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臨床心理士・公認心理師が試してみた|塗り絵で自律神経は整うのか?

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2024年9月27日

最終更新日 2024年9月28日

塗り絵で自律神経は整うのか、臨床心理士・公認心理師が試してみました

「自律神経を整える○○は本当に自律神経を整えるのか?」では、自律神経を整える方法として最近よく見る塗り絵や切り絵、日記などについて紹介しました。ブログを読んでくださった方の中には、自律神経が整う理屈や健康にいい理由はなんとなく分かったけど、本当に効果あるの?と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、「自律神経を整える○○」の中でもよく見る“塗り絵”を毎晩やってみて、その感想をお伝えしていこうと思います。

 

【監修】

本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

執筆】

ぶち(臨床心理士・公認心理師)

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自律神経が整ったかどうかは睡眠にフォーカスしました


自律神経が整った状態というのを明確な指標で示すのは難しいので今回は主に睡眠にフォーカスしてみます。

★自律神経が整うと健康になる

→寝る前に副交感神経が優位になる(体がリラックスモードになっている)

→睡眠の質が上がる

→日中も元気に過ごせる

という前提のもと、次の指標で記録してみようと思います。

 

塗り絵による効果の指標


①実施前後の心拍数

まずは、自律神経への効果を示す際によく用いられる指標である心拍数を測定します。自立神経が交感神経から副交感神経に切り替わると心拍数は減少するので、寝る前にリラックスモードになったのかを確認するには最適ですね。今回は簡単に、1分間の回数で測定します。

 

②睡眠の質

身体がリラックスモードになる、つまり身体を休める準備が整うと、眠りにつきやすくなって睡眠の質も上がります。今回は、寝付くのにかかった時間、途中で目が覚めてしまった回数、起床時の気分、日中の眠気の4つを記録します。

 

③実施前後、実施中の気分

身体や頭だけがリラックスモードになっても、気持ちがリラックスしていなければ、いざ寝ようとしたときに色々と考えてしまったりして眠れなくなることもあります。そこで、実施する前と後で気分は落ち着いたのか、実施中はどんな気分だとリラックスに繋がるのかを探るため、実施前後と実施中の気分を記録します。

 

 

塗り絵は自律神経を整えたのか?


実際に筆者が1週間体験してみた結果と感想を正直にお伝えします。今回は、100円ショップに売っている大人向けの塗り絵を使ってみました。実施時間は夜寝る前に15分間程度です。塗り絵を実施する以外はいつも通りの生活のままで過ごしているので、仕事や用事によって帰宅時間や寝る時間はバラバラです。

①心拍数

まずは心拍数ですが、これは大きく変化しませんでした。塗り絵をした後で少し心拍数が下がった日もありましたが、実施したのが「あとは寝るだけ」の状況だったので、既に身体はリラックスモードになっていたのかもしれません。

 

②睡眠の質

筆者はもともと日中眠くなりがちな方なのですが、ある程度睡眠時間が取れる日は塗り絵の効果を感じたように思います。

まず寝つきですが、体が疲れていると塗り絵をしてもしなくても自然と寝つきは良かったので、むしろ塗り絵をするのがとても面倒に感じました…。一方で体が疲れていない日は、普段だと寝るぎりぎりまでスマホを見たりしてしまって、なんとなく夜更かししてしまうこともありましたが、塗り絵をすることで体も気持ちも「寝るモード」に切り替わるので、10分程度「眠れないなぁ」と感じる時間はあってもちゃんと寝付くことができました。

 

また、以前はストレスがかかると途中で目が覚めることもありましたが、塗り絵を実施した期間は夜中に目が覚めることはありませんでした。しかし、5時間ほどで自然と目が覚めてしまい、目覚めはかなり良いのですが、睡眠時間は足りないと感じました。二度寝をするのですが、日中の眠さは改善されませんでした…。

 

③実施前後、実施中の気分

塗り絵を実施する前は、その日にあったことや明日しないといけないことなどを考えている日が多かったです。その日にあった嫌な出来事を考えているとき、気分も少しネガティブになっていたのですが、塗り絵を始めると徐々に考え事がなくなっていき、塗り絵に集中できるようになりました。そして実施後は、実施前よりネガティブな気分が弱まり、同じことを考えても少し楽観的になっていたように思います。

 

一方で、明日しないといけない気がかりなことを考えていた日は、塗り絵を実施する前も実施している最中もソワソワしていました。中々塗り絵に集中できず、どこを塗ろうか迷ったり、塗り絵自体に飽きたり、気がかりなことが浮かんでは消えてを繰り返したりしていました。しかし、実施後はソワソワが少し落ち着き、まだ気がかりではありましたが「明日考えよう」と気持ちを切り替えられました。同じ考え事でも「過ぎてしまったこと」と「これからあること」では塗り絵の集中力が変わるようですが、実施後はどちらもネガティブな気分から脱することができました。

※ちなみに、疲れ切っている日は塗り絵をしながら寝そうになっていたので、集中することもできず、塗り方もいつもより雑になっていました…。

 

自律神経を整えるために塗り絵をした感想


以上が記録してみた結果なのですが、全体的な感想としては、まず「寝る前に塗り絵をする」という習慣があるだけで意味があると感じました。普段はダラダラとスマホを見て寝落ち…なんてこともありましたが、寝る前に塗り絵をする時間を取ることで「寝る姿勢」になる準備ができるため、塗り絵をしない時よりも睡眠の質が上がっているように感じます。

 

また、心拍数に大きな変化はありませんでしたが、実施前後で気分はかなり変わりました。実施前・実施中にネガティブな気分だったり、気持ちが落ち着かなかったりしていても、実施後は落ち着いており、気分が切り替えられたと感じました。悩み続けて眠れなくなったり、悩みたくなくてスマホを見て眠らなかったりするよりも、「あとは寝るだけ」の状況を作り出すことで切り替えざるを得ない状態になっていたのかもしれません。

 

自律神経が整ったかどうかについては「副交感神経が優位になる」こと、「睡眠の質が上がる」ことはある程度達成されていたと思います。しかし、日中元気に過ごせたかというと、あまり変化はなかったように感じます。筆者は1週間程しか続けていないので、もっと続けて生活習慣も整っていくと、より効果が出てくるかもしれません。

 

最後に、塗り絵を実施してみて、筆者の場合は5日かけてやっと一つの絵柄が塗り終えるペースだったので、少し飽きを感じたり、同じ色で塗り続けることがしんどく感じたりすることもありました。昆野ら(2023)の研究では、悲しい気分の時に寒色系の色で塗り絵を行うと体調が悪くなることを抑えられることが示されています。なので、嫌なことがあった日は暗めな色を選んでみたり、楽しいことがあった日は明るい色を使ってみたりするとより効果的に、楽しく実施できるかもしれません。

 

自律神経を整えるための塗り絵は、完成すればもちろん達成感はありますが、その作業自体に効果があるものです。完成させることが目的になると、思うように進まなかった時、気分が乗らない時に「できなかった感」が生じてしまうので、飽きてしまったら別の塗り絵に移ってみたり、お手本通りではつまらないと思ったら別の色で塗ってみたりしてもいいかもしれません。

 

今回の内容はあくまで筆者の場合になりますが、やってみようと思った方は、参考にしてみてください!

 

参考文献


  • 昆野照美・川端康弘(2023)塗り絵の着色が気分や体調に及ぼす影響 北海道心理学研究 第45巻 p.52
  • 松本佳昭・森信彰・三田尻涼・江鐘偉(2010)心拍揺らぎによる精神的ストレス評価法に関する研究 ライフサポートVol.22,No.3

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