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学習障害(LD)とは?特性・診断・支援方法を専門家が解説

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2025年6月13日

最終更新日 2025年6月13日

学習障害(限局性学習症)とは?特性・診断・支援方法を専門家が解説

最近、「頑張っているのに報われない」「なぜか同じミスを繰り返してしまう」そんな“うまくいかなさ”を感じていませんか?

人間関係や仕事、勉強――どれも一生懸命取り組んでいるのに、まわりと比べて要領が悪いように感じたり、自信が持てなかったり。「自分はダメなんじゃないか」と落ち込んでしまうこと、あると思います。

そんなとき、もしかしたら背景にあるのは「性格」や「努力不足」ではなく、学習障害(限局性学習症/LD・SLD)という特性かもしれません。

「小さいころから読み書きが苦手だったけれど、何とかやってきた」「数字の処理がどうしても苦手」「人と同じスピードで作業ができない」

――そんな体験がある方に向けて、本コラムではLDとは何か、どんな特徴があり、どう向き合っていけばいいのかを専門的知見に基づいてわかりやすく解説します。

「自分の特性を知ること」は、責めるのではなく、楽になる一歩です。まずは、あなたが感じている“うまくいかなさ”にそっと名前をつけるところから始めてみませんか?

 

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学習障害(LD)の定義と特徴


学習障害(Learning Disorder、LD)は、知的発達に遅れがないにもかかわらず、「読む」「書く」「話す」「聞く」「計算する」「推論する」といった特定の学習能力に著しい困難を示す神経発達障害です。

文部科学省によれば、LDは小学校入学後に顕在化することが多く、学業のつまずきを「努力不足」「怠けている」と誤解されることが少なくありません。

LDの原因は、生まれつきの脳機能の偏りと考えられており、視覚・聴覚障害や家庭環境など外的要因は直接の原因ではないとされています。

 

主なタイプと症状


ディスレクシア(読字障害)

  • 単語や文章の理解が困難
  • 行を飛ばして読んだり、同じ箇所を繰り返し読む
  • 音読がたどたどしく、意味の区切りで止まれない

ディスグラフィア(書字表出障害)

  • 鏡文字、誤字脱字が多い
  • 文法や句読点の使い方が不適切

ディスカリキュリア(算数障害)

  • 数量や単位の概念が理解しづらい
  • 計算はできても文章題や図表の読み取りが難しい

診断と医療機関の選び方


LDの診断には、知能検査や発達検査、読み書きに関する検査、養育者からの聞き取りなど複数の手続きが必要です。診断は子どもであれば児童精神科や小児科を標榜している医療機関、成人であれば大人の発達障害を専門としている医療機関によって行われます。

特に対象が子どもの場合、初診まで数カ月待ちとなることも多いため、まずは学校の担任やスクールカウンセラーに相談し、支援体制を整えましょう。

 

学校との連携と支援の実際


学習障害のある子どもは、学業の困難により登校しぶりや自己肯定感の低下を経験しやすく、二次的な不安障害や抑うつ症状につながることがあります。

支援には、

  • 課題の量や形式の調整
  • ICT機器や補助ツールの活用
  • 見やすい教材や色分けされた教科書の導入

などが効果的です(関連項目:感覚過敏からユニバーサルデザインを考える|精神科医監修ブログ)。

担任の先生だけでなく、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーとの連携が重要です。

 

併存障害と早期対応の重要性


LDは単独で現れることもありますが、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)と併存することも珍しくありません。2017年の研究では、ADHDの約30〜40%、ASDの約26%にLDの併存が見られたと報告されています。

また、学業でのつまずきや社会的評価の低下から、うつ病、双極性障害、不眠症、依存症(アルコール・薬物)などを発症するリスクもあります。本人や周囲が「いつもと違う」と感じたら、早めの医療機関受診が勧められます。

 

Q1. 学習障害(LD)は、大人になってからでも気づくことがありますか?

はい、あります。学習障害は知的発達に遅れがないため、子ども時代には見過ごされやすく、大人になってから「なぜか人より時間がかかる」「覚えられない・読み取れない」などの違和感を感じて初めて気づくケースが多くあります。

Q2. どんな人がLDの可能性がありますか?

例えば以下のような困りごとを感じている人は、LDの特性が関係しているかもしれません。

  • 読書や文章の理解に時間がかかる

  • 誤字脱字が多く、書くことが苦手

  • 数の概念や計算が極端に苦手

  • 何度教わっても、同じミスを繰り返してしまう

ただし、これらの特徴だけで自己診断することは避け、専門機関での評価が必要です。

Q3. 学習障害だとわかったら、どうすればいいですか?

最初に大切なのは、「困っているのは自分のせいじゃない」と知ることです。そのうえで、自分の特性に合った工夫(読み上げソフトの活用、書く作業のサポート、業務の見直しなど)を取り入れることで、生活のストレスを軽減できます。必要に応じて医療機関やカウンセラーへの相談もおすすめします。

Q4. どこに相談すればいいですか?

まずは、メンタルクリニックや発達障害の相談窓口を活用するのがよいでしょう。学校に在籍している場合はスクールカウンセラー、社会人であれば職場の産業医や外部相談窓口も有効です。

 

学習障害と向き合うために


学習障害は「努力不足」ではなく、特性に応じた支援が求められる神経発達障害です。早期発見と適切な教育的アプローチによって、本人の力を引き出しながら生活の質を高めることが可能です。

家庭・学校・医療が連携し、一人ひとりの可能性を信じて支援していくことが、子どもたちの未来を切り拓く鍵となります。

 

【執筆】

ふ~みん(公認心理師)

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