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タグ : chico(公認心理師・臨床心理士) , 産業精神保健
2025年10月24日

目次
どのように休日を過ごしたら有意義か、効率的に疲労回復するにはどうしたらいいか…昨今、休むことに関する書籍や商品が注目を浴びているようです。先日図書館で休養に関する本を借りようとしたら300件近くの予約が入っていましたし、着用するだけで疲労回復が促されるという「リカバリーウェア」「リカバリーサンダル」なるものも目にするようになりました。
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日本リカバリー協会の調査では、8割超の人が「疲労を抱えている」と答えています(※1)。働き方改革などで、日々の休憩時間やプライベートの時間、休日は増えていると思われますが、なぜこんなにも多くの日本人が疲れているのでしょうか。
ある調査では「プライベートな時間が増えたら何をしたいか?」という問いに対する日本人の最多回答は「休息・睡眠」だったとのこと(※2より引用)。「平日は忙しいから、休日くらい、だらだらしたい!ごろごろしたい!」そんな声が聞こえてくるようです。しかし休日に遅い時間までだらだら・ごろごろしていると、自律神経の切り替えがうまくいかなかったり、体内時計にズレが生じたりしてしまいます。すると、休日の夜に眠れない、たくさん寝たはずなのに月曜日の朝だるい、といったことが生じ得ます。
株式会社クロスリバーの調査では、ビジネスパーソンの61%が「休むこと=怠けている」という意識を持っていました(※3より引用)。日本人は休むことに対して罪悪感や後ろめたさを持ちやすいと考えられます。忙しいときは休みたいと思うのに、いざ休んでみると「自分はだらけているのではないか」と不安になってきてしまうこと、「何か意味のあることをしなくては!」と焦ってしまうことはありませんか?
そこで今回は「休養」について書きたいのですが、そもそも休養とは何でしょうか。厚生労働省によれば、「仕事や活動によって生じた心身の疲労を回復し、元の活力ある状態にもどし、身体的、精神的、社会的な健康能力を高めること」。休んだり眠ったりすることで心身の疲労を解消し、元の健康な状態に戻すことが「休」だとすれば、「養」は適度な運動や趣味の活動などで心身をリフレッシュし、エネルギーを養うことです。
だらだら・ごろごろスタイルの過ごし方では「休」はできていますが「養」ができていません。一方で「養」もできていると様々なメリットがあるそうです。リクルートワークス研究所の調査によると、休日に趣味や交友関係を充実させている人は、自己効力感、意欲、集中力などが高まり、仕事で高いパフォーマンスが発揮できるそうです(※4)。
今や「休養学」や「アクティブレスト」という概念もあります。スポーツ医学分野から派生して、効果的な休養については研究が進められていますし、アスリートは効率的な体づくりのため、軽い運動を行いながら体を休める日を設けているそうです。
では具体的にどんなことをしたらいいのか、7つの型(※5)に分類してご紹介していきます。
エネルギーを養うためには、当然体や心の疲れがとれていることが重要です。
・38-40度のお風呂に10-15分つかってみる。
お湯が熱すぎると交感神経が優位になってしまうので、全身浴であれば38-40度程度で。ジェットバスや炭酸入浴剤を活用すると、さらなる血行促進が期待できます。
・部屋に好きな香りを広げてみる。海や川の音を流してみる。
香りや音に注意を向けると、未来への不安や過去に対する後悔などから離れ、リラックスしやすくなります。また自然界の音には心地良さをもたらす効果があると言われています。
ハードな運動ではなく、ウォーキング、ストレッチなどの軽い運動でOKです。
・家の周りを長めに散歩してみる
普段通らない道を通ってみると新鮮さがあるのでおすすめです。ウォーキングやジョギングは、メンタルの安定に重要なセロトニンという物質を分泌させると言われています。
バランスのよい健康的な食事は、心身の健康のために欠かせません。
・必須アミノ酸を意識してみる
セロトニンは必須アミノ酸からつくられますが、これは体内でつくることができず、食事で摂取するしかありません。納豆、牛乳、肉類、アーモンド、胡桃、たらこ、そばなどに豊富に含まれています。
人や社会との交流だけでなく、自然や生き物とのふれあいもここに入ります。
・マッサージに通ってみる
親しい他者とのスキンシップは、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンを分泌させますが、これと同じ現象がマッサージでも期待できます。安心・安全と思える環境である必要があるので、何度か通ってみて「行きつけ」を見つけるのがおすすめです。
「趣味」などと大げさに捉える必要はありません。
・気になっていた本を読んでみる
動画コンテンツも豊富にありますが、本は自分のペースで進めることができるのでおすすめです。ゆっくり読むことも、先に結末を読んでしまうこともできます。
自分の手で、あるいは頭の中で何かを作り出す活動を指しています。
・日記をつけてみる
はじめはハードルが高いかもしれないので、その日食べたものなど、何かを記録することから始めてみましょう。慣れてきたら、感想なども書き加えていってみてください。
外食、旅行、部屋の模様替えなど、日常と異なる環境に身を置く活動を指しています。
・自然のある場所に行ってみる
緑がある場所に行くとリフレッシュできる感覚はありませんか?樹木から発されるフィトンチッドという物質には、ストレス緩和作用があると言われています。
7つの休養型をご紹介しましたが、1つ何かやってみると、それが複数の型にあてはまるということがよくあります。例えば休日に自炊をしてみるとしましょう。③栄養型⑥造形・想像型だけでなく、食材の買い出しに行けば②運動型、家族や友人と一緒にすれば④親交型、できた料理を窓際に持っていき、外の景色を見ながら食べたら⑦転換型になります。
せっかく休養をとってみても、仕事や勉強に関わるデバイスなどがあると、そちらに気がとられやすくなってしまいます。質の良い休養のためには、思い切って、持ち込まない、電源を切るなどの方法をとるとよいでしょう。
どの方法なら罪悪感なく心身を休ませることができるのか、どの方法なら自分にエネルギーがチャージされるのか、いくつか試しながら見つけてみてください。特に「休養慣れ」していない方は、「質の高い休養をとらなければならない!」と休養を取ること自体がストレスになることがないように注意しましょう。
引用文献
※1 一般社団法人日本リカバリー協会(2024)日本の疲労状況2024
https://www.recovery.or.jp/research/5580/
※2 宝島社(2024)医者が教える医学的に正しい休み方
※3 リクルートワークス研究所(2020)休日に仕事を忘れることが、仕事にやりがいを感じるきっかけになる ──石川ルチア
https://www.works-i.com/column/works04/detail018.html
※4 越川慎司(2024)世界の一流は「休日」に何をしているのか クロスメディア・パブリッシング
※5 片野秀樹(2022)片野先生、休養学って何ですか? VENEXリカバリーラボマガジン
https://www.venex-j.co.jp/recovery_lab_magazine/rest/detail/221130.html
参考文献
【監修】 本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医) 東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。
【執筆】 chico(公認心理師・臨床心理士) |