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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2025年1月31日
皆さんは普段しっかりと睡眠がとれていますか?普段から規則正しい生活をできている人もいれば、仕事の時間の関係で帰宅が遅くなり生活リズムが崩れたり、元々寝つきが悪かったり、色々な理由で十分な睡眠を取れていない人は多いと思います。
そこで今回は、睡眠リズムが崩れている筆者自身が不眠解消方法を実際に試し、レビューしていきたいと思います。
【監修】 本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医) 東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。 【執筆】 ぶち(臨床心理士・公認心理師) |
そもそも“不眠”とはどのような状態かご存知でしょうか?
前提知識として…人それぞれ適切な睡眠時間は異なります。例えば6時間以上睡眠時間を取らないと日中眠くて仕事も集中できなくなる人もいれば、短い睡眠時間でも日中に問題なく活動できる人もいます。つまり、睡眠時間に関わらず日常生活を送るのに支障があればそれは“不眠”になる可能性があるのです。
皆さんの中には「布団に入っても中々寝付けない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。寝つくのに時間がかかると、ある程度睡眠時間が取れていても何となく眠れていないような気がしませんか?この『何となく眠れていない感じ』には『不安』が関係しています。寝つくまでに時間がかかると、その間に「眠れないまま朝になったらどうしよう」「明日も仕事なのに眠れなくて大丈夫かな」など、色々と考えが浮かびがちです。これが不安です。不安な気持ちが止まらなくなると、脳も十分に休まりませんよね。
さて、寝つけない時にスマホを見てる人はいませんか?眠れないのに目を閉じたままでいるのはしんどいですよね…(強く共感いたします)。あとに続く話はもうおわかりだと思いますが…、スマホを見ると脳が覚醒してしまい余計に眠れなくなってしまうんです。
なかなか寝つけない。不安が強くなる。スマホによる覚醒で余計に眠れなくなる。このような状態が続くと、慢性的な不眠状態に陥ってしまい、悪循環から抜け出すことが難しくなります。悪循環から抜け出す方法として、例えばお薬を使った方法、不眠の認知行動療法(CBT-i)など様々なアプローチが提唱されていますが、今回は筆者自ら慢性的な不眠状態を抜け出す方法の内の一つ『睡眠日誌』を試してみようと思います。
※注意:極端に短い/長い睡眠時間の方や、色々な方法を試しても不眠が改善されない方は、専門機関にご相談してみてください。
睡眠日誌は、普段どれくらいの時間に寝て起きているかといった睡眠習慣を振り返ることができるものです。加えて「睡眠効率」を確認することもできます。
「睡眠効率」とは「実際に眠っていた時間÷寝床にいた時間」から算出できるもので、効率よく睡眠がとれているかを確認できる指標です。理想は85%以上(10~20分ほどかけてゆっくり寝つき、朝も10分ほどかけて体を起こしていくような状態)と言われています。一方で100%など高すぎる睡眠効率になると、布団に入ってから倒れるように眠り、朝は飛び起きるような状態を表すため、あまりよい睡眠習慣とは言えません。
『なぜ睡眠日誌が不眠の解消に繋がるか』というと、まずは自分がどんな睡眠習慣を送っているのか、「セルフモニタリング」することが大切だからです。「セルフモニタリング」とは、文字通り自分で自分の状態を見ることです。もちろんモニタリングするだけでなく、生活リズムを整えたり、カフェインを控える、適度に運動をする、寝る前のスマホを控える等、睡眠の質を上げるための行動はした方が良いのですが、まずは現状を知るところから始めたいと思います(関連項目:カフェインの科学【作用と効果と副作用】精神科医監修ライフハック心理学#4)。
