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フリーランス新法の理解が中小企業成長の鍵ーワークライフインテグレーション推進ー

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2024年8月19日

中小企業成長のためフリーランス新法を理解しワークライフインテグレーションを推進しましょう

限られたリソースの中で最大の成果を上げることが至上命題である中小企業だらこそ、フリーランス新法をよく理解し、フリーランス人材を活用していくべきです。本コラムでは、フリーランス新法の概要とその活用方法、フリーランス人材を活用するうえで鍵となるワークライフインテグレーションについて解説します。

 

 

日本におけるフリーランスの現状


2023年に公表された最新の総務省就業構造基本調査にて、日本におけるフリーランスの現状が初めて明らかになりました。就業構造基本調査によれば、全有業者のうち本業がフリーランスと回答したのは2,093,700人(3.1%)でした。本業がフリーランスである割合は年齢階級差・性差があり、男性において年齢階級が上昇するごとに本業がフリーランスである割合が増加します。55歳を超えると4%以上、65歳を超えると実に7%以上の男性が、フリーランスを本業にしているのです。

 

注目すべきポイントは、フリーランスを選んだ理由として「正規の職員・従業員の仕事がないから」は3.5%だったのに対し、「専門的な技能等を生かせるから」「自分の都合のよい時間に働きたいから」の回答を合わせると全体の6割を超えるという点です。つまり『フリーランスでしか働けないから仕方なく』といった消極的な選択ではなく『フリーランスだからこそ働く』といった積極的な選択をしているフリーランスが圧倒的に多い、ということです。労働人口減少社会において、中小企業が労働力を獲得する術は、単に雇用を拡大するだけではなく、働き方の多様性を推進することにあるのかもしれません。

【参考】総務省統計局|令和4年就業構造基本調査の結果

 

フリーランス新法とは


フリーランス新法は、フリーランスとして働く人の権利保護と働きやすさの向上を目的とした法律です。

  1. 【取引の公正化】フリーランス労働者とクライアントとの契約条件を明確にし、不当な契約変更や突然の契約解除を防ぐ。フリーランス労働者が適正な報酬を得られるようにし、報酬の未払いを防止する。
  2. 【就業環境整備】育児介護等との両立配慮やハラスメント対策義務化、中途解除等の事前予告を義務化し、フリーランス労働者の就業環境を向上させる。

フリーランス新法施行により、従前は、弱い立場になりがちであったフリーランスの就業環境を整えることにより、安定して働くことが可能になります。「専門的な技能等を生かしたい」「自分の都合のよい時間に働きたい」といったニーズはありつつも、フリーランスの不安定さを理由に二の足を踏まざるを得なかった労働者が、フリーランスという働き方を選択する可能性は充分にあります。フリーランス新法は、予てより日本が抱える『生産年齢人口減少』という社会的課題のソリューションになり得るかもしれません。

 

 

フリーランス新法による中小企業のメリット


フリーランス新法によって中小企業は多くのメリットを享受できる可能性があります。

フレキシブルな人材確保

フリーランス新法によりフリーランスとして働く労働者が増加する可能性があるということは、多様な人材がフリーランス市場に流入するということです。従って、新たなプロジェクトや専門知識を有する業務において、必要時、必要なだけ、必要なスキルを持った適材適所の人材を柔軟に確保できる可能性が高まります。先の調査結果の通り、フリーランスとして働く労働者の多くは「専門的な技能等を生かしたい」といったニーズを持っています。業務を委託する側にとっても、業務を受託する側にとってもwin-winな在り方だと言えます。

 

多様な働き方の拡大

新型コロナ感染症拡大により、世の中にはテレワークやワーケーションといった多様な働き方が浸透しました。働く場所の多様性が広がることで、従前であれば場所の制約により埋もれざるを得なかった人材が社会の生産性を向上させています。フリーランス労働者は「自分の都合のよい時間に働きたい」といったニーズを多く持ち合わせています。フリーランス新法施行を機に時間制約によって埋もれざるを得なかった人材が市場に流入す可能性が高まります。

 

求められるワークライフインテグレーションの推進


女性活躍を推進してきたのがワークライフバランス概念です。予てより日本における男性は、1日のうち”家事・育児・介護等に費やす時間の少なさ”が際立っていました(参考:厚生労働省|世代ごとにみた働き方と企業における対応 )。人生イコール仕事ではなく、1日を仕事(ワーク)とそれ以外の生活(ライフ)とに分けて考える。その上で、個々人・パートナー間でワークとライフのバランスを調整する。結果、男性の家事・育児・介護等に費やす時間は微増、女性の家事・育児・介護等に費やす時間は減少傾向にあります。ワークライフバランスの浸透により、女性活躍は推進されてきました。

