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タグ : ayano(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2026年5月8日

目次
わが家の2歳男児は教えたわけでもなく、1歳を過ぎたころから突然、救急車に夢中になりました。
2歳頃から電車やバスを好むようになり、「男の子は乗り物を好きになることが多い」と聞いていましたが、本当にそうなんだ…!と驚きました。
※本コラムでは、生物学的な性別に基づいて「男の子」「女の子」という表現を使用しています。あくまで統計的な傾向の説明であり、個人差が大きい点をご理解ください。
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子どもの「好き」は、活性化する脳のネットワークと報酬系(行動を動機づけるシステム)によって左右されます。刺激に対して活性化した脳部位から信号が伝わると、報酬系に加えて、感覚処理や注意の働き、経験による学習が組み合わさることで、その刺激を「好む」ようになっていきます。これが「好き」の形成です。
特に0歳から3歳頃までの時期は、まだ脳のネットワークは発達段階にあるため、興味の対象に偏りが生じやすい傾向にあります。そして脳機能の発達段階や周囲の環境による影響をうけ、好むものや遊び方も変遷していきます。
人の行動を動機づけるシステムのことで、生まれ持って備わっている機能です。乳児期はまだまだ未熟なため主に生きていくために必要な行動を動機づけています。
ー例えばミルクをもらうとおなかがいっぱいになる=満足!、抱っこしてもらうと安心する=満足!など
成長に伴い脳機能が発達してくると、この報酬系システムもより複雑化していきます。目の前の報酬に対して、我慢をしたり、選択をしたり、遅らせたり、ということが可能になっていきます。
1~2歳頃では、感覚や感情をつかさどる「感覚野」と、やる気や「楽しい!」を生み出す「報酬系」が発達してきます。そのため、簡単にいうとこの時期の「好き」は主に「感覚野」の働きと「報酬系」に支配されています。
「感覚野」のうち、どの感覚刺激に反応しやすいかは個人差があり、これが「好き」の違いに影響しています。
例えば…
音や動きに反応→車が好き
感情豊かな顔や動き→人形やヒーローが好き
そしてこの”どの感覚刺激に反応しやすいか”を分ける要因は主に以下の3つの仮説が挙げられます。
胎児の間に母体から受けたホルモン量が、脳の神経回路の発達に影響を与えることが分かっています。
例えば、胎児期にテストステロン(男性ホルモン)の影響を比較的強く受けた場合、視覚や空間処理、運動認識に関わる神経回路が発達に影響する可能性があり、その結果として、動くもの・スピードが速いもの・規則性があるものなどに対して報酬系が反応しやすくなり、車や電車、新幹線など乗り物を好みやすい傾向が示唆されています。
一方で、胎児期にエストロゲン(女性ホルモン)、およびオキシトシンの影響を比較的強く受けた場合、社会的対象(顔・人形・会話)への関心が高まりやすいと言われています。その結果、人形やぬいぐるみ、プリンセスといった対象が好まれやすくなります。ただし、1〜2歳で見られる人形遊びは「感覚的な好み」によるものです。社会性を伴う本格的なごっこ遊びは、前頭前皮質や社会脳が発達する2歳後半以降に本格化してくると言われています。
※こうした違いはあくまで平均的な傾向であり、個人差が大きいことが知られています。
生まれつき男性ホルモンであるテストステロンを有する男の子は空間処理を要するものや、因果関係のあるもの(パターンなど)の因果的理解を強化しやすく、女性ホルモンであるエストロゲンを有する女の子は社会的役割を模倣したごっこ遊び等で言語力・対人スキルを強化しやすいとされています。
MRIを用いた研究において、男性と女性では脳の構造が異なることが明らかになっています。ホルモンの影響から、男児は空間認知ネットワークの早期発達、女児は社会脳ネットワークの平均的な傾向として差が報告されていますが、個人差が非常に大きいことも強調されています。
「好き」は、その後の経験や環境により強化され、より趣向として定まってきます。近年はジェンダーレスの風潮が広まりつつあるものの、例えば、日本を含め多くの国々では、男の子向けに車や電車のおもちゃ、女の子向けに人形・おままごとセットという玩具のマーケティングが浸透しています。また保育者や周囲からの反応が、その好みを強化、固定化を強める傾向にあるとも言われています。
「好き」を左右する報酬系システムは、発達、そして経験を通して、報酬の対象と質を広げていきます。
かつては「とにかく救急車!」だったわが子。常に救急車のおもちゃを携えて、音が聞こえれば大興奮でした。2歳頃になると、電車やバスが大好きになり、2歳半頃からはディズニーのミニーマウスやリボン、スカートが「かわいい」と好むようになりました。このように「好き」が、経験や発達を通して移ろっていきます。
音がなる、光る、といった強い刺激を好みます。(面白い=感覚報酬)
▼
規則性をみつけて、動きを予測したり、名前を覚えたり、と「わかる」という感覚を好むようになります。(わかる!=学習報酬)
▼
社会的な意味付けが加わり、リボンやスカートが「かわいい」という褒め言葉であることを認識したり、周囲が笑顔になることによって、「好き」が強化されていきます。(意味がつながる=社会報酬)
また、この変遷に影響した環境的要因としては、
① 周囲の関わり方
② 接触頻度
③ 2歳前後から急激に発達する模倣・社会学習要素
(「他人がやってる=価値がある」と認識するようになり、真似をするようになります)
④ 文化的に意味づけされた報酬
(リボン=「かわいい」など)
⑤ 認知的発達要素
(言葉の理解やカテゴリー化、象徴理解など)
⑥ 気質(個人差)
(新奇性への反応や社会性)
などが挙げられます。
これらが複合的に組み合わさって、いまの「好き」が出来上がっているわけです。
「好き」は生まれつきだけで決まるものではなく、発達と経験の中で育っていくものです。「好き」の選択に優劣はありません。あくまでその子が、この世界を理解するための入口であり、この入口からどんどん世界への理解を広げていきます。RPGで最初にもらう「初期アイテム」のようなものかもしれません。そして、子供の「好き」は発達の原動力ともいわれています。好きなものを通して、興味を広げ頭を使い、そして脳のネットワークを広げていきます。
親の役割としては、好きなものをコントロールせず、共感したり、「好きなんだね」言語化したりして、「好き」の幅を広げていくといいそうですよ。
参考文献
【執筆】 先日、保育園にお迎えにいったところ、(おままごと用の)スカートを履きながら電車で遊ぶ息子なのでした…。「好き」の変化を通して、わが子がどんなふうに世界を広げていくのか、これからも楽しみに見守っていきたいと思います。
【監修】 本山真(医師) 株式会社サポートメンタルヘルス取締役社長・医療法人ラック理事長 精神保健指定医・日本医師会認定産業医 |