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タグ : maitake(臨床心理士) , メンタルヘルス
2022年7月15日
最終更新日 2023年12月1日
目次
仕事の生産性を上げるためには、何が一番重要なのでしょうか。
答えは、「人間関係」という説があります。
これは、1920~30年代までかけて実施された、ホーソン研究という実験からみいだされたものです。ホーソン研究では工場の作業員に対して、様々な条件下で生み出す成果が変わるかを検証しています。この結果からはなんと、照明の明るさや勤務時間の規則性よりも、もっと重要な要素があると示されました。
それが、人間関係でした。単純に仕事の環境を良くするよりも、作業員の人間関係や仕事に貢献できているという感覚こそが、生産性に繋がるという結論です。もちろん、人間関係は公私ともに良いにこしたことはないですね。しかし、人の数だけ意見があるわけで、世界はぶつかることが前提でできています。そこで今回は、スムーズな人間関係のコツ・「アサーション」という概念をご紹介いたします。
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お互いを大切にしながら、それでも率直に、素直にコミュニケーションをすることを「アサーション」といいます(平木,2007)。私達は、気持ちを伝えるのに大きく二つの方法をとります。言葉を話し伝えるという方法と、表情や声色、ジェスチャーなどを使って伝える方法です。前者を「言語的コミュニケーション」、後者を「非言語的コミュニケーション」といいます(ノンバーバルと呼んだりします)。
日頃から、両者を組み合わせながら自己表現をしていますね(笑顔で話す とか、声を低くしてゆっくり話す、等のことです)。その自己表現は、自分と相手のどちらかが一方的にやりすぎたり、しなさすぎたりしたときに、「うまくいかなさ」に繋がりやすくなりがちです。
関連項目:労働者個人向けストレス対策(セルフケア)のマニュアル|厚生労働省
では、どうすれば「アサーション」はうまくいくのでしょうか。アサーション理論では、自己表現コミュニケーションのタイプを3つに分類しています。
一つ目は、「攻撃的」または「アグレッシブ」と呼ばれるものです。その名の通り、自分の意見や言いたいことを優先し、実は言われた側が我慢している…というようなパターンです。結果的に、人間関係が気まずくなってしまうことが想像しやすいでしょう。
二つ目は、「非主張的」または「ノン・アサーティブ」です。自分の言いたいことは表現せず、相手を優先しつつも心の中で「我慢して譲ったのに!」とモヤモヤを抱えてしまうパターンです。積み重なると、人間関係に投げやりになってしまったり、不満が積み重なり爆発してしまうことも考えられます。
そして、三つ目のコミュニケーションタイプが「アサーティブ」状態で、お互いの意見を尊重し合う「アサーション」が達成されていることを指します。これは、自分が「話す」ことだけではなく、相手の意見を「聴く」も含んでいます。
そもそも、アサーティブであること自体、お互いの意見を出し合うことです。そのため、アサーティブであれば絶対にぶつからない!という訳ではありませんが、意識することでお互いの意見を表現したうえで解決に向かうことができるかもしれません。
何にせよ、人間関係を分析するにあたってはまずは自分から、です。自分がどんな考えや行動パターンを取りがちなのかを客観的に理解することから始まります。こういった行動は、相手や状況によって変わり得ます。一つの方法だけを使い続けるわけではありませんが、この例ではどうでしょうか?
あなたはレストランで、満席のため順番を待っています。 自分の次の人から次々呼ばれていくではありませんか! あなたは店員さんにどう伝えますか? |
A:「あなた、ミスしてないですか?(怒)」
B:「呼ばれないのですが、こちらが気付かなかったのでしょうか?私としては、次に呼んでいただければありがたいのですが。」
C:伝えない。何も言わず待つ、または並ぶのをやめる。
考えてみてください。
アサーション度解説 いかがでしょうか?解説しましょう。
Aを選んだ方 『攻撃的・アグレッシブタイプ』
Bを選んだ方 『アサーティブタイプ』
Cを選んだ方 『非主張的・ノン・アサーティブタイプ』
AもCも、既に不満に思っていることに加えモヤモヤしてしまい、不満が不満を呼んでしまいます…。という意味でも、アサーティブに話せるというのは、回りまわってお得だと言えるでしょう。これがきっかけで、そのお店に行けなくなるのもなんですしね。
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まず、何故アサーティブではないかを考えてみましょう。そもそも、お互いを大切にしながら自己主張をしていくということは、自分を受け入れ、安心している状態が前提です。不安な状態では、自分のことも相手のことも受け止めて…という余裕は生まれません。
関連項目:【精神科医監修】怖くて不安?恐怖症性不安障害とは?
