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タグ : ハラスメント対策 , 中小企業 , 健康経営® , 籔(公認心理師・臨床心理士)
2020年7月31日
最終更新日 2024年2月10日
目次
メンタルヘルス、セルフケアに関する情報をお届けしています!
ハラスメント相談件数は年々増加しています。下記厚生労働省ホームページをご覧ください。
【参考】データで見るハラスメント(厚生労働省 あかるい職場応援団)
こういった背景を元に、2019年6月の法改正にて、パワーハラスメントを法規制することを目的に、『雇用上必要な措置を講じること』が事業主の義務とされることになりました。2020年6月1日にこの「パワハラ防止法」が施行され、先んじて大企業では義務化が開始されました。このニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。中小企業については、準備期間等が考慮され、当初は努力義務でよいとされていましたが、2022年4月からは、大企業同様に義務化となりました。
【こちらもどうぞ】
【2021年最新版】産業医執筆:ハラスメント対策まとめ【義務化≒罰則】
厚生労働省によると、職場のいじめ・いやがらせに関する各都道府県労働局への相談件数は、2017年度で72000件を超えており、6年間連続で、労働局へ寄せられる相談のうちトップの割合を占めているそうです。さらに、その中でもセクハラの相談件数は、同年度で約7000件と高水準でした。こういった相談件数からも見えてくることですが、2010年代に入ってからはハラスメントに対して敏感な世の中になっていると感じます。
カウンセラーとして働いていても、「これってパワハラですか?」といったご質問、ご相談を受ける機会は少なくありません。普通に生活している中でも、ハラスメントの話題を聞く機会も増えました。それと同時に、耳にするハラスメントの名前や種類もどんどん増えていると感じる方もいるのではないでしょうか。ハラスメントという言葉に触れる機会が増える一方で、「そもそもハラスメントってなんなんだろう、なんとなくイメージはわくけど・・・」と思っている方も多いようです。これには、同じ名前のハラスメントに対しても、人それぞれ独自の意味合いで使っていることも関係していそうです。
話しているうちに、自分が思った〇×ハラと違う・・・と感じる機会もあり、認識の齟齬から、問題解決が阻害されてしまう、なんてこともあるようです。そんな、ある種混沌とした状況下で「パワハラ対策が必要」とされた場合に、とにもかくにも一番最初にするべきことは、企業内のすべての人がパワハラについての共通認識を持つことです。では、今回対策が必要とされたパワハラとは一体何なのでしょうか。
厚生労働大臣が今回の法改正で示した指針によると、
パワーハラスメントとは
- 優越的な関係を背景とした
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
- 就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)
この3つすべてを満たすもの
と定義されています。パワハラ対策としては、上記に当てはまるものへの対応、と考えていただければ大丈夫です。
【参考】『パワーハラスメントの定義について』(厚生労働省):pdfファイルです
各種ハラスメントに対する世間の注目度が高くなった背景には、インターネットであっという間に情報が広まってしまう、名前も知らなかった会社のことが誰でも簡単に調べられる、といった情勢が関わっているといえます。実際、「この会社でこんなパワハラにあいました!」といったSNSへの投稿が、話題になったり議論の的になっている光景を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。インターネット、とりわけSNSの拡散力は、企業へ抱くイメージに影響を与えてしまうこともしばしばです。
また、こういった外側への影響だけでなく、「自分では感じていないけど、自社のこんな話を外から耳にした」ことによって不安を感じる従業員もいるかもしれません。しかし、逆に言えば「こんな対策をしています!しっかりサポートしています!」という認識を広めることも可能なわけです。そして、適切な対策やサポートを講じていると評判の会社は、それ自体が企業の魅力の一つになります。せっかく義務化するのであれば、これを機に会社の魅力を一つ増やすように動くのも、他社と差をつける一手かもしれません。
さて、先ほどの項目で、パワハラについての概要がわかったかと思います。本項では、パワハラについてメンタルヘルスの視点で考えられることについて、詳しく説明していきます。
ハラスメント全般に言えることですが、その影響が当事者間に留まらず、職場全体に悪循環を生み出すことが多くあります。実際に起こっていることだけが問題ではなく、それによって引き起こされる様々なマイナスに対して、社長、経営者だけでなく働いている一人一人が正しい理解を持った上で業務を遂行していくことが求められています。また、パワハラへの対応を適切に行うことで、従業員の満足度が上がるだけでなく、企業全体の生産性のアップにもつながると考えられます。パワハラによってどういった問題が起こるのか、どういった影響を及ぼすのかについて、メンタルヘルスの観点でまとめたものが以下になります。
ハラスメントがおきることで、パワハラを受けた人、職場双方へ影響が生じます。
両者の影響は、経営面の大きな損失へとつながります。労働生産性とメンタルヘルスは切っても切れない関係にあります。さらに、職場内で起こるハラスメント問題についてまわるのが、「パワハラ被害を訴えたことがばれてしまったらどうしよう」、「パワハラ相談をしたせいでもっとひどい目に遭ったら嫌だな」という不安から相談に至らないケースです。
