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精神科産業医監修|産業医面談のメリット・デメリットを解説

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2023年12月22日

最終更新日 2024年2月2日

産業医面談のメリット・デメリットを解説

今回のブログでは、「聞いたことはあるけど具体的にどんな制度なの?」「いったい何をするのか分からない!」という方もいるであろう『産業医面談』をテーマに解説していきたいと思います。

 

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産業医とは? 


産業医とは『事業場において、従業員が健康で快適な作業環境の下で仕事ができるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師のこと』を指します。

【引用】公益社団法人東京都医師会

 

事業場の業種や規模に応じて、産業医の選任基準は異なります。以下をご覧ください。

 

【産業医の選定基準】

  • 労働安全衛生法は事業所を単位として、業種や規模に応じて適用される。
  • 労働者数が50人未満の事業場 ⇒ 産業医の選任は努力義務
  • 労働者数が50人以上3000人以下の事業場 ⇒ 産業医を1名以上選任する義務がある。
  • 労働者数が3001人以上の事業場 ⇒ 産業医を2名以上選任する義務がある。
  • 従業員が常時1000人以上の事業場 ⇒ 専属産業医を選任する義務がある。

 

産業医面談とは?


産業医面談では、労働者の職場環境を改善し、健康的に働くことを保証するために、労働者の職場環境や業務内容心身にかかっている負荷の程度疲労の蓄積具合といった様々な情報を収集し、それらの情報を基に医学的な観点から助言や指導を行います。産業医面談は労働安全衛生法の中に位置づけられ、ストレスチェック制度※と大きく関連しています。産業医面談はいくつかの種類に分けられます。下の表をご覧ください。

※ストレスチェック制度とは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止し、心理的な負担の程度を把握するための制度です。この制度は、2015年の労働安全衛生法改正により導入されました。

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【産業医面談の種類】

  • 健康診断・その結果に基づく措置、作業環境の維持管理、作業の管理等、労働者の健康管理に関すること。

労働者が健康診断を実施し、異常な所見が認められた場合、事業者は「労働者の健康保持に必要な措置に関する医師の意見」を聞き、当該労働者の実情を考慮した適切な措置を講じる必要があります。

 

  • 休職や復職などの職場復帰支援における面接指導

⇒職場復帰を支援するために、職場復帰可否の判断や職場復帰支援プランの作成に必要な情報収集や評価を行います。詳細は以下をご参照ください。

心の健康問題により休業したら労働者の職場復帰支援の手引き(労働者健康安全機構,2020)

H3102_職場復帰支援の手引き+.indd (mhlw.go.jp)

 

下記は法律により実施が義務づけられた産業医面談です。

  • 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
  • ストレスチェック、高ストレス者への面接指導者・その結果に基づく措置

⇒ 過労・ストレスを背景とする労働者の脳・心臓疾患やメンタル不調の未然防止を目的としています。対象となる労働者への指導と医学的見地から事業者が就業上の適切な措置を講じるための意見を提言します。面接対象の基準などは、後ほど説明します。

 

産業医面談をするメリット・デメリットとは?


上記のように、産業医面談にはいくつかの種類があります。産業医面談を行うことのメリット・デメリットとしては、以下の内容が考えられます。

 

産業医面談をするメリット

  • メンタルヘルスや身体の不調だけでなく、職場環境や職務内容、働き方といった幅広い悩みごとを相談することができる。
  • 生活習慣や健康状態について産業医と振り返ることで、自分の現状を客観的に捉えることができる。
  • ストレス対処法やセルフケアの方法について助言してもらえる
  • メンタルヘルス不調に関して、医療機関を受診する目安を指導してもらえる。
  • 職場環境や職務内容がストレスの要因となっている場合、産業医は必要に応じて事業者に情報提供※を行い、職場環境の改善に向けて意見を伝える。事業者は産業医の意見を基に、職務上の配慮や措置を行うため、働きやすさの向上や過度な負荷の低減につながる。

※情報提供は、従業員から個人情報の提示に関する同意が得られていることが前提である

 

産業医面談をするデメリット

  • 疾病の診断や治療をする場ではないため、心身の不調を直接治療することはできない。
  • 事業者から長時間労働者や高ストレス者として面接指導の通知を受け、労働者が申出をした場合、産業医面談を受けることは事業者に伝わる

 

産業医面談は義務なの?


