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精神科産業医解説|ストレスチェックから考える中小企業のメンタルヘルス対策

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2025年4月21日

ストレスチェックを導入すべきか迷っている中小企業の経営者の方へ

中小企業経営者、人事担当者の皆さま、従業員のメンタルヘルス対策について、こんな悩みを抱えていませんか?

  • ストレスチェックなど対策は色々あるが、うちの規模でも必要?

  • 費用対効果が見えず、導入に踏み切れない

  • 専門職に相談しても、結局「大企業向け」な提案ばかり…

こうした疑問はごく自然なものです。というのも、現在広く提供されている多くのメンタルヘルス対策は従業員規模50人以上の企業を前提に設計されているからです。

 

本コラムの要約

  • 中小企業においては、画一的なストレスチェック制度導入だけでは効果が限定的

  • 「対話を起点とした一次予防」としての活用がカギ

  • 義務化を見据え、自社に最適な業者選びを今から始めることが大切

 

株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。

株式会社サポートメンタルヘルスでは、メンタルヘルス専門職による”中小企業のメンタルヘルス対策個別無料相談会”(web開催、日時は応相談)を実施しております。従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの経営者様、人事ご担当者様、まずはお問い合わせフォームよりお申し込みください。

 

 

▶メンタルヘルス対策コラム

▶ストレスチェックコラム

▶中小企業向けコラム

 

【解説】

本山真

株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役

日本医師会認定産業医/精神保健指定医

医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長

ストレスチェック制度と中小企業の現実


■ ストレスチェック義務化の概要

ストレスチェックは労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の従業員を抱える事業場に義務付けられている制度です。50人未満の事業場においては「努力義務」にとどまり、導入は任意です。

【今後ストレスチェックは50人未満の事業所含め義務化される予定です:ストレスチェック義務化の全事業所適用へ!中小企業が対応すべきポイントと実践的な方法

この制度は、「ストレスによる不調者を探す」ことが目的ではなく、集団分析を通じた職場環境の改善=一次予防を主眼としています。しかしながら、部署ごとに一定人数が集まらなければ集団分析は実施できません。つまり、小規模事業者ではせっかくストレスチェックを導入しても、期待される効果が得られにくい構造になっているのです。

実際のデータに見る「中小企業に多いメンタル不調」


■ 全国健康保険協会レセプトデータから見る傾向

中小企業従業員のメンタルヘルスについては、全国健康保険協会(いわゆる「協会けんぽ」)のレセプトデータ(※2013年)をもとにした研究が参考になります。

この研究では以下のような傾向が明らかになりました。

  • 年齢別:男性は45~49歳、女性は35~39歳で受療率が高い

  • 収入別:標準報酬月額20万〜30万円未満の層で受療率が高い

  • 産業別:「医療・福祉」「情報通信」「公務」などで高リスク

  • 企業規模別:9人以下の小規模事業所はメンタル不調発生率が低い傾向。ただし問題発生時は「速やかな退職」に繋がる傾向も

小規模企業は密な人間関係や迅速なコミュニケーションという強みがある一方で、いざ不調が起きると支える仕組みがなく、離職につながりやすいというリスクを抱えています。

【参考】中小企業従業者のメンタルヘルスと企業特性 : 全国健康保険協会レセプトデータを用いた実証分析

中小企業がストレスチェックを起点に取り組むメンタルヘルス対策とは?


ここで大切なのは、「自社に合ったメンタルヘルス対策」を選ぶ視点です。

■ 一律のストレスチェックが万能とは限らない

多くのストレスチェックサービスは「義務化対象企業=大企業」を前提に作られており、中小企業が利用するにはコスト・効果両面でギャップがあります。

■中小企業向けには「関係性重視型支援」が有効

少人数で構成される中小企業では、制度の導入よりも、対話・気づき・サポートの導線をどう確保するかがカギとなります。

例えば…

  • 日常的な関係性からの不調サインの把握

  • 外部相談窓口や匿名カウンセリングの活用

  • ストレスチェックを組織内対話の起点にする工夫

など、「ストレスチェックをきっかけとする対話と予防」という位置づけで活用するのが効果的です。

今後、ストレスチェックが全企業に義務化されるとしたら?


労働安全衛生法改正に伴い、ストレスチェックはいずれ全事業所に義務化されます。

その際、中小企業にとって重要となるのが、以下の2点です。

  1. 義務化に対応しながら、自社の特性に合った運用ができるか

  2. コストに見合う効果を得られる業者を選定できるか

 ストレスチェック業者を選ぶポイントは?


本コラムでは、制度や研究をもとに「中小企業にとって必要な視点」を解説しました。

とはいえ実際に導入するとなれば、気になるのは業者の選び方。

  • 中小企業でも効果的に使える仕組みか?

  • コストパフォーマンスは?

  • 組織課題に合わせたフィードバックがあるか?

これらの視点から、信頼できるストレスチェック業者を見つけておくことが、今後の義務化に向けた備え=経営リスクの回避に繋がります。

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