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【精神科医監修】ABC分析の活用例やポイントを公認心理師が解説

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2023年11月17日

最終更新日 2023年11月17日

ABC分析(機能分析)の活用例やポイントを精神科医監修のもと公認心理師が解説

 

前回は,「思っていてもなかなかできない」=行動ができない理由と,行動する/しない(行動の増加・減少)について考えるアプローチ方法であるABC分析について解説しました。今回はABC分析をもっと知りたい!という方に向けて,ABCの活用方法についてご紹介します。

 

第一弾は,以下のブログをご覧ください。

精神科医監修|ABC分析とは何かわかりやすく解説ー行動について考える心理学ー

 

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身近な例を通じてABC分析のおさらい


まず,ABC分析の活用方法をご紹介する前に,ABC分析について少しおさらいしておきます。ABC分析とは,着目する行動に関して,行動を取り巻く「状況」,「行動」,行動をした後の「結果」といったような,行動に関する一連の流れに着目し,その行動の成り立ちについて考えるアプローチ方法のことです。このABC分析を活用することで,継続したい行動をより継続しやすく,減らしたい行動をより減らしやすくする可能性が高まります。

 

ABC分析は行動を定着させる,または問題のある行動を減少させる際に用いるアプローチ方法です。しかし,皆さんが思っている以上にABC分析は生活に身近なものであると筆者は考えています。

 

例えば,テストでいい点とりたい!と思ったときに,テストでいい点を取れる勉強方法について考えて実践しますよね。そして,考えた勉強方法を実践した結果,いつもより覚えるのが簡単だったり,効率よく勉強ができたり,実際にいい点を取れたりすると,その勉強方法は今後の勉強の時にも使おうと思いませんか?

 

いい点を取るために環境を整え,いい点を取るための行動を実践し,いい結果が伴えばその行動は今後も継続する,というように,一つ一つの行動には,行動が維持する何かしらの理由があるのです。したがって,何気なく意識せずしている行動でも,ABC分析に当てはめて考えることができます。

 

ABC分析を活用するための2つのポイント


上述の説明でABC分析をより身近に感じてもらえた(?)ところで,ここからは,実際にABC分析を活用する際のポイントについて説明していきます。ポイントは大きく以下の2つがあります。

 

①1人1人の刺激の意味を考える

②より行動が増えやすい方法を意識する

 

①一人一人の刺激の意味を考える

当たり前かもしれませんが,同じリアクションでも,うれしいと感じる人もいれば,嫌だなあと感じる人もいます。つまり,ある行動に対する結果の受け取り方は十人十色なので,継続したい,または継続させたい行動があったときに,その行動をする人にとって,いい刺激は何なのかを考えることが必要です。

 

具体的な例を挙げて考えてみます。例えば,会議での話し合いの場で,発言したときに,周りから注目を浴びたとします。このとき,周りから注目されて皆さんならどう感じますか?

 

筆者は,「みんなが自分の意見を聞いてくれている!」と感じて嬉しく思います(いい刺激)。しかし,「できるだけ聞かないで…恥ずかしいから」といったように,うれしいと感じない人もいると思います(悪い刺激)。このように,周りからの注目がうれしいかどうか,すなわち,その刺激をいいと捉えるか,悪いと捉えるかは人それぞれです。自分が褒められてうれしいからと言って,他の人にもただほめればいいという話ではないのと同じです。

 

②より行動が増えやすい方法を意識する

これは,適応的な行動を定着させるときに特化したポイントになります。以下の5つが,行動を定着させる際に意識するといいとされており,作業療法でも参考にされています。

 

①「即時性」:目標となる行動が現れたらすぐに褒める

②「多様性」:できるだけ多くの種類の強化刺激を用いる

③「明示性」:特に,刺激をプラスする最初の段階において,正の強化刺激そのものをはっきりとした明瞭な形で示す

④「具体性」:いい行動の内容を具体的に褒める

⑤「関連性」:適切な行動と直接関連した強化刺激が効果的である

 

 

具体例を通じてABC分析を活用したアプローチ方法を理解する


ABC分析を活用したアプローチ方法には様々なものがあります。

今回は,代表的な方法を3つご紹介します。

 

①確立操作

確立操作とは,いい刺激や悪い刺激の力を強めたり,弱めたりすることです。

例えば,夕食を食べる,という行動でも,空腹時とおやつを食べた後では,おいしいと感じる度合いが違うと思います。このように,同じ行動でも,行動をする状況に手を加えることで,行動を増加・持続させることができます。

 

②代替行動分化強化

代替行動分化強化と聞くと,難しいもの!?と思うかもしれませんが,そんなことはありません。端的に言うと,増やしたい行動を増やし,減らしたい行動は減らすことです。

例えば,会議の場で,議題に関する意見を主張したときはその行動を強化し,私語は弱化することです。

 

③トークンエコノミー

トークンエコノミーとは,特定の行動を増加・持続させるために,ご褒美(報酬)を与え,ご褒美(報酬)が一定数たまると,より具体的なご褒美(報酬)を与えることです。

代表的な例としては,ポイントカードが挙げられます。お店は,客の「商品を買う」という行動を増加・持続させるために,ポイントカードを交付します。客は,ポイントを貯めて,商品に交換したり,次のお買い物で使用したりするなど,より具体的な報酬を得ようとします。つまり,ポイントというご褒美を与え,ポイントが一定数たまると,より具体的なご褒美である商品への引き換えや割引ができるという具合です。この枠組みの中で,客は商品を買うという行動を継続するということになります。

 

参考文献


  • ユーナス・ランメロ、ニコラス・トールケネ(2009).「臨床行動分析のABC」 日本評論社
  • 山本淳一(2009).OTのための教養講座 Lesson5:応用行動分析学で作業療法が変わる その5・「無誤学習」で行動習得を進める 作業療法ジャーナル,43(12).

 

【執筆】

かなた(公認心理師)

ABC分析を活用する際には,どの行動をターゲットにするのか,そして,そのターゲットにする行動を取り巻く環境を把握することが大事です。具体的には,ターゲットにする行動が生起されるのはどういう状況なのか,そして,ターゲットにする行動を増やすためには,どのような強化子(いい刺激)が必要であるかなどです。

また,その人にとっていい刺激は何か,どのような伝え方や反応をすれば行動が強化されやすいか,自身の価値観の枠組みにとらわれることなく,対象とする人を想定して考えることがポイントになります。

かなた記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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