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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , ハラスメント対策 , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2024年6月7日
目次
株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。 株式会社サポートメンタルヘルスでは、メンタルヘルス専門職による”中小企業のメンタルヘルス対策個別無料相談会”(web開催、日時は応相談)を実施しております。従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの経営者様、人事ご担当者様、まずはお問い合わせフォームよりお申し込みください。
【監修】 本山真 株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役 日本医師会認定産業医/精神保健指定医 医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長 【執筆】 ぶち(公認心理師) ハラスメントを受けて困っている、自分がハラスメントをしたと言われて困っている…。最近は色々な行為が○○ハラと言われて問題になっています。職場などで嫌なことをされて困っているが、どこに相談すればいいか分からない方、自分の言動がハラスメントになっていないか心配という方は、このブログを読んでハラスメントのことを少しでも知っていただければと思います。 |
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ハラスメントは英語で「Harassment」。Harass(しつこく困らせる、苦しめる、悩ませる)を名詞にした言葉で、嫌がらせやいじめといった意味があります。日本語では、相手に不利益や不快感を与える嫌がらせやいじめ全般を指す言葉として使われていますよね。また、最近では職場だけでなく、家庭でのモラルハラスメント、学校でのスクールハラスメントなど、様々な場面でハラスメントという言葉が用いられています。
特に、職場におけるハラスメントについては、厚生労働省がそれぞれ定義を示しています。
職場におけるハラスメントにはいくつか種類があり、それぞれのハラスメントは下記の通り、定義されています。
【参考】ハラスメントの定義(厚生労働省)
パワーハラスメント
―職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすもの― |
①の「優越的な関係を背景とした言動」とは、立場が上の人や、業務を円滑に行うために必要な人、対象が同僚や部下であっても集団であることで抵抗や拒否をすることが難しい関係性における言動のことです。役職や専門性、集団性など、職場において一方に何らかの権力が存在している場合を指します。
②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは、業務上明らかに必要性のない言動や、業務の目的を大きく逸脱した言動、業務を行う手段として不適切な言動、その言動を行う人数や回数が許容範囲を超える言動を示します。
③の「労働者の就業環境が害される」とは、その言動によって身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快になったことで能力の発揮に悪影響が生じるなど、支障が生じることを示します。
セクシュアルハラスメント
―「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること― |
「性的な言動」とは、性的な事実関係を尋ねたり、からかったりすること、性的な内容のうわさを流すこと、食事等にしつこく誘うこと、個人的な体験談を話すことや、必要なく体に触れるといった行動のことです。ハラスメントにおける「職場」は、出張先や職務の延長にある宴会なども該当します。事業場に限ったものではない点には注意が必要です。
妊娠・出産・育児休業等ハラスメント
―「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されること― |
妊娠や出産、育児や介護の制度を利用したこと等を理由に解雇、減給、不利益な配置転換を行うことは「不利益取扱い」となります。「不利益取扱い」は法律で禁止されており、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法違反となります。ただし、業務を行う上で、客観的に見て必要だと判断された場合、業務を減らす相談等をすることは、強要しない限りハラスメントには該当しません。
以上のように、何によってどう支障をきたしているのかが明確になっているので、客観的にみて、業務上必要かつ過度ではない範囲で行われる言動についてはハラスメントとして認められない場合があります。
定義においてもご紹介しましたが、職場におけるハラスメントは、大きくパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントに分類されます。それぞれのハラスメントに型や種類があるので紹介していきます。
パワーハラスメント
①身体的な攻撃
Ex)蹴ったり殴ったり、物を投げつけたりする
②精神的な攻撃
Ex)人格を否定するような言動をしたり、長時間にわたって業務に関する叱責を繰り返す
③人間関係からの切り離し
Ex)一人の労働者に対して同僚が集団で無視し、職場で孤立させる
④過大な要求
Ex)労働者に業務とは関係ない私的な雑用の処理を強制的に行わせる
⑤過小な要求
Ex)管理職でもある労働者を退職させるため、誰でもできる業務を行わせる
⑥個の侵害(プライバシーの侵害)
Ex)労働者を職場外で継続的に監視したり、私物の写真を撮影したりする
セクシュアルハラスメント
①対価型セクシュアルハラスメント
Ex)事業主から性的な関係を要求されたが、拒否したら解雇された
②環境型セクシュアルハラスメント
Ex)上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下
妊娠・出産・育児休業等ハラスメント
①制度等の利用への嫌がらせ型
制度又は措置の利用に関する言動により就業関係が害されるもの
②状態への嫌がらせ型
女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により、就業環境が害されるもの
2022年4月から、職場における「パワーハラスメント防止措置」が全企業に義務化されています。以下が、厚労省が挙げているセクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策を含む、企業がすべきハラスメント対策になります。
○事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
1ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
2行為者への厳正な対処方針、内容に規定化と周知・啓発
○相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3相談窓口の設定
4相談に対する適切な対応
○職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
5事実関係の迅速かつ正確な確認
6被害者に対する適正な配慮の措置の実施
7行為者に対する適正な措置の実施
8再発防止措置の実施
○職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
9業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置(妊娠・出産等に関するハラスメントのみ)
○併せて講ずべき措置
10当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
11相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発
他にも、カスタマーハラスメントや就活ハラスメントなど、従業員以外が関わるハラスメントもあります。これらのハラスメントは、従業員はもちろん、企業のイメージにも関わるものなので、対策していけるといいですね。
一般的なハラスメント研修は、どのような行為がハラスメントになるのか、ハラスメントにどのようなリスクがあるのか、ハラスメントを受けたらどのように対処すればいいのか、というような内容を扱うことが多いようです。ハラスメント研修を受けることで、まずは自分が誰かから苦痛に感じる言動を受けていた場合、それがハラスメントに当てはまるのか、どこに相談すればいいのかが分かります。
また、例えば部下とのコミュニケーションが難しいと感じている時は、自分の言動がハラスメントになっていないか不安になりますよね。部下のために行なった指導が、結果的として、自覚のないパワハラになってしまうケースもあります。ハラスメント研修を受けることで、指導や声かけ、挨拶など職場における周囲への接し方を振り返る機会になりますよね。ハラスメント研修にて、より良いコミュニケーションの取り方を取り扱うことで、ハラスメント対策に留まらず安全性を醸成する効果を期待できます。従業員がハラスメントを理解していることで、予期せぬハラスメントが減るでしょうし、ハラスメント被害者も早期の対処ができるようになります。
実際にハラスメント防止措置の義務化に効果があったのかを検証した研究もあります。津野ら(2022)では、相談窓口が設置されていることを7割以上の従業員が認知している企業では、認知度が低い企業と比べてパワハラ・セクハラの発生割合が低かったと報告されています。ハラスメント防止措置としてルールを決めたり、窓口を設置したりするだけでなく、研修等を通して知らせていくことが大切ですね。
こちらのブログもご参照ください。
【2021年最新版】産業医執筆:ハラスメント対策まとめ【義務化≒罰則】
参考資料