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タグ : メンタルヘルス , 市川(公認心理師・臨床心理士)
2024年4月19日
最終更新日 2024年6月1日
私たちは人生の中で幾度か、大切な人を失うということを経験します。かけがえのない人を失うことはおそらく人生でもっとも苦しい出来事でしょう。その時、人は様々な複雑な感情を抱き、その結果、心や体や行動にいろいろな影響を受けます。そのような苦痛のことを「グリーフ(悲嘆)」と呼び、死という現実と悲しみを乗り越えようとする人に寄り添い、支援するように関わることを「グリーフケア」といいます。
本ブログでは、グリーフ(悲嘆)の症状や経過について、別れや喪失感の中にいる人を支えるケアである“グリーフケア”について解説します。
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大切な人の喪失を経験し、悲しみの中にいる人は長期にわたりグリーフのプロセスを辿ります。これをグリーフワークと呼び、グリーフワークは『ショック期』『喪失期』『閉じこもり期』『再生期』という4つのプロセスに分かれています。
1 ショック期
大切な方を亡くしたショックが大きく、悲しい現実を受け止めることが出来ない時期です。ショックのあまり心身の崩壊の危機にさらされるため、無意識に現実感覚を麻痺させて無反応になったり、またはパニック状態になったりすることがあります。
2 喪失期
麻痺状態から回復し始めるも、死を受け入れたくない気持ちから否認をし始める時期です。「どうして自分が」と怒りを感じたりある時は号泣したり、次々と繰り返し現れます。周囲の人に怒りの矛先を向ける人もいれば、故人様が生きているように振舞う人もいます。
3 閉じこもり期
死は避けられないものと理解して喪失を受け止めるも、それによって自分の価値観や生活の意味を失いってしまい無気力な状態になる時期です。罪の意識からうつ症状が出現したり、引きこもったり、重篤な場合は自殺の危険性もあります。
4 再生期
故人様の死を現実として受容し、新たな社会関係を気づいていく時期です。この時期になると積極的に他人と関われるようになり、新たな人生に向けて歩み始めます。
上記の通り、悲嘆は変化していくものと言われています。
時間の経過とともに和らぐつらさもあれば、つらさが以下のような心や身体の症状として現れることがあります。
心(精神)的な反応
長期にわたる、「思慕」の情を核に、感情の麻痺、怒り、恐怖に似た不安を感じる、孤独、寂しさ、やるせなさ、罪悪感、自責感、無力感などが症状として表れます。
身体的な反応
睡眠障害、食欲障害、体力の低下、健康感の低下、疲労感、頭痛、肩こり、めまい、動悸、胃腸不調、便秘、下痢、血圧の上昇、白髪の急増を感じる、自律神経失調症、体重減少、免疫機能低下などの身体の違和感、疲労感や不調を覚える。
日常生活や行動の変化
ぼんやりする、涙があふれてくる、多くの「なぜ」「どうしよう」の答えを求められ、死別をきっかけとした反応性の「うつ」により引きこもる、落ち着きがなく なる、より動き回って仕事をしようとする、故人の所有物、ゆかりのものは一時回避したい思いにとらわれますが、時が経つにつれ、いとおしむようになるなど
このような症状は、混在し、時をかまわずして起こります。出現する期間は人によって異なります。
★特別な日や時期になると心身の不調を崩すことを“記念日反応”と呼びます。記念日反応について以下のブログで解説しています。
精神科医監修|記念日反応とは?公認心理師が症状と対策法を解説 | 株式会社サポートメンタルヘルス (support-mental-health.co.jp)
悲しみから立ち直るためには、悲しい気持ちがわいてくることを受け止め、その気持ちを認めることが助けになります。ただ、喪失による強いショックや悲しみによってグリーフの症状が出現し、日常生活に支障が生じることがあるかもしれません。先ほど紹介したような「グリーフ」の状態のある人に寄り添い、支援することをグリーフケアと言います。グリーフケアには決まった形はなく、グリーフに対する療法を総称します。グリーフの状態から少しでも回復に近づくために、以下を心掛けてみてくだい。
大切な人を失った時、深い悲しみに暮れるのは当然です。自分の中に感情を抱え込まず、肯定し認めることが大切です。それを言葉にして誰かに聞いてもらったり、紙に書きだしたりする方法も有効です。もし、その中で涙があふれてしまっても無理に止めようとせず、涙を流すことが大切です。
★泣くことの効果について以下で解説しています。
【泣くことの効果についての解説】
泣くとスッキリするメカニズム|公認心理師がカタルシスの意味をわかりやすく解説 | 株式会社サポートメンタルヘルス (support-mental-health.co.jp)
悲嘆感情におおわれていると、悲しみの感情が強すぎるあまり眠れなくなったり食事がのどを通らなくなったりします。そのような状態が長く続くと、心身の不調をきたしてしまいます。そのため、辛い時こそ十分な休息や睡眠、栄養のある食事を意識することが大切です。眠れない時は、日中に軽い運動を取り入れることがおすすめです。
気分が落ち込んで、何もする気が起きない日もあるかもしれません。そのようなときは無理をせず、自分が好きな音楽を聴いたり、好きな本を読んだりして心に安らぎを与えることが大切です。
グリーフによる症状が続く場合、一人で抱え込まずに専門的な治療を受けることをおすすめします。カウンセリング、リラクセーション、薬物療法など、あなたにあった治療を受けることで、心身のつらさを軽減させ回復への近道になるでしょう。
自助グループでは、同じような経験を抱えた当事者同士が集まっているためお互いに分かち合うことを通して、“ひとりではない”と感じることが出来ます。
悲しみから立ち直るために大切なことは、悲しみを抱えつつも日常生活に取り組むことです。悲しみと共存しながら日々の生活を送っていくことで、故人様との新たな関係性を築き、新しく展開した自分の人生を進むことの手助けになるでしょう。
中には喪失から長い時間が経過しても変わらない激しい苦しみから逃れられない方もいます。死別者の2.4%〜4.8%の人が通常の悲嘆に対して“通常ではない悲嘆”がみられ、複雑性悲嘆と呼ばれています。
複雑性悲嘆とは、“大切な方を失った後の悲嘆が長期に遷延し、そのために著しい苦痛や生活や社会機能、対人関係の障害が起きている状態”のことを指します。それにより、故人を嘆き求めること、個人に対する持続的な囚われ、悲しみ、罪悪感、怒り、否認、非難、死を受け入れることの困難、自分の一部が失われたような感覚、公的感情の体験ができない、情動麻痺、社会やその他の活動に参加することの困難等の強い情動的苦痛が伴うとされます(中島,2020)。
ある研究では、悲嘆症状の遷延が他者への共感性に関わる脳回路の活動を低下させるというデータもあります。これは、故人との強い絆が活動的な状態のままにあることで、生きた対象との絆が弱まってしまっている状態とされています。
遷延性悲嘆の方は、とても苦しい精神状態にいます。遷延性悲嘆に陥った場合、専門家によるカウンセリング、認知行動療法という心理療法が有効だと言われており、こういった治療法の中には死に直面した体験に向き合うものもあります。そのため、臨床心理士や公認心理師のような信頼できる資格を持つ専門家の治療を受けることを推奨します。
【参考】
参考・引用文献
【解説】 市川(公認心理師・臨床心理士) 悲しみから立ち直るためには、ありのままの現実を受け入れ、段階を踏んでゆっくりと新たな人生を歩む準備をしていくことが大切です。あなたや身近な方がつらい状況にあるときは、今回ご紹介した方法を一度実践してみてはいかがでしょうか。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |