2026年4月2日
初回カウンセリングをご希望の方はこちら
オンラインカウンセリングログイン
資料ダウンロード
タグ : メンタルヘルス , 田っちゃん@無職生活を経て転職しました!(公認心理師・臨床心理士)
2026年4月3日

目次
ー音楽を流しながら仕事をしたい人
ー無音で仕事をしたい人
世の中には2種類の人間がいます。
みなさんはどちらですか?
私は圧倒的に前者です。
あまりにも静かだと、なんだかぼーっとしてしまったり、自分の発する音が気になってしまったり。時には心臓や呼吸の音が気になって集中できない、なんて時もありました。ただ、音楽を流していればなんでも良いかというとそうではありません。日本語の歌詞がある音楽だと、日本語の意味が頭に入ってきてしまって、目の前の作業が疎かになるんですよね。
このあたりは個人差があるとは思いますが、さまざまな人が同じ空間で働く「職場」という環境において、作業中の音楽は果たして流すべきでしょうか。
今回のコラムでは、「まあ、好みの問題だよね」で終わりがちな、「作業中は音楽を流した方がいいの?流さない方がいいの?」という問いについて掘り下げていきます。
メンタルヘルス、セルフケアに関する情報をお届けしています!
実は作業中の音楽(以下、「背景音」と呼びます)の影響については、これまでにさまざまな研究が行われています。
ここでは3つの視点を紹介します。
心理学では、人の集中力やパフォーマンスは、覚醒水準(脳がどれぐらい活性化しているか)と深く関係していると考えられています。この考え方を示した古典的な研究がYerkes–Dodsonの研究です。
この研究ではマウスを用い、電気刺激によってマウスの覚醒水準を操作しながら課題を行わせました。
その結果、刺激が弱すぎると学習が進まず、反対に強すぎるとパフォーマンスを下げることがわかり、【程よい覚醒状態の時に最も高い成果が出る】ことが明らかになりました。
ただし、この実験は人間ではなくマウスを対象としており、刺激も音楽ではなく電気刺激であること、作業も迷路課題であることから、そのまま人間の作業環境や集中力に当てはめられるわけではありません。
しかし、音楽が覚醒水準を変化させる刺激の一つであると考えると、次のように解釈できます。
つまり、「音楽を使って自分の覚醒水準を程よく保つこと」が作業のパフォーマンスを高める上では大切だといえそうです。
日本語の歌詞が集中力を妨げる理由について、Salame & Baddeleyによる研究から示唆が得られます。この研究では、背景音に意味のある言語が含まれると記憶課題の成績が低下することが示されました。
文章を書く、読解する、考えを言語化するなどの作業では、脳は言語処理に多くのリソースを割いています。 そこに意味のある言語(日本語の歌詞)の音楽が流れると、音楽が単なる背景音ではなく、「意味をもつ言語情報」として処理されてしまいます。
その結果、作業と音楽が同じ言語処理資源を奪い合い、脳内のリソースが圧迫されることで、 集中が妨げられやすくなるのではないかと推測されています。
この結果を補強するように、「音楽経験のある人ほど、音楽を流した状態での処理能力が低下しやすい」 という研究結果も報告されています。
これは、音楽経験のある人ほど音楽を「意味のある情報」として精緻に処理しやすく、 結果として作業に使える認知資源が減ってしまうためだと考えられます。つまり、音楽で集中できるかどうかは、その音楽を「調整すべき言語情報」として捉えるかどうかが関係しているようです。
前述した「言語情報として処理されるかどうか」の影響は、目の前のタスクでも異なります。
先ほどの話から分かるように、歌詞付きの音楽は言語情報として取り込まれますので、特に言語処理を多く必要とするタスクでは集中力の妨げになることが多いようです。
言語処理を多く必要とするタスクとは、文章を書く、読解する、考えを言語化するといった作業が挙げられます。
反対に、言語処理をほとんど伴わない、単純作業やルーティンワークであれば、歌詞付きの音楽が流れていても、パフォーマンスへの影響は比較的少ないということですね。
ただ、創造的作業に関しては、音楽や環境音が「発想を広げる刺激」になる可能性も示唆されていますので、日本語の歌詞がある音楽は集中に悪影響であると一律に結論づけてしまうのは、やや短絡的かもしれません。
今回のコラムから導き出された結論は以下の通りです。
背景音があるほうが集中できる条件
背景音がないほうが集中できる条件はその逆、ということになります。
結局のところ、「音楽を流したほうがいいか否か」は「時と場合と人による」というのがやはり正確な答えのようです。
この結論を職場環境に役立てるとすれば、「背景音がある環境」と「無音に近い環境」の両方の環境を用意して、状況に応じて選べるようにすることが理想的です。
近年はABW(Activity Based Working)という考え方に基づき、集中が必要な作業向けの「フォーカスゾーン」と、適度な刺激のある「ラウンジゾーン」を使い分けられるオフィス設定を取り入れる企業も増えています(ABWとは、アクティビティ(仕事内容)に応じて、働く「場所」や「環境」を自分で選ぶ働き方やオフィス設計のことです)。
そのような空間分けは単に息抜きのためではなくて、集中力を最大化するための環境設計でもあります。
職場環境について考える時に、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?
参考文献
【解説】 田っちゃん(公認心理師・臨床心理士) 職場環境って想像以上にメンタルにとって大切なのではないか、と思う今日この頃です。例えば天井が広いとか、窓があるとか、植物が置いてあるとか、いい香りがするとか。それだけで、なんとなく気分が沈みにくくなったりしますよね。 そういえば最近、ペットを職場に連れてきてOKにしている企業があることを知りました。動物好きの私としては「すぐに入社させてください」と思いつつ、同時に、こうした取り組みも従来にとらわれない職場環境作りの一つなのだと目から鱗がおちました。 もちろん、ペット同伴のような制度は会社側の方針や環境が整っていなければ実現が難しいものですが、職場環境を快適にする工夫は、必ずしも会社の取り組みだけに限られるわけではありません。 自分の好きなものをデスクに飾るとか、好きな飲み物を用意するとか、個人としても自分が快適に過ごせる環境を意識的に整えていけることがベストだと思います。
【監修】 本山真(代表取締役社長) 精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長 2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年には医療法人ラックを設立し綾瀬メンタルクリニックを開院。2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。 |