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【産業医監修】高校生が力説する「病み期」対策【ニュース解説】

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2021年12月1日

最終更新日 2021年12月3日

産業医監修ニュース解説!高校生が力説する「病み期」対策

2021年11月30日付Yahoo!ニュース

 

高校生が力説する「病み期」対策 マルチタスク禁止、無理せず生活リズム最優先

 

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「病み期」というキャッチーな心理教育

さて、今回の時事ニュース解説は2021年11月30日付Yahoo!ニュース、高校生が力説する「病み期」対策 マルチタスク禁止、無理せず生活リズム最優先高校生新聞)を取り上げます。

 

何だか気持ちが落ち込んで勉強がはかどらない「病み期」は誰にでも、突然やってくるものです。そんな病み期に入りながらも、オール5の成績を取った私の勉強法を3つ紹介します。(高校生記者・るんるん=2年)

【引用】高校生が力説する「病み期」対策 マルチタスク禁止、無理せず生活リズム最優先

 

高校生記者である『るんるん』さんが「病み期」について解説をしてらっしゃいます。これが非常に秀逸であり、日頃の仕事を振り返るきっかけとなったこともありこちらの記事を取り上げるにいたりました。

 

心の不調に関するメカニズムをお伝えするアプローチを心理教育(psycho education)と呼んだりします。狭義では認知行動療法というアプローチにパッケージされたものを指しますが、広義には下記の通り定義されます。

 

「精神障害やエイズなど受容しにくい問題を持つ人たちに、正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え、病気や障害の結果もたらされる諸問題 ・諸困難に対する対処法を習得してもらう事によって、主体的に療養生活を営めるように援助する方法」

【引用】心理教育・家族教育ネットワーク

 

私たち専門職の話って兎角固くなりがちです…。例えば本記事で取り上げてらっしゃる「病み期」。専門用語で言えば「うつ状態」や「抑うつ気分」が近しい概念でしょうか。

 

狭義であれ広義であれ心理教育は伝わってはじめて意味があります。専門用語を使うことが伝わりづらさにつながるようであれば(多くの場合それは真)、本来の意味から逸脱しないように言葉を咀嚼して伝える、といった工夫を施すべきです。

 

相手のことを考え説明をする。我々の専門性の一つであり、日々実践を続けているわけですが、間違いを伝えないようにと意気込んでしまうのか、どうしても固く(そしてボリューミーに)なってしまうんです…。今回の「病み期」。非常にキャッチーでいいですよね!

 

『うつ病』という言葉は多くのイメージを喚起します。もしかすると『治らない病気』というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。うつ病は適切なアプローチを選択すれば快方に向かう病気です。「病み期」の「期」の部分に『快方に向かう』という病気の正しい知識が内包されているんですよ。

 

メンタルヘルスに関する正しいイメージを持っていただくためには、正しい知識を広げていくことが必要なわけですが、知識として身につけて欲しいのは『うつ病』という名前ではなく、『あるあるな困りごとであり、良くなるものである、』という事実です。

 

『人間誰しも「病み期」ってありますよね。専門的にはうつ病って言うんですが、期っていうくらいなので「病んでいない期」もやってくるものです』

 

「病み期」を試しに使ってみましたがどうでしょう?すんなり理解できますよね?「病み期」やっぱり秀逸です!

 

【産業医・精神科医本山補足】

うつ病とよく似た病に『躁うつ病』(双極性障害)があります。躁うつ病は、「病み期」であるうつ状態と躁状態を繰り返すのが特徴です。一見「病み期」を抜け出し快方に向かっているように見えた状態が実は躁状態だった、となるとうつ病とはアプローチがやや異なります。

いつもより活動的だったりイライラしやすかったり、睡眠を取らなくてもバリバリ生活できてしまう。そんな状態と「病み期」を繰り返している場合は、精神科や心療内科への受診をおすすめします。

 

コンプレックス商法ではない生活習慣アドバイス

寝食を惜しんで勉強することを評価する家族、友達、先生もいるかもしれません。それで最高の結果が出せているのであれば問題ないでしょう。 ただ、もし生活の基本が乱れていて成績も伸び悩んでいるのだとしたら、1日の過ごし方を見直してみても損はないのではないでしょうか。

【引用】高校生が力説する「病み期」対策 マルチタスク禁止、無理せず生活リズム最優先

 

こちらの記事が素晴らしいのは、うつ病やうつ状態の方、もっと広くメンタルヘルスに関心をお持ちの方にお伝えしている生活習慣に関するアドバイスを実に身近な表現で、かつ簡易に表現しているんです。

 

意地悪をしたいわけではなく、我々専門職は、時にお困りの方をコンプレックス商法で追い込んでしまいます…。

『寝ないと○○になりますよ!』『しっかり食べないと○○なことが起こりますよ!』

思い余ってではあり内容が正しかったとしても、こんな風に言われると何だか反発したくなりませんか?私はなります笑

ニュース記事の表現であれば『損はない。確かに!ちょっと試してみようかな?』。そんな風に考えられそうな気がします。

 

持ち帰ってほしいのは堅苦しい専門用語ではない!

病んでてそんなに頭が回らない。そんな時は、例えば「今日は明日提出のプリント1枚をやればOK、終わったら寝る!」と割り切ってしまうのも一つの手です。

【引用】高校生が力説する「病み期」対策 マルチタスク禁止、無理せず生活リズム最優先

 

こちらは『あれもこれも』という反芻から思考を解き放つマインドフルネスに近しい発想だと言えますし…

 

大切なのは、全部を完璧にこなそうとしないこと。気分はいつしか回復します。

【引用】高校生が力説する「病み期」対策 マルチタスク禁止、無理せず生活リズム最優先

 

こちらは考え方のストレッチとも言える認知行動療法で取り扱うテーマです。

 

【参考】

認知行動療法(e-ヘルスネット|厚生労働省)

 

【臨床心理士がわかりやすく解説】マインドフルネス基礎講座

 

心理教育。マインドフルネス。認知行動療法。(少し乱暴であることは大前提として)名前は何でもいいんです。要は、お困りごとで制限を受けている方が、自分らしく生活できるようになることを目的としたアプローチですから、名前なんて知らなくても生活に導入していただければよいわけです。持って帰ってほしいのは堅苦しい専門用語ではありません。

 

今回取り上げたニュース記事。もしあなたが「病み期」であるなら、もし身近に「病み期」のお知り合いがいらっしゃるのなら、一読してみても損はないのではないでしょうか。

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

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【執筆】

久野(公認心理師・臨床心理士)

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