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タグ : ayano(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2020年7月15日
最終更新日 2024年2月10日
目次
ストレスを感じているときは、心や体が頑張っている状態なので、自分がストレスにさらされていることになかなか気が付きにくいものです。緊張状態が解けたときや、緊張状態が長期にわたって続いた場合にどっと疲れや不調が出てきたりします。そのため、気が付いたら疲労や不調がひどくなってしまうことも…。
いまや「ストレス」という言葉があふれている現代社会。現状にお疲れの方も、普段の生活に奮闘している方も、これを機に現代社会についてまわる「ストレス」をもっとよく知って、ストレスとの上手な付き合い方を身に着けてみませんか。
関連項目:オタク臨床心理士・公認心理師は語る。趣味とストレスの関係とは?
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ストレスとは、広義には外部からの刺激により生じる緊張状態や歪みのことを言います。もともとは物理学分野における言葉で、ネガティブな意味で用いられる「ストレス」だけではなく、うまく利用すれば役立つストレスもあります。ストレスに関する仕組みは、いろいろな理論やモデルで説明されています。状況に応じて、適した理論やモデルを用いることで、ストレスと上手に付き合う手がかりになります。
一般的に用いられている「ストレス」は、その原因と結果を合わせてそのまま表現していることが多いですが、正式には歪みをもたらす刺激を「ストレッサー」、その刺激により生じた歪みを「ストレス反応」と言います。
ストレッサーによるストレス反応は下記3つに大別されます。
人がストレスにさらされたときの反応として「戦うか逃げるか反応(闘争―逃走反応)」というものがあります。これは動物に備わっている反応の一種で、危機状態において『戦う or 逃げる』行動によって状況を乗り越えようとするものです。天敵と遭遇してしまったら、『戦う』ないし『逃げる』ために瞬時に身体を動かす必要があります。
具体的には、脳のなかで様々な物質が放出され、血圧や血糖レベルを上昇させ、必要のない臓器の活動は抑制し、体を動かすのに必要な部位を活性化させたり、心拍数を上げ注意力を高めたりします。つまり、体のリラックススイッチはオフとなり、体は闘争(逃走)モードになるわけです。いわゆる“火事場の馬鹿力”ですね。いつも以上の力を発揮できる一方で、限界を超えた力を発揮し続けるわけですから気づかないうちに疲れも蓄積していくわけです。そして、何かのきっかけで闘争(逃走)モードがオフになった時、今度は蓄積された疲労が表面化します。ほっとした時に疲れがどっとくるのはこのためです。
ストレス社会といわれる現代では、この戦闘モードになっていることが多いといわれています。こういった戦闘モードが長期にわたって続くと、負荷はどんどん大きくなり心や体に悪影響を及ぼします。また、心や体が戦闘モードに慣れ切ってしまい、上手にオフにすることが出来なくなったりしてしまいます。
ストレスと病気のなりやすさの関係を表したもので「ストレスー脆弱性モデル」というものがあります。精神疾患を説明するときに引用されることの多い考え方です。脆弱性(ぜいじゃくせい)とは、その人がもつストレッサーへの対応力のことで、生まれつきの素質や後天的な学習が関連しているといわれており個々人で異なります。ストレッサーがパワフルなものであれば、脆弱性(病気のなりやすさ)に関わらず、重症化し病気になってしまう可能性があります。また、ストレッサー自体は軽微なものでも、その人の脆弱性が低ければ病気を発症してしまうこともあります。
つまり、AさんとBさんの二人が同じくらいの強度のストレッサーに晒された場合においても、Aさんは不調がなくてもBさんは不調がみられた、ということが起きうるのです。不調の自覚があるのに、「ほかの人が大丈夫だったのだから、自分も大丈夫だ」とか、不調を訴える人に対して「自分が大丈夫だったのだから、君も大丈夫だろう」といった考えはとっても危険です!
