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タグ : ayano(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2025年11月14日

目次
先日保育園の懇談会があったのですが、そこで話題になったのが子どもたちの偏食! 少し前までは何でも食べていた子でも2歳前後で偏食気味に・・・。 栄養の偏りも気になるし、将来への影響も心配、という親御さんは多いのではないでしょうか。
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偏食とは一般的には、『馴染みのある食品と馴染みのない食品の両方を拒否または制限すること』、それにより食事に偏りがあることを指します。 先行研究によれば子どもの「偏食」における定義は定まっておらず、研究によって様々なようです。海外での研究を含め、ピークは2歳前後で13〜27%、5歳では22.2%、10歳では6.4%に減少するという報告されています。
定義が一定でない故に研究結果にも若干の幅があるのですが、偏食の出現には発達段階の影響もあり主に自我が芽生える2-3歳にピークを迎えると言われています。俗にいうイヤイヤ期の時期ですね・・・!
また、全体で25-33%の子供が偏食傾向を持っているといわれており。3-4人に一人は、偏食傾向を持っているということになります。世界共通の悩みなんですね。
参考文献
偏食の要因として、①脳機能の発達による影響と②遺伝や環境による影響の大きく2つにわけることができます。
ー扁桃体の活性化による要因
扁桃体とは「恐怖」や「不安」など、人体の危機察知に関わる部位のことで、3歳頃までの時期はこの扁桃体がめきめきと成長し、活性化されてます。それに伴い生じるのが「未知の、またはなじみのない食べ物に対する恐れや嫌悪感」とされるフードフォビアです。防衛本能の一つで、未知の食べ物は食べると危ないかもしれない!!!というセンサーが働き、拒否してしまうのです。
ー前頭葉の未熟さによる要因
前頭葉とは、計画を立てたり、判断をしたり、感情をコントロールしたりする部分です。 自我がめばえ「イヤイヤ」が出てくるこの頃は、まだこのイヤイヤをコントロールする能力が未熟です。そのため、自己主張はできるようになった一方で、その自己主張のコントロールができません。そして何か一つでも嫌な気持ちになったら、もう嫌がとまらない。 いろんな気持ちが「イヤイヤ」に集約されているのですね。
ー感覚統合の困難さによる要因
幼児期は、まだ食感や味覚や視覚、嗅覚などから得られた感覚情報を統合する機能がまだ未発達です。そのため特定の感覚に敏感に反応し、それだけで食べることを拒否してしまうこともあります。 大人になるにつれて、だんだんと『このねばねば感がおいしい』、『この苦みがアクセントになっていておいしい」など、いろんな感覚情報が統合されることで、食の味わいかたに幅が出てきます。ですが幼児期は、あらゆる感覚を統合して感じることが困難であるため、何か不快な感覚があると”食べたくない”となってしまうわけです。
偏食や食物へ嫌悪(フードフォビア)は、遺伝による影響も大きいことが分かっています。 双子を対象に、偏食の要因が遺伝なのか環境なのかを調査した海外の研究があります。 その研究によれば、1歳4か月時点での偏食具合の 約60%は遺伝によるものであることが示唆されました。また幼児期は遺伝的な要因が大きい一方で、年齢があがるにつれ環境による要因が大きくなっていくことがわかりました。 つまり幼児期の偏食傾向は、遺伝的要因が大きいため、子のわがままでも保護者の責任でもないということです。一方で、徐々に環境による影響をうけることから、正しい食生活の提供など環境を整えてあげることも重要であるといえます。
参考文献
2歳前後の偏食傾向の多くは自然に減少するといわれています。 Bourneら([2023](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37453176/))の調査によれば、2歳児の偏食行動の割合は13.5%、5歳児では22.2%、一方で10歳児では6.4%であったことを明らかにしています。
参考文献
偏食による栄養面での影響としては、特に果物、野菜、全粒穀物、タンパク質の摂取量の低下が顕著となり、ビタミン不足や便秘につながりやすくなります。 また、よく食べる子どもに比べて、間食が多くなる傾向も指摘されています。 特に偏食が長期的に続くような場合、成長面へも影響を及ぼす可能性が高くなります。身長・体重の伸びが平均より低下したり、疲れやすい・風邪を引きやすいなどのサインがある場合は要注意です。
参考文献
偏食が発達障害の原因となることはありません。また、偏食だからといって発達障害であるわけではありません。 ただし、発達障害の特性(感覚過敏やこだわり)が偏食の要因になることはあります(発達障害/神経発達症と感覚過敏の関係はこちら:【精神科医監修】感覚過敏とスヌーズレン・センサリールーム)。
乳幼児医の偏食は、経験不足によるものが多いと言われています。そのため、まずは食べ物への人見知り(食べ物見知り?)状態の解消に焦点を当ててみましょう。食物とのポジティブな経験を積み重ねることで、安心して食物を受け入れられるようになり、偏食が緩和されていきます。
不快な経験とならないように、食べることを無理強いすることは禁物です。たとえ食べなくても繰り返し食卓に並べ、だんだんに慣らしていきましょう。
偏食要因の一つであるネオフォビアは、見慣れないものや初めての物に対して警戒心を高めます。そのため徐々に慣れていき、警戒心を和らげていくことが大切です。 まずは見る、次はにおいを感じてみる、その次は触ってみる、食べてみるなど、段階をふんで少しずつ慣れていく過程を見守りましょう。
例えば、食物を育ててみる、食材を触ってみる、一緒に盛り付けてみる、調理してみるなど、食材を通して様々な経験をするのも効果的です。食材についていろんな経験をすることで興味が湧き、食行動につながります。
美味しそう、楽しそう、食べてみようかな、と、安心できる環境での食経験が、大切になります。
以下のポイントにあてはまり、かつ偏食が心配な場合は、近隣の保健センターやかかりつけ医に相談してみることをおすすめします。
例えば、食べられる食品が5品目以下、特定の形態に限定される(白くないとだめ、温かくないとダメ、サクサクじゃないとだめetc)
成長曲線から外れ、検診等でもなんらかの指摘を受けている
食事をすると激しい癇癪やパニックを起こす、吐き戻し、嘔吐などを伴う、食卓に座ること自体を極度に嫌がる等
歯が生えそろっているのに離乳食のようなものしか食べられない、同じ年代の子と比べて、食べられるものや食べ方が著しく偏っていると感じる等
食事に限らず、音や肌触りなどの感覚に対する過分性がみられる 言語や他社とのコミュニケーションに偏りがみられる等 #
2-3歳ころに生じる偏食は、そのほとんどは成長過程に見られる現象の一つ。遺伝や脳の発達に伴って、食べ物に対して疑い深くなっているようです。 例えるなら食べ物に対する人見知り状態!多くは一過性のもので、工夫によって十分に改善が可能です。 そのため偏食がみられていても、今までどおりバランスのとれた食事の提供を継続しつつ、ポジティブな食経験を積み重ねていくことが大切です。
一方で、重篤な偏食の場合は早めの介入が大切です。気になることがある場合は、専門機関へ相談しておくと安心です。
【執筆】 ちなみにわが子、大好きだったキウイを手足口病(手足や口のなかにぽつぽつとしたできものができる感染症)のときに食べてしまい、口の中でしみた経験から以降食べなくなってしまいました、、、。 ポジティブな経験をさせてあげて、また食べられるようになるといいな。 【監修】 本山真(医師) 株式会社サポートメンタルヘルス取締役社長・医療法人ラック理事長 精神保健指定医・日本医師会認定産業医 |