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精神科医監修|バウムテストってどんなテスト?病気や発達障害は診断可能?正確なのか?

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2023年8月25日

最終更新日 2024年7月30日

バウムテストってどんなテスト?病気や発達障害は診断可能?正確なのか?

一本の実のなる木を書いてみてください。映画やドラマなどで目にしたことがあるかもしれません。今回はバウムテストと呼ばれる心理検査について精神科医監修で解説します。

 

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バウムテストってどんなテスト?


バウムテストは1949年スイスの心理学者コッホによって考案された心理検査です。多くの人がよく知っているお菓子の「バウムクーヘン」と同じ「バウム」は、ドイツ語で木や樹木を意味しています。その名の通り、バウムテストはA4の紙に鉛筆で“1本の実のなる木”を描いてもらう検査ですが、いくつかある心理検査のうち投影法というカテゴリーに分類され、その中でも描画法と呼ばれる部類に入ります。

 

描画法は、被検者が描いた絵を分析することで、パーソナリティや対人関係などを評価する検査法です。その絵には描いた人の感情や欲求が表れるという考えから、1本の木を自己像とみなして被検者の内面理解を深めていきます。元々は職業適性の補助手段として、今で言うハローワークのような職業相談所で用いられていたそうですが、のちに パーソナリティ診断や発達的側面の検討へも使用されるようになりました。

 

バウムテストのメリットとして、紙と鉛筆があれば実施できる手軽さ、言語表現が苦手な人や子どもから大人まで年齢問わず実施できること、集団での実施や短期間を経ての再検査も可能なことなどが挙げられます。反対にデメリットとしては、あくまで補助手段としての理解であり、人格や発達的側面のすべてを理解・診断することはできないこと、単独での実施より他の心理検査とともに実施した方が良いこと、解釈には熟練を要し、被験者に関する情報を知らずに結果のみから分析しようとする(これを専門用語では目かくし分析=ブラインド・アナリシスと言います。)のは危険であることなどが挙げられます。

 

描かれた木は、全体の印象や木を描くときの鉛筆の動き、用紙を4分割した場合の上下左右の対比、安定感、幹や根の形とバランス、葉や影の有無、樹冠の特徴などを把握して解釈を進めますが、下図のような“グリュンワルドの空間図式”を参考にするのが代表的な方法です。

 

 

ここでは解釈の仕方についての詳細はご紹介しませんが、例えば、描いた木の大きさに自信の大きさが表れていたり、幹の太さや曲がり具合、地面の有無やゆがみがエネルギーの大きさや他者とのかかわり方の理解につながったりします。

 

バウムテストではどんな病気や症状が診断できる?発達障害は診断可能?


バウムテストを受けたからと言って「○○という病気です」とすぐ診断がつくわけではありません。先ほど短所の部分でも述べましたが、バウムテストはあくまでも補助手段としての検査ですので、これだけでは診断を確定できないのです。しかし、描いた絵には無意識の深層心理が表れるという検査の性質から、面談や診察室で話す内容とは異なるパーソナリティ傾向や心理状態を把握するきっかけにはなり得ます。また、検査者が提示する教示の理解度合や表現された絵の様子から、知的水準や発達水準を知ることは可能です。

【参考】

 

高機能広汎性発達障害児を対象としたバウムテストの研究もあります。

広汎性発達障害とは、脳の機能異常が原因と考えられている神経発達障害の一種であり、社会性(対人関係)の困難、コミュニケーションの困難、想像の困難やこだわり等を特性とする障害です。アメリカ精神医学会が刊行している精神障害の診断と統計マニュアル最新版(DSM-5)では、広汎性発達障害は診断名ではなく分類上の概念として記載され、以前広汎性発達障害と呼ばれていたアスペルガー症候群、レット症候群などは自閉スペクトラム症として診断されるようになりました。

【参考】

 

高機能広汎性発達障害とはその中でも知的障害を伴わないものと定義されています。彼らを対象として実施したバウムテストからは、最初の「1本の実のなる木を描いてください」という教示にこだわりを強くもつあまり、果実を大きく描き木とのバランスが不釣り合いになった、木の形や実の数を左右同じにした、という絵や、中には文字通り「実」という文字を書いたものもあったと言います。また、立体的に描くことが難しく平面的になりがち、視点を変えて全体を構成することができないなどイメージを表現する困難さや未熟さも見受けられました。

 

全体をとらえるのではなく部分的にとらえる特徴ゆえ、葉っぱや実にばかり注意が向いてしまい木としての全体像がアンバランスだったという結果もあったそうです。研究結果は極端な例かもしれませんが、このように描かれた木の様子や他の検査結果から発達障害の可能性が示唆されることはあるかもしれません。

 

バウムテストは正確?やっても意味ない?


何らかの困りごとがあって医療機関や相談機関を訪ね、医師や専門家から勧められて検査を受けるのであれば、意味のないものはないと言えるでしょう。しかし、バウムテストに限らず投影法に分類される検査は、先にも述べた通り全般的に理解や解釈が難しいとされているため、一定の評価基準はあるものの結果の読み取り方は検査者の経験値や技量によって大きく変わる可能性があります。

 

また、他の検査と組み合わせて実施することを前提としているので、同時に実施した別の検査結果を支持する手助けになったり、反対に別の検査では表れなかった深層心理にせまることができたりする可能性も十分にあります。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

たった1本の実のなる木ですが、絵を描くことには心を落ち着かせたり葛藤を整理したりする要素があることから、深層心理や発達的側面の特徴理解だけにとどまらず芸術療法と同様の治療的な効果も期待できると考えられています。

いずれにしても、受検者側は解釈について考えることなく思いのままの木を描くこと、検査者側はさまざまなケースを通して解釈方法に対して研鑽を積むことが大事だと言えます。

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【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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