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【産業医監修ニュース解説】なぜネット上に「野良カウンセラー」が跋扈するのか

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2021年10月30日

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最終更新日 2021年10月30日

産業医監修ニュース解説!なぜネット上に「野良カウンセラー」が跋扈するのか

2021年10月28日付Yahoo!ニュース

 

なぜネット上に「野良カウンセラー」が跋扈するのか――自称可能な肩書が生む、メンタルヘルスの危険性

 

【ニュース概要】

  • ネット上で心理カウンセラー資格が無法状態
  • 『野良カウンセラー』とそうでないカウンセラーとの違いを解説
  • メンタルヘルス対策の一環として国家をあげた資格整備を期待

 

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『野良カウンセラー』。刺激的なタイトルのこちらのニュース。メンタルヘルスサービスを提供する者として首肯せざるを得ない提言を含むこともあり、今回取り上げることにしました。

 

『野良カウンセラー』?カウンセラー資格の膨大さ

ニュースを見て実際にカウンセラーと検索してみましたが、その数の膨大さに驚きです。そもそもカウンセラーとは、という解説、弊社ブログ引用します。

 

カウンセリングの綴り(スペル)はCounseling、助言・相談を意味するCounselの現在分詞です。つまり、カウンセリングとは広義で言えば相談を指します。

【引用】【公認心理師執筆】カウンセリングサービスの予防的な活用

 

つまり、相談ごとの種別を問わず、相談を受ける人のことをカウンセラーと呼んで差し支えないわけなので、○○カウンセラーの数は膨大にもなりますよね。

 

相談ごとをメンタルヘルスに限ったとしても、多数の『○○カウンセラー』、『○○カウンセラー資格』が存在します。ネット上で『メンタルヘルス カウンセラー資格』で検索してみると、ずらーっと様々な資格名が。ユーザー心理として『資格を持っているなら安心だろう』と感じるのは自然なことです。

 

『○○心理カウンセラーを名乗っている=野良カウンセラーではない保障にはならない』というのが、今回取り上げたニュースでの概要です。法律的な問題で言うと、名称独占か業務独占かという問題ですね。

 

『野良カウンセラー』はアセスメントができない

心の困りごと、つまりメンタルヘルス上の問題のいくつか(具体的には統合失調症や躁うつ病(双極性障害)などが該当します)は、お薬を使った治療が優先されます。

 

統合失調症やそううつ病の症状によって生活に支障が生じているケースにおいて、医療機関を受診し適切な治療を受けている事例がある一方で、『カウンセラー側が標準治療に関する知識がない』、『目前のユーザーが統合失調症やそううつ病である可能性を想定できない』といった事態によって不利益を被っている事例がある。

 

『野良カウンセラー』はアセスメントができない。ニュース内で原田隆之先生はこういった事態を危惧してらっしゃいます。

 

かねてより、サービスの専門性が高くなるほどユーザーサイドとサービス提供サイド(今回で言えば医療機関やカウンセラー)とで知識量には大きな差がある、と指摘されています。つまり、ユーザーとしては『自身が受けているサービスが適切かどうか判断することは難しい』ということです。

 

これは自分の生活を振り返っても腹落ちしやすい指摘です。マッサージに行くにせよ、髪を切ってもらうにせよ、基本的には自分の要望を伝えたうえで、あとはプロの腕を信用しお任せ、ということがほとんど。自分が受けた施術やカット技術が、業界的に最先端であったりトレンドであるのか、それともそうではないのか、判断する基準は持ち合わせていません。

 

ユーザーサイドの機会損失という観点ですね。ユーザーに罪はない話ですから、カウンセラー側がユーザーの困りごとを理解し把握する知識・経験を持つことはマストでしょう。自身がユーザーである場面に置き換えたとき、立ち寄ってみたサービスにて、理想を言えばスペシャルな技術を持ち合わせていてくれれば最高ですが、まずは最低限の知識・経験の保有(俗っぽく言えば無茶をしないこと)は期待したいですよね。心の国家資格である『公認心理師』には、ユーザーに不利益を生じさせない最低限の知識・経験を担保するという建付けを期待しています。

【参考】公認心理師|厚生労働省

 

『野良カウンセラー』と『野良ではないカウンセラー』の違い

そして、この話題はもう一つ大切なテーマを含んでいます。それは、ユーザーが複数の選択肢が存在することを理解したうえで自身の意思でサービスを選択できているか、という『意思決定』の問題です。