仕事・労働に際して生じるストレスにおけるモデルで「NIOSHの職業性ストレスモデル」というものがあります。これは、労働者が仕事においてストレスを受けてから、ストレス反応が出現し疾病に至るまでに、3つの要因が影響を与えることを示したモデルです。3つの要因とは下記を指します。
仕事上でのストレスに加え、個人的要因や仕事以外の要因が重なり、周囲の支えなどの緩衝要因が乏しい場合は疾病へ至るリスクは高くなります。しかし、これらの要因をうまくコントロールすることが出来れば、疾病を防ぐことが可能になります。例えば、気分の落ち込み、イライラ、不安、倦怠感などといったストレス反応は重症化のサインだと思い軽視しないこと、職場の理解や家族の支えといった緩衝要因が重要となることが分かります。
その他に職場におけるストレスモデルとして、任された仕事の負荷と仕事をやるうえでの自由度の関係からストレスを説明した「仕事の要求度・コントロールモデル」や費やした努力と報酬の関係からストレスを説明した「努力・報酬不均衡モデル」といったものがあります。
「ヤーキーズ・ドットソンの法則」というのをご存知でしょうか。パフォーマンスと緊張状態(ストレス)の関係における法則のことで、適度なストレスはパフォーマンスを向上させるが、過度なストレスはパフォーマンスを低下させるというものです。心理学者のヤーキーズさんとドットソンさんによる実験で発見されました。
二人はネズミを迷路に入れて電気ショックを与える実験を行いました。 ネズミは電気ショックがない状態よりも、少しだけ電気ショックを与えたときの方が早く迷路を攻略することが出来ました。しかし、電気ショックが強すぎると今度は逃げるだけで迷路を攻略することが出来なかったのです。 |
私たちの身近な例に置き換えてみましょう。例えば、作業や勉強をするとき、取り組む場所としてカフェを利用することがありますよね。
自宅は誘惑の宝庫、集中できない…。
かといって図書館だとあまりにも静かでそれもまた集中できない…。
カフェなら自宅のような誘惑はなく、適度な音と雰囲気で作業がはかどる!
期限付きのタスクやノルマも似たような性質があります。ノルマが全くないとなかなか手につかない!かといって過度なノルマは手が回りませんよね?効果的なストレスの度合いは、作業や物事によって異なります。この法則を活かし作業そのものや作業に取り組む環境を調整することで、作業の効率を上げることが出来るのです。
体調が悪いわけではないのに、なかなかやる気が出ない、「やる気スイッチ」が見つからない、という時は、このヤーキーズ・ドットソンの法則を思い出してみてください。そして、「ストレス」の観点から状況を見直してみてください。もしかすると、やる気スイッチの手がかりが見つかるかもしれません。自分のパフォーマンスが最大限に発揮される状態を模索してみるのもいいですね。
今すぐできるストレスケア
ストレスをため込まないために、日頃から出来る対処法として、休息(Rest)、癒し(Relaxation)、趣味活動(Recreation)が挙げられます。これらは頭文字をとって「3つのR」と呼ばれています。
負担のかかった状態が長期化していたり、ストレスが解消されないまま持続すると、不調をきたしたり重症化したりするリスクが高まります。そのため、日頃からストレスを解消することが重症化を予防することにつながります。
生活を振り返ったとき、この3つのRの時間を設けることはできていますか?ストレスに対する耐性は個人差があり、人によってことなります。ストレスとうまく付き合っていくためには、ストレスをよく理解し自分の調子に耳を傾けること、そして悪いストレスを蓄積させないことが大切です。
トレーニングで身に着けられるストレスケア
トレーニングをして身に着けることで、日常生活に取り入れられるメンタルヘルスケアの一つに「自律訓練法」というものがあります。自律訓練法では、心と体がリラックスした状態をつくることで自律神経のバランスを整えます。自律神経のバランスが整うことで、不調が改善したり、集中力が上がったりといった効果が期待できる心理療法です。
私たちの心と体のオンとオフをつかさどっているのは自律神経という神経です。ストレス社会ともいわれる現代では、さきほど説明した「戦闘モード」、つまりオンの状態になっていることの方が多いといわれています。そうするとだんだん、この戦闘モードをオフにしようとしても上手にできず、バランスが崩れ自律神経の乱れが生じてしまうのです。
自律神経が乱れてしまうと、体を休めていても休まらない、眠れない、不安になる、動悸がするといった不調が生じます。うまくリラックスした状態をつくることが出来なくなっているのです。そこで自律訓練法はトレーニングによって意図的にリラックス状態をつくり、自律神経のバランスを整えることを目的としています。習得すると、日常生活に取り入れることができ日頃から自身でメンタルヘルスケアをすることが出来ます。なお、習得には専門家からの指導を受けるとより安心・安全です!
【執筆】 ストレスがどんなものか、またどんな時に重症化しやすいか、なんとなく分かっていただけたでしょうか。戦う時にはまず敵をよく知る必要がありますよね?ストレスも同じです。ストレス反応は一人ひとり違います。自分の反応をよく知ることが大切です。 そして、日頃から自身でケアをしていくことで予防にもつながります。不調を自覚しているとき、不調が長引いているときは、我慢せずなるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。 なかなかストレスを避けることが難しいこのご時世。ストレッサーと上手に付き合うしなやかな心と体づくりを目指していきましょう! |