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タグ : オタク臨床心理士・公認心理師は語る。 , メンタルヘルス , 籔(公認心理師・臨床心理士)
2022年5月6日
最終更新日 2023年11月11日
目次
みなさん「推し活」、してますか?(唐突)
ー芸能人・アイドル・アーティスト・アニメ・漫画・ゲーム・スポーツ選手からスイーツやお店まで、夢中になれるものはありますか?
最近よく耳にするようになった「推し」という言葉ですが、元々は某アイドルグループのファンが「推してるメンバー」のことを「推しメン」と表現してらしたことが起源のようです。その後、段々省略されて、最近では「応援しているもの」とか「特別好きな対象」に対して使うことが多くなっています。日本において「好き」をあらわす言葉は、年代や対象によって違いはあれど、実に多様だったりします。
ちょっと昔に遡ってみましょう。例えば平安時代。枕草子のかの有名な第一段「春はあけぼの~」という文章も、四季それぞれの「推せる」時間帯を紹介している内容です。「をかし」「かなし(愛し)」「いみじ」「らうらうじ」等々…、「よいもの」の繊細なニュアンスをあらわす言葉は、昔からたくさんありました。嗜好や情緒に関する日本語の繊細な種類と雰囲気、筆者はとても好きです。
言葉は変遷していきますが、こんな風に、ハマっているもの・自分が好きなものを思わず他の人に紹介しちゃいたくなったり、逆に、一人でひっそりと楽しみたい…なんていう気持ちになったりは、昔から変わらずあるものかもしれません。
時間軸を現代に戻します。「好きなことをしてストレス発散!」なんて言葉も言われて久しいですね。弊社では「推しへの費用は医療費」なんて半分冗談で言ったりしています。好きなことに熱中したり、楽しい活動をすることで、スッキリ感を得られた経験もあるかもしれません。
というわけで、今回は推し活=趣味によるストレス発散効果についてお伝えしていこうと思います。自分の身に起こっていることをちょっとだけ知りつつ、日々の活力としていきましょう。
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【執筆】 籔(公認心理師・臨床心理士) ブログタイトルに『オタク』記載がありますが、これは自称ではありません。私ごときがオタクを名乗るなど恐れ多い…。精進していく所存でございます。 |
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ストレスは、さまざまな要因(ストレッサー)によって引き起こされる反応のことを指します。
ちなみにストレスという概念は、1930年代にカナダの研究者であるハンス=セリエさんによって提唱されたものです。ストレスって、まだ100年も経っていない新しい概念なんですね。
さてこのストレス「嫌な出来事に対してかかるもの」という認識は共通していますが、楽しいことに対してもストレスがかかっているって話、聞いたことはないでしょうか。実は、ストレスは自分的には良い出来事であっても「大きな変化があったとき」などに大きくかかったりします。結婚、おひっこし、就職、進学、昇進etc…、こんな人生におけるイベントも、自分では「楽しい」と感じていたってストレスだと体は認識してしまうそうです。
新生活が始まったばかり、という方も多いタイミングだと思いますので、しっかりと自分の調子をモニタリングしたいですね。
関連項目:【精神科医監修】五月病は予防できる!公認心理師が解説
じゃあ、楽しいことでもストレスだったらダメなのか?ストレスは万病の元っていうし…と聞かれればばそうでもありません。ストレスは、もちろんありすぎはもちろん良くないですが、なさ過ぎてOK!というものでもないのです。パフォーマンスは、適度なストレスがかかっている状態で最も上がることが知られています。ヤーキースドットソンの法則、というのですが、ストレスをなくそうと躍起になるのではなく、適切に付き合っていくことが重要だと言えます。
【関連項目】
ストレスがなさすぎて、逆に活力がなくなってしまう…なんてもことも。
適度なストレスはやる気の源になったりします。
なんとも複雑怪奇なストレスですが、ストレス発散(=対処)の方法も様々あります。ストレスへの対処行動のことを専門用語で「コーピング」というのですが、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
さて、このストレスへの対処ですが、いくつかに分類することができます。
① 問題焦点型コーピング:ストレス源解決に向けて取り組む ② 情動焦点型コーピング:つらい気持ちを話すor我慢する ③ 認知的再評価型コーピング:逆転の発想でポジティブにとらえる ④ 社会支援探索型コーピング:相談してアドバイスを求める ⑤ 気晴らし型コーピング:気分転換をする |
小難しい名前が並んでいますが、詳しい内容については今回割愛します。
本記事で対象となる趣味は、主に⑤の気晴らし型コーピングに該当するものといえますね。このコーピングの「型」は、ストレスの種類や状況によって誰しもが使い分けているものです。中でも、日常でちょっとずつ溜まっていくような嫌なストレス解消には、この⑤がとても有効です。開放感や爽快感を得られることで、滅入っていた気分が前向きに…なんて経験をしているときには、上手くコーピングできているといえるのではないでしょうか。
では、そのようなことがなぜ起こっているのか?理由の一つとして「今ここ」に意識が向かう、というマインドフルネス的な効果が挙げられます。
関連項目:【精神科医監修】マインドフルネスとは②仕組みとやり方
ついつい考えてしまう嫌なこと。
「今日あの人からこんな嫌なこと言われた」
「来週のプレゼンやだなあ」
仕事や学校が終わった後も続くモヤモヤ、本当に「今起きていること」ですか?嫌なことを言われたのは「過去」の話、プレゼンがあるのは「未来」の話。私たちが感じる心配事やストレスって、「今ではない」ときへ思いを向けているために生じていることが少なくありません。
自分の好きなことに夢中になっている場面を想像してみてください。
「(ライブのDVD見てるとき)〇〇ちゃんの今の動きかわいい!」
「(絵を描いているとき)この色は綺麗だなあ」
「(歌っているとき)無心」 などなど…
過去や未来にとらわれず、「今」起きていることに自然と意識が向かっていると思えるのではないでしょうか。夢中になれる活動をしているとき、自然にマインドフルな状態になれているものです。ちょっとお得ですね!
