ブログ

【精神科医監修】痛みを感じるってどういうこと?身体と心のメカニズムに迫る

タグ : ,

2024年11月22日

身体と心のメカニズムから痛みについて解説

最近、職場の方と「自分が感じている痛みと他人が感じている痛みって違うんだろうか…」と盛り上がりました。皆さんの「強烈な痛みを感じた出来事」は何ですが?私の痛みエピソードベスト3は、小学生の頃に勢い余ってカッターで指をざっくり切ったこと(2回)、部活動中に同期が壁打ちしていたボールが跳ね返って小指の骨が欠けたことです。小指の骨が欠けたときは、アドレナリンが出ていたので包帯を巻いてその後も部活をしていました(今思うと恐ろしいですね)。今回は痛みについて知識をまとめなおしてみたので、お話していきたいと思います。

 

株式会社サポートメンタルヘルス公式LINE ID

メンタルヘルス情報配信中!友だち登録どうぞ!

 

専門職によるライブ配信でヘルスケアを学びませんか?

G-life(ジラフ)

 

そもそも痛みとは?


痛みは「刺激に対する感覚」と「情動体験」という2つの側面で構成されています。刺激に対する感覚とは、身体の内外で危険や器質的疾患によって生じる感覚のことです。例えば、壁の角に小指をぶつけて「痛い!」と感じるのがこれにあたります。一方、情動体験は、不安や嫌悪、恐怖など、感情が関与する部分です。たとえば、怪我をした際に「このまま血が止まらなかったらどうしよう」「悪化したらどうしよう」と不安や恐怖を感じるのがこの情動体験です。

痛みが発生する仕組み


痛みには「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「心因性疼痛」など、いくつかの種類があります。

  • 侵害受容性疼痛
    怪我や炎症などの刺激を体のセンサーが感知して生じる痛みです。骨折ややけど、歯痛、腰痛などがこれにあたります。痛む部位と感じる部位が一致し、傷や炎症が治まれば痛みも軽減することが多いのが特徴です。
  • 神経障害性疼痛
    神経そのものが損傷したり圧迫されたりすることで生じる痛みです。外傷や炎症がないにもかかわらず痛みを感じる場合がこれに該当します。神経が過敏になったり、痛みを伝える物質が過剰に出たり、痛みを抑える神経が正常に働かなくなったりして、長期間痛みが続くことがあります。
  • 痛覚変調性疼痛(旧:心因性疼痛)
    侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に該当せず、心理社会的要因(ストレスや不安)から生じる痛みです。近年の知見によれば、慢性的な痛みが継続することで些細な痛み刺激によっても痛みシグナルが出力されるようになる中枢性感作が影響していると考えられています。

痛みが続くと…


3ヶ月以上続く痛みを「慢性疼痛」と呼びます(3か月未満の痛みは急性疼痛と呼びます)。神経障害性疼痛や痛覚変調性疼痛(心因性疼痛)は、その性質上、慢性疼痛に発展するケースが多くなりがちだと言えます。先述の通り、痛覚変調性疼痛(心因性疼痛)は、中枢神経が平時の働きとは異なる反応をするようになるメカニズムが想定されています。中枢神経が敏感になることによって脳自体も痛みシグナルを感知しやすい状態になる結果として、痛みが長期間続くことがあります。痛みが長期間が続くことによって、過去の体験や思い込みが痛みの認識(認知)に影響を与え、痛みがさらに悪化する場合があります(慢性疼痛と対処方法についてはこちら:精神科医監修|なかなか治らない痛みに慢性疼痛の認知行動療法)。

 

 

痛みの客観的な評価


病院では、痛みのレベルを客観的に評価するために、いくつかの基準を用います。同じように「痛い」と訴えていても、その痛みの原因や強さ、期間などが異なることがあるため、以下のような項目を基に痛みを評価します。

  1. 痛みの原因(例: 交通事故、帯状疱疹)
  2. 痛みの期間(例: 1ヶ月、3年間)
  3. 痛みの頻度(例: 1日数回、持続的)
  4. 痛みの強さ
  5. 痛みの強さの変化(例: 徐々に増している)
  6. 痛みの部位(例: 腰、肩)
  7. 痛みの性質(例: ズキズキ、ピリピリ)
  8. 痛みに影響を与える要因(例: 天気、疲労)
  9. 活動への影響(例: 仕事や家事ができない)
  10. 障害補償や法律問題の有無
  11. これまでの治療歴(例: 神経ブロック、手術)
  12. 現在および過去の薬物療法(例: 抗うつ薬)

痛みの主観的な評価


“痛みは情動反応である”とまとめられることもあるように、痛みの知覚(更に言えば痛みの体験)は個人差が大きく、気分、状況によっても大きく左右されます。そのため、痛みの感じ方には「閾値」と「耐性」という概念があります。

  • 痛みの閾値
    痛みの感じやすさを指します。閾値が低い人は、弱い刺激でも痛みを感じやすく、逆に閾値が高い人は強い刺激でも痛みを感じにくいです。痛みをあまり感じない場合は、感覚鈍麻の可能性があり、発達障害との関連が指摘されています。
  • 痛みの耐性
    痛みにどれだけ耐えられるかを指します。耐性が強い人は痛みを我慢できますが、耐性が弱い人は痛みに耐えきれなくなります。閾値と耐性は異なる概念であり、痛みを感じやすいけれども、ある程度の痛みに耐えられるという人もいます。

 

参考文献


 

【執筆】

かなた(公認心理師・臨床心理士)

今回は痛みについてお話していきました。みなさんも周囲の方と痛みについてぜひお話してみてください。違いや共感できる部分が見つかって面白いかもしれません。

かなた記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

関連記事