”ではなく”物足りなさを埋めるため”にゲームをプレイする、という状態に陥ります。

ストレスとの関係

ストレスが強いとき、人は“すぐに気分を変えられる行動”に引き寄せられやすくなります。Koob & Le Moal(2008)は、依存の進行を「負の強化モデル」として説明しています(参考:精神科医監修|ABC分析とは何かわかりやすく解説ー行動について考える心理学ー)。”辛さから逃れる”、”不安を和らげたい”、”頭を切り替えたい”といった目的でゲームが使われていると、報酬がなくても行動が維持されるようになり、「やめたいのにやめられない」という状態が強化されます。

 

治療・支援の考え方と有効性


一定の状態に進行すると、本人の努力だけではゲーム行動のコントロールが難しくなります。ゲーム障害の治療・支援はどのような考え方に基づき行われ、どれほどの有効性があるのでしょうか?Danielsenら(2023)、Zajac ら(2020)のシステマティックレビュー・メタアナリシスを交えて整理します。

ゲーム障害治療の基本的な考え方

① 自分の状態を知る

あらゆる困りごとに共通していることですが、現在の困りごとがどの程度生活に影響しているのか(支障をきたしているのか)を整理します。家族や知人といったインフォーマルなサポート資源、専門機関といったフォーマルなサポート資源も活用しながら「今の状態」を見つめ直すことが第一歩です。

② 心理的な支援の基本的な考え方

ゲーム障害に対する心理的な支援として、認知行動療法、心理教育的プログラム、家族療法、集団カウンセリングなどが実施されています。基本的な考え方としては「プレイしたくなるきっかけ」を避ける工夫や、「少しだけなら…」という考え方を整理し、ゲーム以外の時間を充実させていくことを目標とします。

③ 生活リズムと環境を整える

ゲーム障害の背景には、うつや不安、睡眠不足や孤立、ストレスなどが重なっていることが多いとされます。デバイスの置き場所を変える、使用時間を決める、代わりにできる活動を増やすなど、「生活全体のバランスを取り戻す」ことが、回復の基盤になります。

有効性

  • 最も多かった介入方法は行動療法。続き、心理療法(ほとんどが認知行動療法)、薬物療法、予防プログラム、身体活動、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)
  • 効果の高い介入方法は、心理療法であり、介入群は対照群に比べ、中等度から大きな効果量を示した(g  = 0.68、95% CI [0.34, 1.01]、p  <.001)。その他の介入についても治療効果が認められた
  • 平均効果で見ると、介入種別間において差は認められない(F(17.4、1)= 0.03、p  =.864)
  • いずれにせよ、研究規模の小ささ、研究手法のばらつきなど、有効性を検討するための厳密さを満たしていない。何より、ゲーム障害の測定方法に大きなばらつきがあるため、研究間で測定しているゲーム障害が同様のものなのか、そこから得られる効果が同等のものなのか評価できない

認知行動療法

  • ランダム化比較試験4件のうち、対照群と比較して効果が認められたのは2件のみであった
  • 1件はマインドフルネスをベースとした認知行動療法、もう1件は認知行動療法とブプロピオン (bupropion:日本では未承認の抗うつ薬) との併用であった
  • マインドフルネスベースの認知行動療法・ブプロピオン併用の認知行動療法について、対象を増やした大規模研究が待たれる

薬物療法

  • 抗うつ薬(ブプロピオン・エスシタロプラム)、抗ADHD薬(メチルフェニデート、アトモキセチン)はゲーム障害の症状を低減させた
  • ゲーム障害の症状の減少率は、エスシタロプラムよりもブプロピオンが高い
  • いずれにせよ、ランダム化比較試験が少ないこと、投与期間が短いこと、サンプル数が少ないこと、から有効性を論じることはできない

総論

  • ゲーム障害に関する研究は飛躍的に増加している
  • 一方で、症状評価基準が定まっていないことやランダム化比較試験の少なさなど、エビデンスを論じるにはまだ長い道のりがある

 

【監修】

本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

執筆】

ぶち(臨床心理士・公認心理師)

今回はゲーム障害を解説しました。

まず大前提として『ゲーム』そのものが『悪者』ではありません。ストレスを発散したり、積み重ねの努力を実感できたり、誰かとつながることができたり、メンタルを支えてくれる側面は確かにあります。筆者自身、習慣的にやっているゲームがあり、生活のルーティンの一部になっていたりします。

もしあなたが『気づいたらゲームが生活の大半を占めている』と感じるのであれば、それは意思の弱さに起因するものではなく、脳の仕組みとストレス環境の相互作用が生じさせている困りごとかもしれません。

『自分ではコントロールできないほどゲームが習慣化されている』とお感じなのであれば、自分の生活を振り返ってみるきっかけにしてみてください。そして周囲の人や専門機関に一度相談してみることをお勧めします。

皆さんがゲームをすることで苦しむことがないよう、楽しいゲームライフを送れることを願います。

ぶちコラム一覧

 

関連記事