安心した状態になるためには…
等が必要でしょう。
言葉だけでは意図したことまで伝わらなかったということは、多分にあります。例えば、扇風機の近くにいる人に、電源を入れてほしいという期待を込めて「暑いね」と話したとき。受け取り手によっては、「そうかな?」と返事が返ってくるのみ、の可能性もあります。
ここには、「普通、ここまで言えば分かってくれるだろう」という思い込みと、自分の思う暑いという言葉と、相手の理解や体験が一致していない(ここでは、相手が「別に暑くない」と思っている可能性も。)ことが考えられます。
もちろん、前提として私にも相手にも「暑い」、「そうかな?」と自己表現する権利があります。こういう時、自分はムッとする、もしくは、もういいやと諦める傾向があるのか。それに気付いたうえで、ここからどう伝えていくとアサーティブでしょうか。
意見するとき、つい感情的になったり、常識に当てはめたりしてしまいがちです。そんな時、「I(アイ)メッセージ」を思い出してみてください。
Iメッセージは、トマス・ゴードン博士の著書「親業」で登場する気持ちの表現方法です。意見を言葉にするにあたって、『私は』から言い始めてみることで、相手を責めるのではなく自分が思っていることを伝えることができるといったものです。
先ほどの、扇風機をつけてほしい例の場合…
<Iメッセージ> 「(私は、)暑いので、扇風機をつけてほしいな。」
<Youメッセージ> 「(あなたは、)暑いのに、扇風機をつけてくれなかった。」
Iメッセージを意識するだけで、自然と自分の意見を伝えられ、受け手のもつ印象も変わりますね。
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また、常識だと思っていたことを一度分析してみるのも有効です。自分を苦しめていた常識は、実は思い込みだった!という場合があるからです。例えば、あなたが中学生だったとして「クラスメイト全員と仲良くないといけない」という自分の中での常識があったとすると、いかがでしょうか。ものすごく我慢したり上手くいかない時に自他を責めたりする気持ちになるのではないでしょうか。何故なら、この自分の中の常識が、ストイックすぎるからです。
つまり、自分の中で「こう!」と思うことが現実的に難しすぎることであれば、不当に自分を苦しめる結果になってしまうのです。こういった安心できない状態でアサーションを達成するのは、難しそうです。この例は極端かもしれませんが、「すべての人から好かれなければ」や「無意識にであっても人を傷つけてはいけない」と思っている方は、意外と多いのではないでしょうか。
これもストイックな思い込みですので、もうすこしマイルドに置き換えてみると楽になるでしょう。これに加え、表情や声色などが、話している内容と一致していると相手に理解しやすく、伝わりやすいと言われています。アサーションを意識することで、日常に少しでもいい変化がもたらされると良いですね。
【思い込み=考え方の癖はこちら】
【精神科医監修】認知の歪み?10パターンの考え方の癖を解説!
【精神科医監修】認知のゆがみの治し方|心のコリほぐしましょう!
参考文献
新刊のご紹介です。: よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方 http://t.co/6nGxgejx
— 主婦の友社 (@shfntm_PR) December 12, 2012
【解説】 maitake(臨床心理士) web会議で音声ミュートにしていると、ノンバーバルなメッセージの大切さに気づきます。笑顔でうなずくというリアクションをもらえるだけで双方向性が生まれますよね。コミュニケーションの基本は、自分も気持ちよく、相手も気持ちよく(I am OK、You are OK)ですね♪
【監修】 本山真(精神科医師) 精神保健指定医、日本医師会認定産業医、医療法人ラック理事長 株式会社サポートメンタルヘルス代表 |