夢中になっているとき、嫌なことなんて忘れています。というか頭にないです。
「問題を解決しないと何も変わらない!ストレスには断固立ち向かうべし!」なんて話を聞いたりするかもしれません。「趣味で気晴らしなんて現実逃避!」と思ってしまったりするかもしれません。確かに一理あるかも…特に余裕がなかったりすると「これしかない!」と道が一つに見えてしまいがち。
でも、ストレスへの対処方略は一つではありません。その時々に応じて、使い分けていけることが大切なのです。「ストレスがかかったときにはこうしなきゃいけない!」という思いが強すぎると、その方法で対処しきれないときに余計に自分が追い込まれてしまいます。特に、ストレスによって怒りや不安などの強い感情が出ているときには、一旦そこから距離を取ることが、最終的な問題解決のために近道だったりもするのです。
そう考えると、一旦気持ちをリセットして、余裕を作った状態で取り組むのも遅くはないのではないでしょうか。急がば回れ、余裕がないときこそ、余裕を作れる行動をとってみる選択肢を持ってみませんか?まじめな方は、「こんなことをしている場合ではない!」とストレスに真っ向から勝負を挑みに行ったりすることも少なくないように思います。そんなときに、ちょっとでも趣味に対して「これをしててもいい。これも必要なことなんだ」と思っていただけたら幸いです。
「そうはいっても趣味なんてないよ」と感じられる方もいらっしゃると思います。趣味がないことがストレス。そんな方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたら、「趣味」や「楽しさ」へのハードルが無意識に高くなっているかもしれませんね。
にわかだって楽しい、なんとなく大歓迎
この精神があってもいいのではないかと筆者は思っています。
別に全曲知ってなくても、すべての情報を追っていなくても、何となくやっていること、誰に強制されたわけでもなく続けている「嫌じゃない」こと。筆者は歌うことが好きですが、だからといって歌うときにはいつでも徹底的にこだわる!なんてことはありません。何となく歌うだけでも楽しい、なんならうろ覚えだっていいじゃないという気持ちで歌っています。
普段「なんとなく」やっていることを改めて意識してみると、意外なところから「好きかもしれない」が見つかるかもしれません。もちろん、なんとなあく新しいことに挑戦するのもいいと思います。新しいことにちょっとずつ挑戦すること自体を趣味にしても良いわけです。一つのことを趣味にしなければならないなんて決まりはありません。
旅立つ感覚で趣味を探すこと自体を楽しんでみるのもよいかもしれません。
ぜひ、ご自分で「ワクワクするなあ」とか「楽しいなあ」と感じられる行動を試してみたり、普段の行動を見つめたりしてみてください。
【趣味とストレスについて参考にした論文はこちら!】
【ドクター本山の精神科豆知識】趣味が楽しめない。それはうつ病かも…。本ブログでは、弊社オタク代表の籔(本人は頑なに否定しますが笑)が趣味とストレスについて解説しました。自分にとってのストレッサーを見極め、適切なコーピングを選択することは、ストレスと上手に付き合う・延いては人生を充実させるために非常に大切な方略です。ストレスコーピングとしての趣味という考え方、是非ご参考になさってください。おすすめします。
さて、こちらのコラムで今回ご紹介するのは『これまで楽しめていた趣味が楽しめなくなった』そんなお困りごとに関する解説です。『楽しい』という感情にはドパミンという神経伝達物質が関与していると考えられています。脳内には4つのドパミン経路があり、それぞれのルートでドパミンが過剰放出されたり不足したりすることで、統合失調症やパーキンソン病などの疾患を発症します。
楽しさに関係するのは腹側被蓋野より大脳皮質へとつながる経路。このルートでドパミンが不足すると楽しいと感じられなくなるということになります。こちらのルートにおいてドパミンが不足する疾患の一つがうつ病です。
うつ病初期には不安や焦燥感といったセロトニン関与が想定されている症状が出現し、その後気分の落ち込みや意欲低下といったノルアドレナリン関与が想定されている症状へと変遷します。うつ病が進行することで楽しめない、関心が沸かないというアンヘドニアというドパミン関与が想定されている症状が出現するようになります。
つまり『趣味が楽しめない』とご自覚されておられる場合、うつ病がかなり進行しているのかも知れないわけです。楽しめない感覚に不眠や食欲の変化が伴うようであれば、医療機関受診をご検討ください。 |