 

新型コロナ感染症拡大に伴いメディアで目にする・耳にする機会の増えた『エビデンス』。実は『意思決定』にはエビデンスが深く関係しています。

 

そもそもエビデンスとは『証拠』や『証明』という意味ですが、医療サービスにおいては、EBM(エビデンスベースドメディシン)の文脈で用いられることがほとんどです。メディアにおいてエビデンスという言葉は、効果がある/ない、という使われ方をされることが多い印象がありますが、それはEBMの一側面でしかありません。

 

EBMは、効果のある治療方法に関する情報を検索し、情報をユーザーに提示することでユーザーの意思決定をサポートする、という一連のプロセスを指します。

【参考】3. 「根拠に基づく医療」(EBM)を理解しよう|厚生労働省

 

あなたの○○という状態については、Aという治療方法、Bという治療方法があります。

Bと比較しAのアプローチの方が治療成績は良い一方で、治療期間・費用はBの方が優れています。

なお、エビデンスとしてレベルは落ちますがCという現在知見を蓄積しているアプローチもあります。

Cは今後、治療効果・期間・費用という観点から第一選択として位置づけられる可能性があります。

さてあなたはどのアプローチを選択しますか?

 

想定されているEBMはこういったプロセスを経るわけです。先述のマッサージの例で言えば、下記のような感じとなります。

 

腰痛に対しては、現在Aという施術が最も効果があるというデータが蓄積されています。ただし複数回通う必要性があります。

Bという施術はAと比較すると効果としては一段落ちますが、単回での効果が見込めるというデータがあります。

また、あなたの腰痛については、整形外科でのCという治療方法が適している可能性が高いと考えます。

あなたの『腰痛を解消して運動をしたい』というご希望に基づくと腰痛の影響が少ないDというスポーツに挑戦してみる、という選択肢もあります。

A、B、C、Dという選択肢があるわけですがいかがしますか?

 

困り感を解消し、希望している生活を送るためのアプローチが世の中に複数存在すること、そして生活状況や価値観などに基づき自身で選択すること。こういったアプローチを取るためには、ユーザーの状態を正しく把握できることはマスト(アセスメントですね)であり、ユーザーが該当している状態を改善するための選択肢に関する知識が必要です。また、ユーザーが自身の意思で選択をすることをサポートするための技術が必要となります。

 

極端な例ではありますが、対極的なアプローチは下記のような感じでしょうか。

 

あなたの状態は○○です!それ以外考えられません。

支援方法は○○しかありません。

今この方法を取らないと○○な事態になりますよ。

※メンタルヘルス領域では、時に上記のようなアプローチを取らざるを得ない場合があるのも実際ですが、自ら命を絶ってしまう・若しくは周囲の人を傷つけてしまうリスクが高い切迫した状態に限られています。そうしたアプローチを取る際の手続きについては、法律で厳重に管理されています。

 

意思決定をサポートするメソッドの一つである共同意思決定支援:SDM(シェアードディシジョンメイキング)。ユーザーの権利を広く意識したアプローチを意識する点が、ニュース内『野良カウンセラー』と野良ではないカウンセラーとの違いだと言えるかもしれません。

 

『野良カウンセラー』問題と資格問題

執筆を担当している私は、公認心理師資格・臨床心理士資格を保有しておりますが、常々、資格とは『自身を証明したりましてや自身を誇ったりするためのもの』ではなく、『ユーザーにとって種々の利益となるもの』であるべきと感じています。

 

『公認心理師資格、臨床心理士資格を保有しているから○○資格より優れている』といった選民思想的な発想はまったくございませんが、本ニュースにおける『野良カウンセラー』と比して、両資格ともユーザーを守るための倫理規程が設定されているところは大きな違いだと感じます。

【参考】

日本公認心理師協会倫理綱領

一般社団法人日本臨床心理士会倫理綱領

 

公認心理師資格、臨床心理士資格に限らず倫理規程が設定されている資格、更に加えて言えば、倫理規程がお飾りではなくしっかりと運用されている資格は、ユーザーにとって安心安全な資格だと言えるかもしれません。

 

更に更に言えば、エビデンスについても倫理規程についても、他のアプローチや資格との優位性を示すために使うのではなく、やはりユーザーありきでその良否・是非を検討すべきだと感じます。

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

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