 

ワークライフバランスにおける”ワークとライフを分断して考える”という発想は、様々なメリットがある一方で、分断して考えるからこそワークないしライフいずれかが過負荷になるとあっという間にバランスが取れなくなる、というデメリットを持ち合わせていました(例えば、育児に介護が重なった場合など、意図的に分断されたワークとライフのバランスを図ることが困難であることは想像に難くありません)。ワークライフインテグレーションは、従来のワークライフバランスの概念を超え、ワークとライフとが相互に補完し合うように統合することを目指します。つまり、ワークライフバランスがワークとライフの『調和』であるのに対し、ワークライフインテグレーションはワークとライフの『両立』だと言えます(関連項目:。精神科産業医監修|ワークライフインテグレーションとは何か?)。

 

ワークとライフを分断して考えるのではなく、例えば、ライフの合間にワークをする(ワークの合間にライフをする)、ライフにおける気づき・閃きをワークに活かす(ワークにおける気づき・閃きをライフに活かす)、ラーフにおける喜びがワークに作用する(ワークにおける喜びがライフに作用する)といった具合に、両立し相互に作用するものとして考えるわけです。先の例で言えば、ライフが過負荷になった際は、ワークで負荷を調整する(働き方を調整する)といった生活の仕方が想定できるわけです。

 

“1つの企業が1人の人間の調整されたワークの時間を活用する”という従来の考え方のみでは、中小企業が労働人口減少社会を生き抜くことは困難だと言わざるを得ません。ワークライフバランス発想と、ワークインテグレーションに基づく“1人の人間が複数の企業に対しワークの時間をシェアする”というフリーランス活用の発想とを併用していくことが競争力向上の鍵です。

 

フリーランス新法施行を機にワークライフインテグレーションを推進するには


フリーランス新法施行を機に、中小企業がワークライフインテグレーション発想を推進するためのポイントを解説します。

フリーランス活用計画を立てる

新規プロジェクトや専門性を要する業務内容に応じて、どのようなスキルセットがどれ位の期間必要になるのかについてフリーランス活用計画を立てたうえで、活用計画に基づき最適なフリーランスを募集しましょう。募集にあたっては、フリーランス労働者の契約期間、業務内容、報酬などを明確にし、透明性のある契約を結ぶことがフリーランス新法にて義務化されています。重要なポイントは、フリーランスは”リソース”であるという理解に立つことです。上記フローの組織への浸透は、フリーランス活用に留まらず、社内リソース活用につながるかもしれません。

大企業と比べてリソースに限りのある中小企業にとっては、既存のリソースを如何に活用するかという視点が重要です。業務内容を明確にしたうえで、必要なスキルや必要な期間を明確にして指示を出す。一連の流れが習慣化すれば、社内リソースである従業員の”ワーク”を効率的に活用できるでしょう。結果、従業員に対するムリ・ムダ・ムラが是正され、従業員自身の”ワークとライフの両立”を推進する意識が醸成されるかもしれません。

 

フリーランスの就業環境を整える

フリーランス新法によって、フリーランスに対する”育児介護等との両立配慮”、”ハラスメント対策”が義務化となります。これは、フリーランスの就業環境を整え働きやすさを向上させるためです。ワークライフインテグレーション時代においては、労働可能な年齢であれば全ての人が人材たり得ます。最適なフリーランスを獲得するためには、他企業と比較し働きやすい環境、つまりは“フリーランスにとってワークとライフを両立・統合しやすい環境”が求められます。

両立・統合の鍵となるのは就業する場所や時間の柔軟性です。フリーランスにとって同様の専門性を求められる業務を受託するのであれば、場所や時間が固定される業務委託よりも、裁量性の高い業務委託を選択するでしょう。”就業する場所や時間の柔軟性”に関するノウハウについても、従業員へと還元することが可能です。ワークライフインテグレーション時代においては、従業員に対してもワークとライフの両立・統合支援を推進していくべきです。就業場所や就業時間について、従業員の生活事情(ライフ)に合わせて柔軟に対応する仕組みは、これからの中小企業にマストだと言えるかもしれません。

また、従業員のワークライフインテグレーション推進のためには、日頃のコミュニケーションが欠かせません。生活状況の変化、変化に伴う職場への要望など早期に把握できる仕組みを整えましょう。社内リソースで対応困難な場合は、フリーランス新法施行を機に外部相談窓口設置を検討してもよいかもしれません。

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に”働く人を応援する心療内科”をコンセプトとして宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。医療の垣根を超えて日本の中小企業を応援するため、2019年株式会社サポートメンタルヘルスを設立。

 

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