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タグ : メンタルヘルス , 田っちゃん@無職生活を経て転職しました!(公認心理師・臨床心理士)
2026年4月24日

「うつ病になるのは、気合が足りないせいだ」
SNSの発達により膨大な情報にアクセスできるようになった現代で、そんな言葉を聞いたら、多くの方が「それは違うのでは?」と違和感を持つのではないでしょうか。
変わって主流になったのが「うつ病は脳の病気である」という考え方です。
うつ病は「心の弱さ」や「気合の問題」ではなく、病だという認識を持つ人が増え、「うつ病は脳の病気である」という考え方が広まったのも、そういった誤解を正すためでした。
しかし最近、研究者たちがうつ病との関係で新たに注目している臓器があります。
それは「腸」です。
「え、腸?」と思った方、ごもっともです。脳の病気なのに、なぜ腸が関係するの?と思いますよね。
実は、気分を安定させる「セロトニン(よく”幸せホルモン”と呼ばれます)」のうち、約90%以上は脳ではなく腸で作られています。
また、腸内環境が乱れると、全身の免疫を通じて脳に「炎症」が起きることもわかってきました。
腸と脳は、私たちが思っている以上に深くつながっていて、このつながりのことを、医学では「腸脳相関」と呼びます。
本コラムでは、最新の研究をもとに、その腸脳相関のしくみをできるだけ簡単にわかりやすくお伝えしていきます。
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腸脳相関とは何か ― 腸と脳をつなぐ3つのルート
腸は「第2の脳」という言葉を聞いたことがありませんか?
実は腸には約1億個以上の神経細胞(腸管神経系)が存在します。これは脊髄の神経細胞数よりも多く、脳に次ぐ規模なのです。そして、多くの神経細胞数を誇る腸は、その神経細胞を渡すために3つの経路で脳とつながっています。
脳と腸を直接つなぐ、体の中でも大きな神経です。印象的なのは、この神経を流れる信号の約90%が「腸→脳」の方向だという点です。つまり腸は、脳に一方的に命令されているのではなく、むしろ自分の状態を脳に報告し続けているのです。
「お腹の調子が悪いと、なんだか気分も落ち込む」という経験はありませんか?それは腸から脳へのこの信号が関係しているかもしれません。
少し難しい名前ですが、要するに「ストレスが体に伝わるルート」のことです。強いストレスを感じると、脳からの信号をきっかけに「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。このホルモンが腸の粘膜を傷つけ、腸内細菌のバランスを乱すことがわかっています。
「仕事が忙しくなるとお腹を壊す」という方がいますが、それはまさにこのしくみが働いていることが考えられます。
腸内細菌のバランスが崩れると、「炎症性サイトカイン」と呼ばれる炎症を引き起こす物質が体の中で産生されます。この物質が血液に乗って脳にまで届き、脳の中で炎症を起こすことがあります。この「脳の炎症」が、うつ症状に深く関わっていると考えられています。
これらのルートが関わりあった結果…
ストレスを感じる→ストレスホルモンが腸の粘膜を傷つける→腸内環境が乱れる → セロトニンの材料が十分に作られなくなる → 脳に材料が届かない → 脳内のセロトニンが不足する → 気分が落ち込みやすくなる→ストレスホルモンが腸の粘膜を傷つける…
という悪循環につながることが推測されています。
腸活だけでうつ病は治るのか?医学的に重要な視点
ここが気になるところですよね。
それを確かめる研究が、世界中で行われています。
13件の臨床試験・786名のデータをまとめた大規模な分析(BMC Psychiatry 2023)では、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌などの有益な菌)を摂取したうつ病の方は、何も摂取しなかったグループに比べて、うつ症状が統計的に有意に改善したことが示されました。
また別の試験(Front Psychiatry 2021)では、薬を一度も使ったことがない中等度うつ病の方10名に特定のプロバイオティクスを8週間飲んでもらったところ、4週目から気分の改善が始まり、8週目には睡眠の質も良くなっていました。(なんと副作用は認められませんでした。)
さらに、腸内細菌を持たないマウスは、ストレスへの反応が異常に強くなるのですが、腸内細菌を移植するとその反応が正常に戻りました。この研究からは腸内細菌が「ストレス耐性」に直接関係していることが示唆されています。
これだけ聞くと今すぐにでもヨーグルトを買いに走り出したい衝動に駆られますが笑、プロバイオティクスや腸活は、あくまで「治療を助けるもの」です。
気分の落ち込みを感じたら、(腸活はしつつ)まずは専門の医師に相談してください。
腸内環境の改善だけで治そうとするのは無謀です。腸内環境の改善は、お薬や心理療法と組み合わせることでより効果が期待できることを覚えておいてください。
今日からできる腸内環境を整える3つの生活習慣
では、皆さんの日常ではどのような腸から気分を整えるためにどんなことができるでしょうか?
今すぐ始められる習慣をご紹介しますので、ぜひできることから始めてみてください。
①毎日の食事に発酵し食品を取り入れる
ヨーグルト・納豆・味噌・ぬか漬け・キムチなどの発酵食品には、腸内の有益菌を補うはたらきがあります。毎食頑張る必要はありません。どちらか食べるか迷った時には発酵食品を選ぶようにしてみましょう。
②食物繊維で有益菌を育てる
発酵食品で菌を「補う」だけでなく、もともといる菌を「育てる」ことも大切です。
海藻・ごぼう・大麦・バナナ・玉ねぎなどの食物繊維は、腸内細菌のエサになります。腸内細菌がこれらを分解するときに、セロトニンの材料が作られますので、こういった食べ物も積極的に摂るようにしてみましょう。
③睡眠・運動・ストレスケアも大切に
腸内細菌は、夜の睡眠中に腸の粘膜が修復される時間を必要としています。また、ウォーキングなどの軽い運動は腸の動きを活発にし、腸内細菌の多様性を高めます。ストレスは腸内環境を直接乱すため、意識的に「ほっとする時間」を作ることも立派な腸活です。
当たり前のことしか言っていないようですが、当たり前のことを続けることが本当に大切です。
「少しだけやっても意味ないし」と思わず、やらないよりほんの少しでもやった方がプラス、という気持ちを持って、気がついた時だけでも意識してみましょう。
参考文献
【解説】 田っちゃん(公認心理師・臨床心理士) まさか「腸」が気分と関係しているとはとても思わないですよね。気分の落ち込みには、今回の「腸」のような、意外な事柄が絡んでいるかもしれません。 私たちの体はすべてがつながっています。だからこそ、心の悩みも「心だけの問題」と思い込まず、体全体を整える視点を持つことが大切ですね。 とは言え…冷静に考えるとお腹に細菌がいるってすごいですよね。 浅い知識で恐縮ですが、お腹の調子を整えるには、とにかく善玉菌の数を増やせばいい、というよりも、菌の多様性を高めることの方が大切なんだとか。良いもので埋め尽くすよりも、善も悪も共存している状態、多様性が生き抜く力を高めるんだなぁと、腸内細菌の世界から学びました。 何事もバランスが大切ですね。
【監修】 本山真(代表取締役社長) 精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長 2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年には医療法人ラックを設立し綾瀬メンタルクリニックを開院。2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。 |