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タグ : ハラスメント対策 , 本山真(精神科医師・産業医) , 産業精神保健
2026年5月22日

目次
『相談窓口は設けています』
ハラスメント対策について企業のご担当者様とお話ししていると、このように伺うことがあります。
ー就業規則や社内規程を整え、相談窓口も設置している
ー必要な研修も一通り実施している
では、それで十分かというと、実務上はもう一段階、考えておきたいことがあります。それは、その窓口に、従業員が本当に相談できる状態になっているかという点です。
厚生労働省は、職場のハラスメント防止のため、事業主が方針の明確化、相談体制の整備、事実関係の迅速かつ正確な確認、再発防止措置、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止などを講ずる必要があると整理しています。
つまり、相談窓口は「設置したら終わり」の制度ではありません。従業員が安心して声を上げられ、会社がその声を適切に受け止め、必要な対応につなげられてはじめて、窓口として機能しているといえます。
社内相談窓口を設けている企業でも、実際にはほとんど相談が上がってこないことがあります。もちろん、本当に問題が起きていないのであれば、それは望ましいことです。ただ、ハラスメントの相談に関しては、相談件数が少ないことだけをもって「うちは問題がない」と判断するのは少し危うい場合があります。
従業員の立場からすると、ハラスメントについて相談することには、かなりの心理的負担があります。
例えば、次のような不安です。
ー相談したことが上司に伝わるのではないか
ー人事に話すと、評価や異動に影響するのではないか
ー自分が大げさに受け止めているだけかもしれない
ー大ごとにしたいわけではない
ー相談した後、職場で気まずくなるのではないか
こうした迷いがあると、たとえ相談窓口が社内に用意されていても、実際の相談にはつながりにくくなります。
特に中小企業では、経営者、人事担当者、管理職、従業員同士の距離が近くなりやすいですよね。これは組織の強みでもありますが、ハラスメント相談の場面では「誰に話しても、どこかでつながっているのではないか。」という不安につながることがあります。
会社としては「困ったら相談してほしい。」と思っている。けれど、従業員側は「相談した後のことが怖い。」と感じている。
このすれ違いがあると、窓口はあっても、声は上がってきません。
社内相談窓口には、もちろん大切な役割があります。
ー社内の事情を理解している
ー就業規則や人事制度との接続がしやすい
ー必要な対応を社内で進めやすい
こうした点は、社内窓口の大きな強みです。
一方で、社内窓口だけでは相談しづらい内容があることも、現実として見ておく必要があります。
例えば…
このような場面では、相談者は「まず社内に話す。」ことをためらいやすくなります。
また、相談を受ける側にも負担があります。ハラスメント相談は、単に話を聞けばよいというものではありません。
こうした判断を、社内担当者だけで抱えるのは簡単ではありません。
相談窓口は、会社にとってのリスク管理の入口でもあります。だからこそ、担当者の善意や経験だけに頼りきるのではなく、一定の手順と専門的な視点を組み込んでおくことが大切です。
外部相談窓口というと、少し身構える企業様もいらっしゃいます。
ー外部に相談されると、かえって大ごとになるのではないか
ー会社の問題を外に出すようで不安がある
ー寝た子を起こすことにならないか
そのように感じるのは自然なことだと思います。
ただ、外部相談窓口の役割は、会社と従業員を対立させることではありません。むしろ、問題が大きくなる前に、早い段階で声を受け止めるための仕組みです。
相談者にとっては、社内に直接言いにくいことを、まず外部の専門職に話せる。会社にとっては、相談内容を一定の形式で把握し、初動対応を整理しやすくなる。
この両方の意味があります。
例えば…
こうした流れがあると、社内担当者も「最初に何をすればよいのか。」が見えやすくなります。
外部相談窓口は、社内窓口を否定するものではありません。社内窓口だけでは届きにくい声を受け止め、会社の対応を支える補助線のような存在です。
今後、企業に求められるハラスメント対策はさらに広がります(関連項目:2026年10月義務化目前|“カスハラ”と“就活ハラ”はついに企業の経営課題になる)。
厚生労働省は、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されることを案内しています(参考:厚生労働省)。
これは、ハラスメント対策が「社内の人間関係」だけでは完結しなくなることを意味します。
ー顧客や取引先からの著しい迷惑行為があったとき、従業員をどのように守るのか
ー採用活動やインターンシップの場面で、求職者や学生に対する不適切な言動をどのように防ぐのか
ー現場で相談が出たとき、誰が受け止め、どこに報告し、どのように判断するのか
これらを事前に整理しておく必要があります。
カスタマーハラスメントについては、顧客等の言動が社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境が害されるものとして整理されています。また、電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれるとされています。
ここで重要なのは、制度を個別に増やし続けることではありません。
パワハラ、セクハラ、マタハラ、カスハラ、就活セクハラ。
名称は違っても、会社に求められる基本は共通しています。
この一連の流れを、社内だけで無理なく運用できるか。
あるいは、外部の相談窓口や専門家を組み合わせた方がよいか。
2026年10月に向けて、今のうちに確認しておきたいところです。
ハラスメント相談は、早い段階で会社に届くほど、対応の選択肢が残ります。反対に、相談者が我慢を重ね、退職、休職、外部機関への相談、弁護士相談などに至ってから会社が把握する場合、対応はどうしても難しくなります。
もちろん、相談が入ること自体は、会社にとって負担です。担当者も悩みます。経営者としても、できれば起きてほしくない問題だと思います。
ただし、相談がまったく上がってこない状態の方が、必ずしも安全とは限りません。
ー従業員が声を上げられないまま、職場への不信感だけが積み重なっている
ー現場では周囲も気づいているのに、誰も正式な相談として扱えない
ー人事担当者が把握したときには、すでに関係修復が難しくなっている
このような状態になる前に、相談が届く仕組みを持っておくことが、結果として会社を守ることにもつながります。
ハラスメント対策は、単にトラブルを避けるためのものではありません。従業員が安心して働ける環境を整え、管理職や人事担当者が過度に抱え込まないための仕組みでもあります。
外部相談窓口の導入を検討する前に、まずは現在の相談体制を点検してみることをおすすめします。
例えば、次のような点です。
一つでも当てはまる場合、相談窓口の設計を見直す余地があります。
株式会社サポートメンタルヘルスでは、企業ごとに専用の相談フォームを発行し、臨床心理士・公認心理師がハラスメント相談を受け付ける外部相談窓口サービスを提供しています。相談内容は報告書形式で整理し、必要に応じて弁護士連携による事実関係調査や対応判断にもつなげることができます。
ーハラスメント対策を、規程上の整備だけで終わらせたくない
ー従業員が実際に相談できる体制として整えたい
ー社内担当者だけで抱え込まない仕組みを作りたい。
そのようにお考えの企業様は、まずは現在の相談体制の点検からご相談ください。
ご相談はこちら▶【魅力的な職場づくり企業診断】ハラスメント対策対応状況チェック
【コラム監修】 本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医) 東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。 |