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タグ : メンタルヘルス対策 , 中小企業 , 本山真(精神科医師・産業医) , 産業精神保健
2024年1月29日
最終更新日 2024年8月2日
目次
株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。 株式会社サポートメンタルヘルスでは、メンタルヘルス専門職による”中小企業のメンタルヘルス対策個別無料相談会”(web開催、日時は応相談)を実施しております。従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの経営者様、人事ご担当者様、まずはお問い合わせフォームよりお申し込みください。
【執筆】 本山真 株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役 日本医師会認定産業医/精神保健指定医 医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長 2002年東京大学医学部医学科卒業後、川越同仁会病院、不動ヶ丘病院で勤務。2008年に埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。”働く人を応援する”ため、日々診療活動に取り組んでいる。 |
職場のメンタルヘルス対策とは、カプラン(Caplan,G)による予防精神医学/予防メンタルヘルスの観点に基づいたアプローチだと言えます。カプランが一次予防~三次予防からなる予防精神医学/予防メンタルヘルスを提唱したのは1960年代。日本のメンタルヘルスの歴史において1960年代と言えば、精神衛生法(現在の精神保健福祉法の前法)改正が行われた時代ですから、いかにカプランが先進的であったかと感心します(また同時に、いかに我が国のメンタルヘルスが世界に遅れを取っていたかよくわかります。後述する日本におけるメンタルヘルスリテラシーの低さは、メンタルヘルスの歴史も影響しているかもしれません)。
カプランの提唱した予防精神医学/予防メンタルヘルスの特徴は、対象と目的によって”予防の考え方”を分類した点にあります。一般的に、予防と言えば、例えば”手洗い”や”うがい”、”適度な運動”、”バランスの良い食事”、”規則正しい生活習慣”などがイメージしやすいと思います。病になることを防ぎ、より健康であることを目指すというコンセプトですね。この”病の状態ではない人”を対象に、”より健康になる”ことを目指すという目的のもと行われる予防活動を『一次予防』と言います。
職場のメンタルヘルス対策において、大切なポイントの一つはこの”メンタルヘルス一次予防の考え方”です。中小企業の経営者様、人事担当者様より、『メンタルヘルス対策の重要性は理解しているが、うちにはメンタルヘルス対策に該当する従業員はいない』という声を聞くことがあります。確かに、メンタルヘルス二次予防・三次予防に限定すれば、”うちにはメンタルヘルス対策に該当する従業員はいない”という職場もあることでしょう。翻って、メンタルヘルス一次予防の観点に基づくと、職場のメンタルヘルス対策の対象は企業の全従業員であり、全従業員の”より良いメンタルヘルス”ということになります。したがって”メンタルヘルス対策に該当する従業員はいない”という職場はあり得ないわけです。
メンタルヘルスにおける二次予防とは『早期発見・早期介入』を指します。早期発見、早期介入においては、”本人や周囲がメンタルヘルス不調のサインや、メンタルヘルス不調の状態を知識として理解していること”、”メンタルヘルスが不調な時に、どのような資源が利用可能であるかを知識として理解していること”が求められます。メンタルヘルスに関する上記の知識を専門的にはメンタルヘルスリテラシーと呼びます。
さて、皆さんは『メンタルヘルス不調の際、どのようなサインが出現するのか』、『メンタルヘルス不調のサインをキャッチした時、どういった資源を利用できるのか』、メンタルヘルスリテラシーについて学んだ記憶はありますか?現在でこそ、高等学校の保健体育にて、メンタルヘルス予防について取り上げられるようになりましたが、多くの方は、メンタルヘルスについて体系的に学んだ経験はほとんど無いはずです。
