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タグ : かなた(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2025年8月15日
目次
皆さんは、「人間関係リセット症候群」という言葉をご存じですか?「人間関係リセット症候群」とは、突然人との関係性を断ち切ってしまう心理状態のことを指します。突然のあまり、周囲はおっかなびっくりかもしれませんが、リセット当事者(リセッターと称します!)としては何等かの理由や意図をもって人間関係をリセットしている場合があります。人間関係リセット症候群については、各所機関で情報がまとめられていましたが、今回は筆者の解釈をふまえつつまとめていきます!
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人間関係リセット症候群に該当にはどのようなものがあるのでしょうか?想像しやすいのは、以下のような場合でしょうか。
~Aさんの場合~ 就労2年目のAさん。ある日、人間関係に疲れてしまい転職を決めました。上司がヒアリングを行ったところ、Aさんは人間関係を継続するのがしんどくなり転職を繰り返してきたことが判明しました。 ~Bさんの場合~ 大学を卒業し、4月から新社会人になるBさん。気づいたら連絡アプリの友達が200人を超えていした。節目の年だし、あまり関わりのない知り合いは連絡先から消してもいいかなあと考え、連絡アプリの友達整理をし始めました。 |
上記以外にも、突然音信不通になる、転居や引っ越しを頻繁にするなども、人間関係リセット症候群に該当する行動になります。
人間関係リセット症候群になる背景として「自尊心が低いから」、「密接な人間関係を構築したくないから」といった個人の特性や性格が多く紹介されています。もちろん、そのような個別性に左右されることもありますが、「リセットする」という反応は日常生活の中で行っている「ストレス対処」として解釈することが可能です。
人間関係リセット症候群は職場やサークルといった「コミュニティ」と一定の距離を保とうとします。この、社会や人と一定の距離を保とうとする反応は、人間が持つ対処方略にすぎません。疲れたときは1人の時間を作るようにする、仕事の同僚とはプライベートな連絡を控えるなどもしかりで、対処=自分の身を守る手段として機能しています。
対処としては昔から明らかになっているものですが、なぜ近年「人間関係リセット症候群」という名で注目されているのでしょうか?その理由の1つに、SNSでのやり取りが日常化し、自分だけの空間(物理的なものではなく、感覚的なものも含む)が減少したことがあります。ケータイやPCなどの媒体さえあれば、1人でいてもいつでも知り合いとつながれる環境にあるので、意識しないとなかなか心休まらない時もあるかもしれません。また、もう1つの理由として、SNSサービスが充実している分、対面、メール、チャット…等々、リセットの手段が多様化していることがあります。手段が増えたことで、触れる機会が増えたという感じでしょうか(関連項目:【精神科医監修】SNSの心理学ーSNSとの健康的な付き合い方ー)。
上記でご説明したように、人間関係のリセットは対処の1つとして理解できます。自身の身を守るための対処として行うリセットですが、いい方向に働く場合と、悪い方向に働く場合があります。
威圧的な態度を取ってくる人や精神的負荷が高い人との関わりは不調の原因となります。誰しも平等に関係性を築く人を選ぶ権利はあります。不調の原因になる人とは関わらないというのも環境調整として大切です。
人生の転機になるタイミングで関係性を整理することで、今後の人生のビジョンが明確になったり、将来を見据えた行動がしやすくなったりします。
価値観は人によってそれぞれですし、合う合わないはどうしても出てきてしまいます。人生経験や時がたつことで価値観は変化するため、これまでは良い関係を築けていた人とも合わなくなってしまうこともあります。①とも関連しますが、接する中でお互いがつらい思いをするのであれば、無理せず関係性を整えるのも1つの解決法です。
対人トラブルがあるたびに関係性をリセットしてしまうと、トラブルがあったらリセットする、という一連の流れが繰り返されてしまいます。毎回リセットすることを繰り返しているままでは、根本的な問題の解決にはならず、同じような状況に陥ってしまう可能性も高まります(こちらもどうぞ:回避はデメリットだけではない!メリットを活かすうつの行動活性化療法)。
ストレスへの対処は、適応力の拡充にもつながります。毎回リセットすることで、成長の機会を逃してしまっているかもしれません。
関係性をリセットし続けるとその分コミュニティがなくなるため、長期的な人間関係が築けなくなってしまいます。
人間関係をリセットすることは、いい方向にも、悪い方向にもどちらにも転びます(汗)。ですので、リセットする前に、なぜリセットをしたいのか、リセットをすることでどのようなメリットとデメリットがあるのか事前に整理した上で、実行することをおすすめします。
これまで人間関係のリセットについてお話してきましたが、断捨離との関連はあるのでしょうか?整理するという意味では一緒のように思います。調べてみると、心理的な余裕を増やしたり、自身のコントロール感を回復させたりといった共通点があるようです。心もスペースも「余白」が必要ということですね!(?)
人間関係のリセット以外にもレパートリーが欲しい!という方は、自身が求めている関係性を明確化してみるといいかもしれません。いつのまにか関係性がつらくなってリセットしたくなる方は、ここまでは大丈夫、ここまではしんどいな‥というセーフラインとアウトラインを整理してみてください。これまで無理をして対応していたことに気づけたり、これ以上は負荷がかかるからやらないようにしよう!と事前に負荷のかかる対応を防げたりします。
【執筆】 かなた(公認心理師・臨床心理士) 今回は人間関係リセット症候群についてお話ししました。私はさぼりマンなので、一向にリセットする機会が巡ってきません笑関係性を整理することで、大事にしたい関係性が明確化することもあると思うので、タイミングがあればチャレンジしてみたいです!
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |