ブログ

人事担当者必見!中小企業が押さえるべきフリーランス新法のポイントと義務要件

タグ : , , , ,

2024年8月5日

中小企業の人事担当者が押さえるべきフリーランス新法のポイント、義務要件を解説

フリーランス新法と中小企業のハラスメント対策解説資料


株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。

2022年より義務化されている中小企業のハラスメント対策につきまして解説資料を提供しております。下記クリックのうえ資料請求をしていただき、御社のハラスメント対策にお役立てください。2024年11月施行フリーランス新法のハラスメント対策義務化についても解説しております。

 

 

2024年11月施行フリーランス新法とは?


2024年11月フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が施行されます。法律の目的は『フリーランスの⽅と企業などの発注事業者の間の取引の適正化』と『フリーランスの⽅の就業環境の整備』です。従前、弱い立場になりがちであったフリーランス人材が、安心して力を発揮できるようにサポートすることを目的とした法律です。

 

なお、フリーランス新法においては、違反行為があった場合、フリーランス自身が所管省庁へとその旨を申し出ることができます。違反行為があった場合は、公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣によって業務委託事業者に対し助言および指導、報告徴収および立入検査、勧告および公表、命令が行われます。法令に基づく命令に違反したり、立入検査を拒否した場合、罰則として最大で50万円の罰金が科せられます。また、業務委託側が法人である場合、法人も罰則の対象となります。

 

なお、フリーランス新法の対象となるフリーランスとは『業務委託における受託側の事業者』であり、形態が個人であれ組織であれ『従業員を使用していない』となります。

【参考】中小企業庁|フリーランスの取引に関する新しい法律が11⽉にスタート!

 

中小企業の人事担当者が押さえるべきフリーランス新法のポイント


後述しますが、フリーランス新法施行によって企業にはいくつかの義務が生じます。義務と聞くとコスト面を気にされる人事担当者もいらっしゃるでしょう。全ての企業・組織に対してハラスメント対策が義務化されたのは2022年ですが、求職者にとって”求人情報の『ハラスメント対策導入済み』記載”は大きな安心材料の1つのようです。義務対応のための必要経費という発想に留まらず、採用・定着のための投資、延いてはアウターブランディングという発想を持って運用していただきたいと感じます(参考:【安心できる職場作り】ハラスメント対策の必要性・重要性|公認心理師執筆)。

冒頭で触れた通り、生産年齢人口は今後減少の一途を辿ります。仕事(ワーク)か生活(ライフ)か二分した上で両者のバランスを取るというワーク・ライフ・バランスから、働き方の多様性を推進しあらゆる人が仕事も生活も統合するワーク・ライフ・インテグレーション(精神科産業医監修|ワークライフインテグレーションとは何か?)へと発想の移行が必要となります。

 

 

この度のフリーランス新法施行とは、1人の人間の時間や生産性を1つの企業が独占するのではなく、1人の人間の時間や生産性を企業ごとでシェアし合うということです。つまりフリーランス新法のポイントとは”業務を受託するフリーランスからいかに選ばれる委託先となるか”ということに尽きます。長らく人材の採用・定着が課題となっている中小企業は、先のハラスメント対策義務化のように、フリーランス新法義務化に係るコストはフリーランスに選ばれる企業になるための投資という発想を持つべきでしょう。

 

フリーランス新法における企業の義務要件とは?


企業は業務委託によってフリーランス人材を活用するにあたり、最大7つ最低1つの義務を負うことになります。フリーランス新法における企業の義務は、業務委託事業者(企業)の要件、契約期間に応じて異なります。

義務項目は以下の通りです。

① 書面等による取引条件の明示

② 報酬支払期日の設定・ 期日内の支払

③ 禁止行為

④ 募集情報の的確表示

⑤ 育児介護等と業務の両立に対する配慮

⑥ ハラスメント対策に係る体制整備

⑦ 中途解除等の事前予告・理由開示

①、②、③、④については、「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」などの取引条件を明確にする、期日を決めて報酬をきちんと支払う、フリーランス募集時に虚偽広告や古い情報を避ける、といった業務委託において、業務受託側であるフリーランスが不利にならないようなルールの徹底という主旨です。⑤、⑥、⑦については、育児介護をしているフリーランスに対して配慮をする、従業員と同様にハラスメント対策を導入する、中途解除は30日前に予告する、といった人事施策をイメージしていただくとよい項目です。

 

業務委託事業者要件は下記3つに分類されます。

A :従業員を使用していない(フリーランスも該当)

B:従業員を使用している

C:従業員を使用している。且つ業務委託を一定期間行う(一定期間とは“1か月ないし6か月以上”が該当)

※”従業員を使用”の定義は、概ね”雇用保険の加入要件を満たしている従業員を使用しているか”だとご理解ください

 

下表、イラストに業務委託事業者の要件(A~C)ごとの義務項目を整理しました。先述の通り、①から④についてはフリーランスが不利にならないようなルールですから契約書や募集広告を見直すといった対策で対応可能です。業務委託をする側が従業員を使用している企業・組織である場合は、業務委託の期間を問わず、ハラスメント対策が義務化されていることがポイントです。

A義務
B義務義務義務義務
C義務義務義務※1義務義務※2義務義務※2

※1:③禁止行為については1か月以上業務委託を行なう場合義務

※2:⑤、⑦については6か月以上業務委託を行なう場合義務

【参考】厚生労働省|フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ

 

 

中小企業の人事担当者様へフリーランス新法活用のポイント


2024年11月施行のフリーランス新法は”生産年齢人口減少”と”多様性と包摂(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進”といったビッグテーマへのチャレンジだと言えます。ワーク・ライフ・バランスにおいては、育児や介護といった生活要因(ライフ)によって仕事(ワーク)を諦めるしかなかった多様な人材が存在しました。今後は”ワーク・ライフ・インテグレーション発想へのアップデートを以て働き方の多様な選択肢を生み出すこと”が中小企業の経営戦略の一つとなるでしょう。

『企業はフリーランスが安心して仕事に取り組める環境を整備し、フリーランスは安心して力を発揮できる魅力的な企業を選択する』。フリーランス新法のポイントは非常にシンプルですね。フリーランス新法における義務要件はコストではありません。特に人手不足が深刻な中小企業にとっては、フリーランス人材を活用し生産性を高めるために、フリーランス新法遵守を”フリーランスに選ばれるための投資”と捉え、積極的に対応していく価値が充分にあります。また、ハラスメント対策と同様、法令遵守が企業のブランド価値を高める一助となることを理解し、フリーランスとの健全な取引を推進していくことが重要だと言えるでしょう。

 

【監修】

本山真

株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役

日本医師会認定産業医/精神保健指定医

医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長

【執筆】

久野光雄

株式会社サポートメンタルヘルス取締役副社長

公認心理師/臨床心理士

久野コラム一覧

関連記事