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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , メンタル不調・精神疾患解説
2025年3月28日
突然ですが、皆さんは「死んだらどうなるんだろう」と考え、不安になった経験はありませんか?多くの人が、忙しい生活の中であまり考えないかもしれませんが、静かな時間や嫌なことに向き合う時に、このテーマが頭をよぎることがあるかもしれません。
本コラムでは、タナトフォビア(死への恐怖症)と死への恐怖や不安について、その原因や対処法を心理学の視点から詳しく解説します。
本コラムの要約
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死について不安になる理由は様々ですが、代表的なものを見てみましょう。死への恐怖を測定することを目的とした”日本語版Revised Death Anxiety Scale(川島,2019)”には、以下のような項目が挙げられます。
“想像してもわからない死後の状況を考えて嫌だ・不安だ”と感じたり、”今までできていたことやこれからやろうとしていたことが出来なくなることが嫌だ”と思ったり、”死ぬ苦しみが怖いと感じる”といった内容で構成されています。
木村(2021)の研究では、死のイメージ形成に影響を与える4つの要因が紹介されています。
なお、筆者としては、学生時代に進路を決めなければならない時(人生の一大事)、社会人になって期限の迫った目標がなくなった時(次の目標がない)に死について(将来について)考え、不安になることがあるように思います。
小さい頃からの夢や目標があって、それのために動き続けられている方は「そんなことを考えている暇はない!」と思うかもしれませんが、自分自身と向き合わなければならない状況に陥ると、どうしてもその先の見えない不安に意識を向けてしまうのではないでしょうか(向き合うことを避けているのかもしれませんが…)。
大前提として、死について考えること自体は悪いことではありません。死について考えることは、生きることについて考えることにも繋がるからです。中井(2023)は、存在論的恐怖(人生の有限性の認識から生じる恐怖、死ぬ運命への恐怖)を抱くことが、人生の意味の保有、ウェルビーイングが高まる可能性を示しています。
さらに、丹下ら(2016)の研究によれば、成人後期には死に対する恐怖が低下し、高齢になるほど「生を全うさせる意志」「人生に対して死が持つ意味」が強くなることがわかっています。年齢を重ねていくほど死は近づいてくるため、人生の意味や死の意味を考えたりする機会が増えるでしょう。結果として漠然とした不安や恐怖が解消していくのかもしれません。
とは言うものの、死について考えすぎてしまい苦しい気持ちに翻弄されてしまうと”今だからこそ出来ること”に費やすリソースが無くなってしまいますよね。迫田・横田(2019)は、人生における目的意識に関する記述を行った群は、人生における目的意識が高まり抑うつ気分が低下したことを明らかにしています。つまり、人生における目的や目標を考えることで、不安や恐怖などネガティブなことだけでなく、自分の人生のポジティブな面について考えることができるようになるのです。どうしても死に対する不安から離れられない時には、少し方向を変えて「じゃあどう生きようか」と考えられると良いのかもしれません。
脳のメカニズム上、何かに集中していたり、熱中している時は、あれこれ考えることはできません。例えばマインドフルネスは体内の感覚(呼吸など)に意識を向けるトレーニングを通じて、過去や未来に翻弄されない構えを身につけます。
とことん考え抜いてスッキリする方、一旦離れることで落ち着ける方、何か別の考え方を見つけて安心できる方など様々だと思うので、今回のブログで自分に合った考え方や対処法を見つけていただけると嬉しいです。そして、今を大切に生きられたらいいな、と思います。
【監修】 本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医) 東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。 【執筆】 ぶち(臨床心理士・公認心理師) |