今回は、まず睡眠日誌によるセルフモニタリングを1週間実施⇒その後1週間で睡眠日誌を付けつつ、寝る前の行動や生活習慣にも気を遣ってみるという感じで過ごしてみようと思います。ちなみに今回は下記シートを使って睡眠を記録してみました。
臨床に役立つ資料・動画のダウンロード|認知行動療法センター (ncnp.go.jp)
1週目 1週目は今まで通りの生活で、睡眠日誌だけ付ける週です。筆者は寝る前・途中で起きた時に何となく時間を見ておいて、起きてすぐに睡眠日誌を付けていました。 結果
筆者は元々明け方に必ず目が覚め、そのせいで目覚めがあまり良くなく、日中も眠さが残っていると思っていました。しかし、実際は思っていたよりも睡眠時間が取れていたことが分かりました。 また、睡眠日誌を付ける習慣があることで、寝る直前までスマホを見ていても、時計を見て時間を確認して「そろそろ寝るかぁ」と思ったり、朝起きてすぐに睡眠日誌を付けるので「せっかくならそのまま起きるかぁ」と思ったり、以前より生活習慣がマシになったように感じます。 ちなみに、日中は変わらず眠気があったので、睡眠時間が問題ではないのかも…?という気づきにもなりました。 |
2週目 2週間は、睡眠日誌を付けつつ、不眠解消で代表的なかつ生活リズムを大きく変えずに実施できる「寝る前にスマホを見ない」を実施しました。 どうしても眠れない日は本を読んでみたり、音楽をかけて小さな声で歌ってみたりして、スマホは見ずに過ごしました。 結果
1週目からの変化は、1週目よりさらに朝起き上がれるようになったこと、寝つくまでの時間が一定になってきたこと、寝付けない時の対処法がわかったことでした。 今までは寝付けないとスマホで動画を見たりしていましたが、音楽を聴いたり、寝ること以外のこと(最近見た面白い番組のことなど…)を考えてみたりすると、いつの間にか眠れることが分かりました。 |
今回実際に睡眠日誌をつけてみて、日誌をつけるだけでも効果があり、プラスで生活習慣にも気を付けるとさらに効果が上がることが分かりました。実は睡眠日誌を付けること自体に睡眠の質を上げたりする効果がある、ということは研究で示されていたりもします。及川(2016)の研究では、睡眠が不規則な人を対象に睡眠のセルフモニタリングをしてもらったところ、入眠までの時間が短くなったそうです。
また、今回不眠に対する効果を感じられたのは、今まで「眠れていない…」と思っていたのが「思ったより寝れてるじゃん」と安心できたこと(認知が変容したこと)も大きいと思います。不眠は、認知行動療法的な考え方も大切です。例えば…寝つけない時に「寝なきゃ!」と考え過ぎて逆に眠れなくなったり、「眠れていない…」と思い過ぎて何となく日中も具合が悪かったりするのは、自分の考え方が身体に影響してしまっているのです。「意外と寝れてるじゃん!」とか、「寝れないなら別のことしてみよう」と思えると、睡眠に対するプレッシャーが減り、眠れるようになったりします(参考:認知行動療法とは?認知再構成法と行動活性化【精神科医監修✕公認心理師解説】)。
もちろん、睡眠日誌を付けるだけで、本当に必要な睡眠時間が取れていなければずっと眠いままかもしれないので、生活習慣にも気を付けていく必要はあると思います(参考:【眠れない方必見!】睡眠のカギは朝にある!精神科医監修不眠解消メソッド)。
注意点としては、寝た時間、起きた時間などを確認しなければいけませんが、そこで時計を気にしすぎてしまうとあまりよくありません。実施する際は、布団に入る時間を見ておいて、何分で眠れたかは体感でよいと思います。筆者の場合は音楽をかけて、朝プレイリストを確認し、「何曲目から記憶がないな…つまり何曲分で眠れたんだな」とざっくり計算するようにしていました。正確に記録することよりも、記録して知ることが大切なので、注意しましょう。また、睡眠記録アプリなども出ているので、皆さんのやりやすい方でチャレンジしてもらえたらと思います。
参考文献