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退職代行とメンタルヘルスの関係とは?精神科医が語る突然の退職の心理と支援策

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2025年5月19日

退職代行とメンタルヘルス──突然の退職を「個人の選択肢」に変えるために

はじめまして。精神科医として関東で2つのメンタルクリニックを運営しています。
普段は、会社員の方から学生さんまで、様々な方の「こころの不調」に向き合っています。

最近、外来でちらほら耳にするようになったのが「退職代行で会社を辞めました」という話。
正直、最初に聞いたときは「そんなサービスがあるのか」と驚きました。でも話を聞いていくと、そういう選択をする人の多くが、すでにかなり無理をしていて、限界に近い状態だったりするんですよね。

今日は、そんな「突然の退職」とメンタルヘルスの関係について、医者として、そしてひとりの人間として、少しだけ話をさせてもらえたらと思っています。

 

株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。

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「辞めるしかなかった」──そこまで追い詰められる前に


もちろん、「退職して楽になった」という声もあります。無理して通い続けて壊れてしまうより、ひとまず環境から離れるのは、ある意味ではとても大事な判断です。

でも、そのあとが問題です。支援につながらないまま退職してしまうと、こんなことが起こりがちです:

  • 「辞めたのは正解だったのか」と自分を責める

  • 経済的な不安が一気にのしかかる

  • 孤立する(職場も、相談できる人も失う)

要は、「辞めたあと」の土台がないと、回復に向かうどころか、さらに落ちていってしまう可能性もあるということです。

退職代行に「もうひと工夫」あると、かなり救われる人が増える


僕がここで強く伝えたいのは、退職代行というサービスそのものを否定したいわけじゃない、ということ。
むしろ「自分ではもう連絡すら無理」という状態にある人には、すごく意味のある仕組みだと思っています。

だからこそ、こんな提案をしたいんです。

✅ 退職代行に、これらを組み込んでみませんか?

  • 簡単な「こころのチェック」(心理的視野狭窄があるかどうか)

  • 「休職制度」や「傷病手当金」の案内(辞めなくても休める道があること)

  • 必要に応じて、精神科や心療内科への相談をすすめるフロー

ここまでやってもらえたら、退職代行は「逃げ道」じゃなく、「選択肢の整理をサポートするサービス」に進化すると思うんですよね。

そして本人にとっても、「仕方なく辞めた」から「ちゃんと考えて辞めた」になる。
それって、自分の人生にちゃんと責任を持つっていう、大きな違いだと思うんです。

医療サイドからも、連携していきたいと思っています


僕ら医療機関も、こういう時代の変化に対応する必要があると思っています。
もし退職代行業者さんのほうで、「こころのチェック体制を作りたい」とか「医療と連携したサービスを立ち上げたい」という思いがあれば、ぜひ声をかけてほしいんです。

提携クリニックとして、初期相談を受けたり、必要な制度の説明をしたり、診断書の発行なども含めた支援体制を構築することができます。

辞めること自体は「悪」じゃない


「辞めたら負け」なんて言葉を聞くことがありますが、そんなことはありません。
体調が崩れてまで続ける仕事に価値なんてありません。辞めたことがきっかけで、人生が立ち直る人もたくさんいます。

ただ、その「辞める」という決断が、視野が狭くなった末の“衝動”なのか、いくつかの選択肢を知ったうえでの“判断”なのか。

そこに、大きな違いがあるんです。

だからこそ、退職代行という貴重な“通路”を、もう一歩だけ広げてあげられたら――。
本人にとっても、業者さんにとっても、社会にとっても、ずっといい未来が待っているんじゃないか。僕はそんなふうに考えています。

退職代行業者の皆さまへ──連携による付加価値を


退職代行サービスは、今後さらに社会的需要が高まっていくことが予想されます。一方で、差別化が難しくなり、価格競争に巻き込まれる懸念も出てくるでしょう。

そのとき重要になるのは、「社会的な意義のある機能をどれだけ組み込めるか」です。利用者の安心や信頼は、「辞められる」だけではなく、「理解されている」「守られている」という体験によって築かれていきます。

私たち医療機関もまた、その「守る」側の一端として、協働する準備があります。メンタルチェック体制の構築や、必要に応じた医療紹介の連携など、具体的な協業モデルをご一緒できればと願っています。

おわりに


突然の退職は、単なる「就業の終了」ではなく、時にその人の社会との接点をも絶つ出来事になります。

しかし、退職代行が心理的・制度的な橋渡しを担うことができれば、それは「孤立のはじまり」ではなく、「回復への入口」として機能するかもしれません。

私たち専門職は、その未来に希望を持っています。ご関心ある退職代行業者の方は、ぜひ一度、お声かけください。

参考文献


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