ブログ

【市販薬ODの実態】若者に広がる過剰摂取の危険性とその背景

タグ : ,

2025年4月4日

最終更新日 2025年4月4日

市販薬OD(オーバードーズ)の実態と広がる背景・対策

 

株式会社サポートメンタルヘルス公式LINE ID

メンタルヘルス情報配信中!友だち登録どうぞ!

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

ふ~みん記事一覧

 

【監修】

本山真

医師、精神保健指定医、日本医師会認定産業医

東京大学医学部卒業後、精神科病院・診療所での勤務を経て、さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。現在は株式会社サポートメンタルヘルス代表に加え、2院を運営する医療法人の理事長としてメンタルヘルスケアに取り組んでいる。

 

若者の間で広がる市販薬ODの実態と統計データ


近年、若者たちの間で市販薬の過剰摂取(オーバードーズ=OD)が広まっているそうです。ODとは、薬ごとに定められている用量を守らず大量に摂取することを言います。そうすることで、意識を失ったり肝臓や腎臓への障害が起きたり、死に至ったりする可能性も指摘されていますが、なぜ広まっているのでしょうか。

 

2022年に国立精神・神経医療研究センターが行った調査によると、「1年以内に薬物使用がある患者の主な薬物」として、10代では市販薬が68.4%と最多、20代でも市販薬は35.3%にのぼりました。続く30代以上では睡眠薬・抗不安薬、覚醒剤が多数を占めます。また、10代の中でも過去1年以内に市販薬の乱用経験がある高校生は約1.6%と推計されています。

2021~2022年に救急医療機関に搬送された患者の中で、その理由が“市販薬のOD”だった人に埼玉医科大学などが調査をしたところ、ODの目的は「自傷・自殺目的」が7割を超え、最多だったそうです。

 

自傷行為といえば、カッターナイフやカミソリで自分自身の身体を傷つけるリストカットを思い浮かべる人が多いと思います。そのようなイメージからするとODとは類似点がないような気もしますが、生きづらさや生きていることに対する苦痛を緩和させるために行うものという点で共通しており、実際にそのような行為に及んでいる人は少なくないのです。専門家は「自傷やODは、自殺以外の目的から、非致死的な結果を予測して、故意に自らを傷つける行動」と定義される現象であるため、「死ぬことを意図し、その行為によって致死的な結果を予測したうえで、故意に自らを傷つける」自殺とは区別するべきだと言っています。

 

ODに使用される主な市販薬とその作用


市販薬と言ってもたくさんの種類がありますよね。ODによく使用されるのは風邪薬や咳止めです。これらの薬には依存性の高い成分が含まれていることが多く、大量に摂取すると気持ちが楽になったり、つらいことを考えなくて済むようになったりします。

市販薬なら医療機関を受診する必要がなくドラッグストアなどで手軽に購入できる上、違法薬物と違って犯罪性もないので、高校生でもあまりためらわずすぐに入手できるのです。また、SNSで検索するとたくさんの経験談が見られるので、それほど特別なことではないと感じてしまうのかもしれません。

 

なぜ市販薬ODが増加しているのか?背景にある社会的要因


嫌なことを避けたい、不快なことを考えたくないというのは当然のことだと思いますが、なぜODをするのでしょうか。実は、ODをする若者の背景にはさまざまな問題が潜んでいると考えられています。

幼少期の虐待によるトラウマやストレス、人間関係の不和や発達障害による適応障害。それらの影響で家庭、学校、職場での居場所が見つけられない中、生きづらさを抱えながら生きるために自分を傷つけ、孤独を紛らわしているとも言われています(関連項目:【臨床心理士が解説】トラウマと向き合うために|理解・対処・回復のステップ)。

薬の効果があるうちは穏やかに過ごせるかもしれませんが、効き目がなくなると現実に戻され不安やつらさと向き合うことになります。そうするとまた大量に服薬し、何も考えなくて良い時間を求めたくなるのです。その繰り返しが、やめたくてもやめられない状態=依存となり、より多くの量を摂取しないと効果を感じなくなったり中毒症状を起こしたりすることもあるのです(参考:依存とは何か?依存症との違いは?なぜ依存行動は繰り返されるか?)。

 

国による市販薬OD対策と販売規制の現状


ドラッグストアの増加やスマートフォンの普及に伴い情報・品物とも簡単に手に入るようになった時代背景を受け、2023年頃から国は市販薬によるOD対策の一環で、コデイン、エフェドリン、ジヒドロコデイン、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンという依存性が高い6成分を含む製品を「乱用のおそれのある医薬品」に指定し販売規制の対象としています。

具体的にどのような対策かと言うと、

  • 販売は原則1人1個
  • 中学生や高校生などの若年者が購入する場合は、氏名、年齢等を確認する
  • 複数購入する際は理由を確認し、適正な利用と認められる量に限り販売する
  • 他の店舗、薬局での購入状況の確認
  • 販売は原則対面かオンライン(映像・音声によるリアルタイム通信)
  • 20歳以上であっても複数購入の場合は氏名、年齢等を確認する

というようなものです。

しかし、販売側でこの規制が徹底されていないケースもあり、いくつかの店舗をまわれば購入することができてしまうのが現状です。また、指定された6種類以外の成分を含む咳止めや風邪薬がODに使われていることもあるため、国では規制対象とする成分の拡大も検討しているようです。

 

OD問題の解決に向けた社会の取り組み


対策も必要ですが、それでは根本的な解決にはならないという声もあがっています。

ODする若者たちを支援しているNPO法人のスタッフは、過去にマスコミの取材で「叱ったり排除したりするのではなく、何気なく話せる関係性を築いたり安心できる場所を提供したりすることで、少しずつ薬物に頼らない生活ができるようになる」と述べていました。不運ながらこれまで自分なんてどうなっても良いと感じてしまうような境遇の中で過ごしてきた若者が、頼れる大人や心配してくれる人がいると気付くことで、生きる強みにつながるのですね。

第三者はつい、ODなんてしてはいけないと言ってしまいそうになりますが、表出の仕方がうまくないだけで、実は話を聞いてほしい、助けてほしいというSOSの表れなのかもしれません。容易なことではありませんが、ODをしてしまう若者たちが抱える生きづらさや孤独に寄り添い、支援することが望まれているのです。

厚生労働省のホームページ上でも、ODの簡単な説明、ODをしてみたい、またはやめられない人へのメッセージ、当事者と家族や支援者に向けた相談窓口情報の提供などを見ることができます。

ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。

【参考】市販薬の乱用防止を目的とした啓発関連資材を公開しました|厚生労働省

関連記事