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精神科医監修|ABC分析とは何かわかりやすく解説ー行動について考える心理学ー

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2023年9月29日

最終更新日 2023年11月17日

行動について考える心理学『ABC分析』とは何かをわかりやすく解説

 

みなさんは,「これしなきゃなあ」とか,「これしたいなあ」と思ったことを,どれくらい行動に移せていますか?例えば,最近好きなものばかり食べ過ぎたから,ダイエットしようかなあ…と思っているのに,食事を変えるでもなく,なんとなくだらだらいつもと変わりない生活を続けているという現状に共感する人は多いのではないでしょうか。

 

今回は,そんな「思っていてもなかなかできない」行動について,なぜ行動に移せないのかという理由と,行動をする/しない(行動の増加・減少)を左右する仕組みについて解説していきます。

 

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なかなか行動に移せない理由について考える


なぜ,「思っていてもなかなか行動に移せない」のか,その理由として,大きく3つが考えられます。

 

その①:行動しにくい環境にいるから

人の行動は,その場面の状況や環境に左右されることがあります。冒頭で挙げたダイエットの例で考えてみましょう。食事の量を減らすことでダイエットしよう!と考えていても,それは魅力的で,おいしそうなお菓子が家にあったら,ついつい食べてしまいたくなりませんか?

 

このように,行動しようと思っていても,その行動がしにくい環境であると,行動しようと思っていてもなかなか行動できないということが考えられます。

 

理由②:行動が難しい,または行動が身についていないから

理想と現実にはギャップがあるように,行動にも希望と実行にギャップがあることがあります。極端な例かもしれませんが,夜勤や日勤など,お仕事の都合上,毎日決まった時間に寝ることが難しい方に,生活リズムは大切だから,絶対22時には寝た方がいいよ!とアドバイスをしても,その方が毎日22時に寝るのはなかなか難しいかと思います。

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このように,いくら「これをしよう!」と思っていても,その行動をしようと思っている人にとって,その行動のハードルが高いと,その行動はできないことが予想されます。また,自分自身ではなく,他の人に対して,これをしてほしいと思っていても,その人がその行動を身に着けていないという,行動する以前の問題という可能性もあります。

 

理由③:行動がいい結果につながらないから

当たり前なことかもしれませんが,おいしいからご飯を食べる,楽しいから友達と話す/ゲームをする,というように,何か行動をしたことで,「してよかった」というポジティブな感情が芽生えると,またその行動をしようという気持ちが強くなり,行動が継続されます。反対に,その行動をしても,いまいち効果を実感できなかったり,ポジティブな感情が芽生えなかったりすると,なかなかまたその行動をしようとはならないことは,想像できるかと思います。

 

思っていてもなかなか行動できないということはあるあるだと思います。そして,行動ができない・持続しない背景には,その行動の状況や環境,その行動をしたことで得られる結果など,行動を取り巻く様々なものが関わっていることが考えられます。

 

行動する・しないはどう左右される?行動について考えるABC分析(機能分析)


この,行動をとりまく「状況」,「行動」,行動をした後の「結果」という,行動に関する一連の流れに着目し,なぜその行動が成り立っているのかを考えるアプローチに,ABC分析(機能分析)というものがあります。ABC分析は,心理学の分野である行動分析学や応用行動分析学で用いられるアプローチ方法です。

 

ABC分析を理解するために必要な考え方は大きく2つあります。

 

①行動の増加・減少につながる刺激

行動の増加・減少に関わるものに「刺激」があります。刺激には,いい刺激と,悪い刺激があります。専門用語では,いい刺激は「好子」(こうし),悪い刺激は「嫌子」(けんし)と言います。

 

いい刺激は,行動にとって良いものであり,いい刺激をプラスすることで行動は増加し,いい刺激をマイナスすることで行動は減少します。一方で,悪い刺激は,行動にとって悪いものであり,悪い刺激をプラスすることで行動は減少し,悪い刺激をマイナスすることで行動は増加します。

 

ちなみに,いい刺激の代表例としては「ほめる」「おいしい」などが挙げられます。悪い刺激の代表例としては「叱る」「お金/時間が減る」などが挙げられます。

 

②行動の増加・減少の4つの仕組み

行動が増加・減少する仕組みは4つあり,行動の増加・減少には,いい刺激(好子)と悪い刺激(嫌子)がプラスされるか,マイナスされるかが関係しています。行動が増加することを,行動が強化する,といい,行動が減少することを,行動が弱化する,と言います。ちなみに,行動が完全になくなることを,行動が消去する。と言います。ここでは,わかりやすいように,行動が増加する・減少する,という表現で説明していきます。

 

 

1つ目は正の強化と言われるもので,いい刺激をプラスすることで行動が増加するというものです。例えば,仕事が繁忙期という状況で,精力的に仕事をした結果,褒められたとします。これは,褒めという「いい刺激」をプラスすることで,精力的に仕事をするという行動が増加しています。

 

2つ目は負の強化といわれるものです。悪い刺激をマイナスすることで,行動が増加するというものです。同じく,仕事が繁忙期という状況で、精力的に仕事をした結果,残業が減ったとします。これは,残業という「悪い刺激」をマイナスすることで,精力的に仕事をするという行動が増加しています。

 

3つ目は負の弱化といわれるものです。いい刺激をマイナスすることで,行動が減少するというものです。例えば,会議の場で,積極的に発言をした結果,休憩時間が短くなったとします。これは,休憩時間という「いい刺激」をマイナスすることで,積極的に発言をするという行動が減少しています。

 

4つ目は正の弱化といわれるものです。悪い刺激をプラスすることで,行動が減少するというものです。同じく,会議の場で,積極的に発言をした結果,反論されるとします。これは,反論という「悪い刺激」をプラスすることで,積極的に発言するという行動が減少しています。

 

参考文献


  • ユーナス・ランメロ、ニコラス・トールケネ(2009).「臨床行動分析のABC」 日本評論社

 

【執筆】

かなた(公認心理師)

思っていてもなかなか行動に移せなかったり,行動が持続しなかったりする背景には,その行動を取り巻く環境や行動の結果が関係しています。

心理学の分野では,その人にとって望ましい行動を「適応行動」,望ましくない行動を「不適応行動」と呼んでおり,適応行動を増やしたり,不適応行動を減少させたり,なくしたりする際にABC分析を用います。

行動を取り巻く環境や行動の結果について整理する,すなわちABC分析をすることで,自分自身の行動を理解できるだけでなく,会社での教育や子育てにも応用できる可能性があります。具体的なABC分析の活用方法については,こちらでご紹介しております。

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【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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