職場のメンタルヘルス対策において、従業員や管理職、人事担当者を対象としたセミナーが実施されるのは、職場におけるメンタルヘルス二次予防を推進するためだと言えます。企業全体でメンタルヘルスリテラシーを高めることを目的としたアプローチということですね。
企業の経営者様、人事担当者様は耳にしたことがあるかもしれない”ストレスチェック”は、一義的には二次予防を目的とした職場のメンタルヘルス対策です。従業員数に応じて、ストレスチェック結果を元に、高ストレス者の多い職場の環境改善に役立てることもあります。これは、職場という環境を対象としたメンタルヘルス二次予防だと言えます。
【参考】
ちなみに、精神科産業医として皆さんにお伝えしたい”メンタルヘルスが不調に陥っている早期サイン”は、眠れない(または寝すぎる)、食べられない(または食べ過ぎる)です。メンタルヘルス=こころの健康ですから、メンタルヘルスが不調に陥っている際は、当然落ち込みやイライラ、不安といった気分の変化は出現します。ところが、気分の変化を自覚的に理解することは思っている以上に難しいんですね。睡眠や食事といった日常的な営みであれば、日々の変化を把握しやすいため、メンタルヘルス不調の早期サインを自覚しやすいんです。
【参考】
我々のようなメンタルヘルス領域に従事している専門職だからこそ理解しているノウハウを企業の従業員、管理職、人事担当者と共有する機会、それが職場のメンタルヘルス対策におけるセミナーだと言えます。
職場におけるメンタルヘルス三次予防は『再発予防』です。職場においては、”一度メンタルヘルス不調に陥った従業員が、再度メンタルヘルス不調に陥らないように支援をすること”と換言できます。端的に言えば、”休職中の従業員が、スムーズに復職できるよう/再休職に陥らないよう職場として行なう支援”です。メンタルヘルス不調による休職者は年々増加しています。つまり、あらゆる職場において、メンタルヘルス不調による休職は身近なものになりつつあるということです。
メンタルヘルス不調による休職者は(退職者を除き)いずれ復職します。休職した従業員が、休職前と変わらない構えで仕事をし続ける限り、再休職のリスクは高いままだと言わざるを得ません。従業員自らが”メンタルヘルス向上の意識を持つこと”、また”メンタルヘルス不調時は早期に対策をすること”に加えて、職場としても、管理職によるラインケアとして”従業員のコンディションを把握すること”、”メンタルヘルス不調の早期サインに気づくこと”が求められます。
まとめとして、職場におけるメンタルヘルス対策とは、カプランによる予防精神医学/予防メンタルヘルスにおける一次予防~三次予防を包括したアプローチです。職場に応じて優先度の高いメンタルヘルス対策は異なりますが、職場のメンタルヘルス対策の対象は、基本的に全従業員であることを覚えておいていただくとよろしいかと思います。ちなみに、法的には、労働安全衛生法第70条の2が根拠となっています。
前段にて取り上げたカプランによるメンタルヘルスの二次予防、三次予防の考え方ですが、中小企業の経営を考えるうえでも重要なコンセプトだと言えます。企業経営においては、ヒト・カネ・モノといった経営資源をもとに生産性を高める発想が必要となります。”ヒト”という経営資源による生産性向上という経営戦略においても、職場のメンタルヘルス対策は有用です。
職場のメンタルヘルス対策や健康経営®において取り上げられることの多いアブセンティーズム、プレゼンティーズムという考え方をご紹介しましょう。アブセンティーズムは”従業員が心身の不調により職場を欠勤している状態”を指します。三次予防にて取り上げた従業員のメンタルヘルス不調による休職はアブセンティーズムに該当します。アブセンティーズムの特徴は可視化されているということです。出勤することができていないわけですから、経営資源としての”ヒト”が生産性を失っていることは誰の目にも明らかです。
当該従業員に対し復職に向けた働きかけを行なったり、場合によっては臨時で”ヒト”を採用したり、求職者の出た職場については職場環境改善に着手したり、と、生産性の低下が可視化されているからこそ、中小企業としてスピーディーな対策へとつなげることができます。
他方、プレゼンティーズムとは”従業員が心身の不調を抱えながら職場に出勤している状態”であり、”疾病就業”とも呼ばれます。いわゆる”病の状態”であるものの職場に出勤している従業員も含みますし、花粉症や二日酔いでコンディションを落としている従業員も含みますし、近年では、女性の月経に関連した不調を含める考え方もあります。当然のことながら、メンタルヘルス不調であるものの職場に出勤している状態もプレゼンティーズムに該当します。
