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タグ : メンタルヘルス対策 , 中小企業 , 本山真(精神科医師・産業医) , 産業精神保健
2024年2月5日
最終更新日 2024年8月2日
株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。 株式会社サポートメンタルヘルスでは、メンタルヘルス専門職による”中小企業のメンタルヘルス対策個別無料相談会”(web開催、日時は応相談)を実施しております。従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの経営者様、人事ご担当者様、まずはお問い合わせフォームよりお申し込みください。
【執筆】 本山真 株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役 日本医師会認定産業医/精神保健指定医 医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長 |
中小企業庁の2021年調査によれば、国内の中小企業数は300万を超えており、実に大企業の約300倍の企業数となります。農林漁業を除く中小企業が生み出している雇用は、約5000万人、日本の労働力人口は約7000万人ですから、中小企業が社会に果たす役割の大きさをご理解いただけるかと思います。
中小企業が社会に果たす役割は雇用の創出だけではありません。中小企業は”都市部と比較しサービスやインフラが脆弱な地域における住民生活の質”を底上げする担い手だと換言できます。
つまり、”中小企業・小規模企業の持続的な成長”、即ち、”中小企業における経営課題の解決”は、国民の幸福を持続させることに直結するわけです。産業医としての経験を振り返るに、”中小企業における経営課題の解決”においてメンタルヘルス対策は有用なアプローチだと考えます。中小企業庁による2023年版 中小企業白書・小規模企業白書を参考にしつつ、”中小企業の経営課題を解決するために、いかにメンタルヘルス対策を活かすのか”のスキームについて解説していきます。
【参考】
中小企業・小規模事業者の数|中小企業庁(閲覧:2024年1月26日)
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中小企業の経営課題として圧倒的なトレンドは”深刻な人手不足”です。予てより労働人口の減少は、日本の経済を考えるうえで重要なトピックとして取り扱われていましたが、いよいよ顕在化してきた感があります。中小企業・小規模企業者の人手不足への取組状況に関する調査(2023年)によれば、3割の中小企業が人手不足を深刻だと評価しています。深刻とまではいかないが、問題として認識している中小企業は6割にのぼります。
人手不足という中小企業の経営課題について、業務効率化、人材育成、職場環境の整備(テレワーク、休暇取得促進、所定労働時間削減)、といった対策が企業として導入されているものの、人手不足の解消には至っていない企業が多いようです。また、現実的な問題として、人手不足対策にかけるコストやノウハウ不足によって対策に取り組めないという中小企業も少なくありません。人手が不足している結果として、事業規模を維持することが困難だと感じている企業もあるようです。
【参考】
中小機構は、人手不足のための相談窓口開設や、人手不足に対応するための支援情報を発信しています。深刻な人手不足で悩んでいる、または人手不足への対策に着手しようと考えている中小企業経営者は是非参考になさってください。
【参考】
先にも取り上げた通り、中小企業は、雇用創出やサービスの充実という形で地域を支えています。事実、中小企業は人材不足という経営課題を解決すべくシニア活用という形で地域の雇用を創出し、地域を活況化させています。事業の維持・拡大が可能となれば、若者や女性の雇用創出にもつながり、地方の人口減少を食い止める効果も期待されます。つまり、マクロの視点に立てば、中小企業の経営課題は日本という国家の課題だとも換言できるわけです。
人手不足については2つの視点を持つことが有用だと考えます。
1つは文字通りの人手不足、事業を継続・拡大するうえで従業員数が不足しているケースです。対策としてはシンプルであり、いかに人材を採用するかに尽きます。少子高齢化に伴う過去に例を見ない労働人口の減少によって、現在、採用・雇用は、圧倒的な売り手市場が形成されています。ロジックは非常に単純ですが、”メンタルヘルス対策を導入している中小企業”と、”メンタルヘルス対策を導入していない中小企業”、求職者はどちらを選択するでしょうか?
メンタルヘルス対策に未着手の中小企業はぜひメンタルヘルス対策の導入をご検討いただきたいと思いますし、既にメンタルヘルス対策を導入している中小企業については、メンタルヘルス対策導入について積極的な情報リリースをしていただきたいと思います。
中小企業における人手不足を紐解くもう1つの視点は、人手不足を”生産性の低下”から考えるというものです。例えば、花粉症は、労働生産性を低下させることがよく知られています。つまり、花粉量が増加する時期は、平時と比較し、組織の生産性が低下している可能性があるわけです。花粉症の例のように、出勤している従業員が心身の不調により生産性を落としている状態を“プレゼンティーズム”と呼びます。目に見えづらい(場合によっては従業員本人も気づいていない)生産性低下であるため、意識的に対処をしないと、従業員数は充足しているものの人手が足りないという状態に陥りがちです。
“目に見えづらい不調”、”場合によると本人も気づいていない不調”というトピックは、メンタルヘルス領域が長年取り組んできたテーマでもあります。メンタルヘルス対策の一つであるストレスチェックはメンタルヘルスの可視化に役立ちますし、従業員へのセルフケア研修や管理職へのラインケア研修は、従業員・管理職双方がプレゼンティーズムに早期に気づくこと、早期に対処することを促進するでしょう。
プレゼンティーズム対策においてメンタルヘルス領域が持つ優位性はもう一つあります。睡眠へのアプローチです。睡眠状態と労働生産性の関連は様々な研究によって実証されています。また、不眠状態はメンタルヘルスのみならず、身体疾患のリスクと関連していることがよく知られています。睡眠状態をより良くすることを目的としたアプローチの蓄積はメンタルヘルス領域の専売特許とも言えます。近年では、不眠のための認知行動療法(CBT-i)が睡眠状態だけではなくプレゼンティーズムも大幅に改善することも明らかになっています(Takanoなど,2021)。
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メンタルヘルス対策は、中小企業の経営課題である”人手不足”を包括的に解決するアプローチだということがご理解いただけたと思います。
参考文献