事業者は、従業員に対して産業医面談を実施する義務があります。一方、従業員にとっては産業医面談を受ける権利がありますが義務ではありません。例えば、ストレスチェックにて高ストレス者との認定を受けた従業員は、事業者より産業医面談の通知を受けます。この場合、通知を受けた従業員は、産業医面談を受けることも断ることもできるということになります。

 

産業医面談の対象の基準は?


法により実施が義務付けられている産業医面談では、労働時間と健康障害を発症するリスクの2つが面談の基準を基に、①長時間労働者への面接指導、②高ストレス者への面接指導が義務づけられています。それぞれ、対象者の基準についてみていきましょう。

 

長時間労働者への面接指導

2019年に労働安全衛生法が改正され、産業医による面接指導の対象となる労働者の要件が修正されました。改正された要件の大枠は、「※時間外・休日労働時間が1か月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者」になります。ちなみに、時間外・休日労働時間とは、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を基準として、そこから超えた時間を算定したものです。事業場で定めている「所定労働時間、所定休日」ではありません。

 

具体的には、以下の3つに該当する労働者が対象です。

 

1.労働者

月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者

月80時間の時間外・休日労働を行ったものについては、申出がない場合でも面接指導を実施するよう努める。

 

2.研究開発業務従事者 

1に加えて、月100時間超の時間外・休日労働を行った者

 

3.高度プロフェッショナル制度適用者

1週間当たりの健康管理時間(事業場内と事業場外での総合労働時間)が、40時間を超えた場合におけるその超えた時間について※月100時間を超えて行った者

※月100時間を超えない場合でも、申出を行った者については、医師による面接指導を実施するよう努める。

 

実際の面接実施に関する流れについては以下をご参照ください。

「過重労働による健康障害を防ぐために」+過重労働201908.indd (mhlw.go.jp)

「医師による長時間労働面接指導実施マニュアル」000843223.pdf (mhlw.go.jp)

 

高ストレス者への面接指導

医師や保健師(以下、ストレスチェック実施者)などより実施される「ストレスチェック」にて、高ストレスであり、面接指導が必要であるとストレスチェック実施者が判断した場合、労働者は『高ストレス者』として、面接指導の対象になります。

 

こちらも、具体的な実施の流れについては、以下をご参照ください。

「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」000533925.pdf (mhlw.go.jp)

「医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル」000843224.pdf (mhlw.go.jp)

 

産業医面談で話す内容


産業医面談では、労働者の ①勤務状況、②心理的ストレスや疲労の蓄積状況、③その他の心身の状況について確認を行っていきます。とは言っても、具体的に何を話すのか分からないですよね?そこで、産業医面談で話す内容を挙げてみました。実際に産業医面談を行う際には、以下の内容を参考に、自分自身を振り返り、話したいことを事前にまとめたうえで面談に臨むことをお勧めします!

 

勤務状況について

事業者と従業員の双方から、事業場で適用されている労働時間制度や実際の労働時間、職務内容、などについて情報収集を行います。具体的には、職務内容や労働時間、職場環境(職場の雰囲気、人間関係における困りごとなどについて話しましょう。

 

心理的ストレスや疲労の蓄積状況

産業医はストレスチェック結果や疲労の蓄積を測定するツールを基に、労働者との会話の中で疲労の蓄積状況を確認していきます。そのため、最近1か月間における心身の状態(イライラしている、不安を感じている、憂鬱、集中力が落ちてきた、体の調子が悪いなど)について話しましょう。

 

その他の心身の状況

現在の心身の健康状況や生活状況(アルコール、たばこ、運動、食習慣、睡眠時間など)について、どのように変化しているのかを確認していきます。みなさんはどのような生活習慣を送っているでしょうか?普段の日常生活を振り返りながら話していきましょう。

 

引用・参考文献


 

【執筆】

田中(公認心理師)

田中記事一覧

 

【監修】

本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長)

 

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