プレゼンティーズムに該当する不調の中で、メンタルヘルス不調が他と異なるのは、先述の通り、”従業員自身がメンタルヘルス不調である自覚を持ちづらい”という点だと言えます。ただでさえ可視化されていないプレゼンティーズムであることに加え、従業員自身メンタルヘルス不調である自覚がないとなると、中小企業の経営者が生産性の低下に気づくことは困難です。職場のメンタルヘルス対策における二次予防(早期発見・早期介入)の発想は、可視化されづらい中小企業の生産性低下を防ぐことにもつながるわけです。
中小企業を対象としたセミナーでよくお伝えする例え話ですが、穴の開いている浴槽に、どれだけお湯を注いでもお風呂は溜まりません。 まずは、浴槽の穴を探し、こぼれ出てしまうお湯を止めることが先決です。 “お湯を注ぐこと”とは、中小企業においては、従業員への福利厚生であったり、業務スリム化のサービスであったりするわけですが、まず成すべきは、潜在的なパフォーマンス低下への対処、つまりはプレゼンティーズムを低減させることであるという例え話です。 “従業員という経営資源一人一人のパフォーマンス”が経営へとダイレクトに反映されやすい中小企業だからこそ、メンタルヘルス不調によるプレゼンティーズムを予防するために、職場のメンタルヘルス対策に取り組む意義があるのです。 |
厚生労働省第14次労働災害防止計画によれば、大企業と比較した際、中小企業は職場のメンタルヘルス対策が進んでいないようです。小規模の事業所にてメンタルヘルス対策が進まない理由が3つ取り上げられています。いずれも中小企業ならではの事情を反映した理由であり、一方的に中小企業の努力に依存するのはあまりにも…と感じざるを得ません。中小企業の本音に、現役精神科産業医が回答します。
精神科産業医より回答:こちらは”職場のメンタルヘルス対策”周知不足によるものですね…。精神科産業医として、メンタルヘルス専門職として、社会への普及啓発を推進していかなければと感じます。先述の通り、職場のメンタルヘルス対策の対象は、全従業員です。メンタルヘルス一次予防のコンセプトに基づけば、健康な従業員が”より健康になるため”に実施する支援も職場のメンタルヘルス対策の一つです。
株式会社サポートメンタルヘルスの中小企業向け”職場のメンタルヘルス対策”は、メンタルヘルス一次予防の観点に基づき、ワークエンゲージメントを高める支援や、生産性を高める支援の提供も可能です。是非ご相談ください。
精神科産業医より回答:“職場のメンタルヘルス対策”に初めて取り組む中小企業は、最も対象従業員の多いメンタルヘルス一次予防に着目すべきです。従業員の”メンタルヘルスをより健康に保つ”意識が醸成されることで、結果的として、従業員が自身のメンタルヘルスに気を配る構えが形成されるかもしれません。つまり、メンタルヘルス二次予防につながることが期待できるのです。
例えば、睡眠の上手な取り方や、昨今話題のマインドフルネス、手軽なストレス解消法に関するメンタルヘルスセミナーであれば、心理的な抵抗なく、全従業員が受講できるでしょう。
【参考】
なお、職場のメンタルヘルス対策は、時に”寝た子を起こす”アプローチだと勘違いされがちなのですが、先述の通り、”ヒト”という経営資源の持つポテンシャルを充分に引き出すことで、中小企業の生産性を”より”高める経営手法だと換言できます。
精神科産業医より回答:多くの中小企業が、職場のメンタルヘルス対策については専門スタッフを外部委託しています。職場のメンタルヘルス対策の意義を充分に理解している中小企業経営者様であっても、常駐型のメンタルヘルス対策専門スタッフを雇用するとなると種々のコストは悩ましいところでしょう。いかにメンタルヘルス一次予防が全従業員対象であっても、毎日セミナーをするわけでもなし、二の足を踏んでしまいますよね…。
例えば税務であったり法務であったり、専門性の高い業務について多くの中小企業は外部委託しているのではないでしょうか。職場のメンタルヘルス対策についても同様、専門家のノウハウは外部委託で補いましょう。大企業対象と、中小企業対象とでは、メンタルヘルス対策のポイントが異なります。外部委託先の選定の際は、中小企業を専門としたメンタルヘルスアウトソーサーをお探しいただくとよろしいかと考えます。