これは当事者以外にも起こり得ることで、パワハラ相談を元に事実確認を行った際に「職場の現状を正直に言ったら、今度は自分がターゲットにされるのではないか」という不安があると、現状を正確に確認することは困難になるでしょう。パワハラ被害の当事者が弱い立場である場合、報告すればパワハラに該当するのに相談しにくい状況であるがために可視化されず、当事者のつらさだけが増えていく。表面上は何もない様子でも、可視化されないパワハラが続けばダメージは蓄積し、潜在的な不調は積み重なっていきます。職場の生産性低下は、休職者や退職者だけが原因ではありません。
むしろ「働いているけれども、本来できるパフォーマンスができなくなっている」状態は死角になりやすいため、知らず知らずのうちにダメージが積み重なってしまいます。この、「休んではいないが不調を抱えており、フルパワーでは働けていない人」の存在が企業の生産性に与える影響は大きいと言われています(プレゼンティズムと呼ばれます)。
【参考】
「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化(厚生労働省)pdfファイルです
【安心できる職場作り】ハラスメント対策の必要性・重要性|公認心理師執筆
当事者でなければ、さらに見えにくくなり、スルーされてしまいがちですが、パワハラにはこういった影響を職場全体に与える可能性があることも考慮に入れた方が、より効果的な対策が立てられるでしょう。さらに、「相談した方がいいことがある」「これなら安心して相談できる」という意識を持つこと自体が、安心感につながってパフォーマンスの向上に寄与します。
一見無関係にみえる対策が、めぐりめぐって企業全体の活性化につながること、そのつながりをとらえることで、今回の対策実施を効果的に活用できるでしょう。パワハラ対策の徹底は、魅力的な組織作りに役立ちます。
「ハラスメント対策が必要なのはわかった。じゃあ実際には何をどうしたらいいの?」という疑問が生じた方もいるかと思われます。今回の法令で実際に設置が義務化された対応について、なるべくわかりやすく説明していきたいと思います。厚労省では、具体的に以下の措置をするようにと示しています。
法第30条の3第2講の規定により、事業主は、職場におけるパワーハラスメントをおこなってはならないことその他職場におけるパワーハラスメントに起因する問題(以下「パワーハラスメント問題」という。)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる同条第1項の広報活動、啓発活動その他の措置の協力するように努めなければならない。
(引用元:厚生労働省告示第五号労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
つまり・・・
「パワハラに起因する問題」とは、労働者の意欲が低下して職場環境が悪化したり、全体の生産性が低下すること、さらに休職者・退職者が増えることによって企業に経営的な損失が発生する事態等が想定されています。
ハラスメントによって起こり得る問題のうち、メンタルヘルスの観点でお伝えできること、また、適切な対策を講じることのメリットは、これまで詳しく触れた通りです。では、実際どういった対策を講じるべきなのでしょうか。この点についても、厚労省より指針が示されています。
【参考】ハラスメント基本情報(厚生労働省 あかるい職場応援団)
1.会社としての指針を示す、知ってもらう まず必要なのが、企業での方針を新たに明確にしたうえで、その周知・啓発を促すことです。 社長や経営者、管理職が中心となり、社則、就業規則といった資料を作成し、「パワハラしたら駄目だよ」「パワハラした人への対処はこうだよ、処分はこれだよ」といったことを明確に定めて、すべての労働者に周知することがこれにあたります。 普及啓発のために研修を実施して情報を発信していくのも手かもしれませんね。 2.窓口を設置する 次に、適切に相談や苦情に応じることができる体制の整備が求められています。 何かあった際の相談窓口を設置して、「なにかあったらここに相談してね」と社員、労働者に周知する必要があります。 また、相談窓口の担当者は、相談に対して公平性を担保しつつ適切に対応することが求められます。 この場合の相談窓口は、企業内に設置しても、外部に委託しても良いということになっています。 相談内容は多岐に渡ると想定され、相談の入り口である窓口の担当者が専門知識を有していることで、その後の対応が的確に、スムーズに進められます。 個人情報保護について細心の注意を払う必要があるのは言うまでもありません。 3.対応する 最後に、実際に職場でパワハラにかかわる相談があった際には、企業として適切に対応していくことが求められています。 相談があった事例に対して、事実関係を迅速かつ正確に確認し、パワハラに該当する行為があった場合には、被害者への配慮と行為者への措置を適切におこなうことが指示されています。 さらに、パワハラ事例への個別の対応を踏まえ、パワハラの再発防止に向けて、パワハラ対策の周知や啓発、環境の改善等の取り組みを実施することも必要とされています。 |
ハラスメント対策については、下記、厚生労働省ホームページよりマニュアルがダウンロードできます。
【参考】職場におけるハラスメント対策マニュアル(厚生労働省)
【執筆】 籔(公認心理師・臨床心理士) そもそもハラスメントとは?、ハラスメントによって職場やメンタルヘルスへどんな影響が生じるのか?について解説しました。実際の対策窓口の導入は企業の状況により異なる部分も多いかと思われます。とはいえ、すべての中小企業でハラスメント対策窓口設置は義務化されているわけです。きちんと対応しようとは思うが、自社で専門的な知識を持った人を雇うのは大変・・・という企業様も多いのではないでしょうか。
社内で相談窓口を用意する際には、外から見た際の公平性や中立性が課題となる場合が多く、現在すでにハラスメント対応窓口を設置している大企業では、その点を解消するために最初の相談窓口を外部に委託しているところが多いそうです。相談窓口では、公平性の維持だけでなく、聞き取った内容をもとに、“今後どういった策を講じていくのか”がその後の鍵になります。 *下記ご参照ください。 【参考】ハラスメント相談窓口義務化にどう対応する?【産業医解説×パワハラ対策】
【監修】 本山真(医師/医療法人ラック理事長) 精神保健指定医、日本医師会認定産業医 |