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精神科医監修|認知症とは?加齢によるもの忘れとの違い、症状、種類を解説

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2023年6月16日

最終更新日 2024年8月2日

認知症とは?加齢によるもの忘れとの違い、症状、種類を精神科医監修で解説

健康で長生きしたい、リタイアしたら第2の人生を謳歌したい、そのように考えている人は多いと思います。もちろん心身ともに元気で、活動的な方もたくさんいらっしゃるでしょう。しかしその一方で、少子高齢化が進む現代の日本では、高齢者数の増加に伴い認知症患者数も増加傾向にあると言われています。2017年の高齢者白書によると、2020年に65歳以上の高齢者人口の約15%だった認知症患者の割合は2025年には約18.5%、およそ5.4人に1人が認知症になると予測されています。

【参考】認知症施策|厚生労働省

 

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認知症とは?加齢によるもの忘れとの違い


そもそも認知症とはどのようなものなのでしょうか。かつては「痴呆」と呼ばれていた認知症。差別的であるという意見を踏まえ、2004年から現在の呼び方に変わりましたが、実は医学的な病名ではなく症候群として扱われています。

 

定義としては、一旦発達した知的機能が低下して社会生活や職業生活に支障をきたす状態、とされており、アメリカ精神医学会精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)による診断基準は、記憶障害のほかに、失語失行失認実行機能の障害(これらの障害についてはのちほど下部で説明します。)が1つ以上加わり、その結果、社会生活上あるいは職業上に明らかに支障をきたしており、以前の水準から著しく低下していること、とされています。

 

原因はいくつかあり、老化に伴う廃用性の記憶低下の他、脳梗塞など脳血管障害によるものもあり、加齢によるもの忘れとは異なります。

 

約束の時間を忘れたり、人や物の名前が出てこなかったりするのはいわゆるもの忘れです。日常生活で困ることはあるかもしれませんが、深刻な支障をきたすことはありません。一方で、認知症は約束したこと自体を忘れてしまい、さらには忘れたという自覚もない状態です。初期の認知症はもの忘れとの区別が難しいため、ご自身や身近な人に認知症の不安を感じた場合にはかかりつけ医やもの忘れ外来などへの受診、相談がおすすめです。

 

認知症の症状


認知症の症状は主に中核症状とBPSDと呼ばれる周辺症状(行動・心理症状)に分けられます。代表的な中核症状には以下のようなものがあります。

 

 

  • 記憶障害

もの忘れが増えたり新しいことを覚えられなくなったりします。

古いことは覚えているのに最近のことは覚えていないということが多く、症状が進行すると古いことも忘れてしまいます。

  • 見当識障害

日にち、曜日、時間、季節などが分からなくなり、自分がおかれている現状も正しく把握できません。

  • 実行機能障害

物事を論理的に考える、計画を立てて実行するといったことが難しくなります。

予想外の出来事に対して適切な方法で対処することもできなくなります。

  • 失語

言葉が出にくくなり、言い間違いも多くなります。

考えをうまく言葉にできない状態を運動性失語、聞いているのに相手の話を理解できない状態を感覚性失語と言います。

  • 失認

感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識あるいは同定することができない状態で、道に迷ったり左右が分からなくなったりします。

  • 失行

運動機能が損なわれていないにもかかわらず、動作を遂行することができない状態です。

 

周辺症状(行動・心理症状)は生活環境、人間関係、元々の性格など様々な要因によって現れます。具体的には、不安、焦燥、幻覚、妄想、徘徊などがみられ、中には介護拒否や介護者に対する暴言・暴力として出現する場合もあります。

 

認知症の種類


さて、認知症の症状については少し理解が進んだかと思いますが、実は認知症自体にも種類があり、これらの症状が出現する程度もタイプによって異なります。では、どのようなタイプがあるのかをみてみましょう。

 

 

まず、アルツハイマー型

記憶にかかわる海馬の萎縮が原因となるため緩やかなもの忘れから始まります。脳の異常で起こる手足のしびれや麻痺、言語障害などが見られないことも特徴です。認知症全体の約7割を占めており、認知症と聞いて一番にイメージされるのはこの型ではないでしょうか。

 

次に、血管性

脳の血管が詰まったり破れたりして起こる認知症です。高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病が発症の一因となるため、危険因子をもっている人は注意が必要です。かつてはアルツハイマー型より患者数が多いとされていましたが、近年では治療や予防が進み、病状も軽症化していることから、患者数は減少傾向にあります。

 

そして、レヴィ小体型

幻覚とパーキンソン病に似た小刻みな歩行を特徴としています。その歩行から転倒事故が起こりやすく「転ぶ認知症」と称されることもあり、転倒→骨折→寝たきりということも珍しくありません。女性よりも男性の発症率の方が約2倍高いと言われています。

 

最後は、前頭側頭葉型

全体に占める割合は約1%ですが、認知症の中で唯一難病として指定されています。物事を考え、判断する前頭葉と、言語・聴覚・記憶にかかわる側頭葉の萎縮を原因としているため、人格が変わったり社会性の欠如した行動が目立ったりすることがあります。65歳未満で発症する若年性認知症ではこの型が多いとされています。

 

他にも患者数が少ない認知症がいくつか存在します。そのような認知症の中には、血管性のように原因となる病気が明らかなものもあります。原因となる病気をきちんとコントロールすることで症状を悪化させずに済んだり、気持ちの面などの周辺症状に対する治療やケアを受けたりすることは有効です。

 

少し前、アルツハイマー型に対する新薬も話題になっていましたが、残念ながら現時点ではまだ根本的な治療薬は認められておらず、進行を遅らせる薬がメインです。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

加齢ともに切り離すことができない認知症。

 

医療の進歩に伴い平均寿命が長くなっている現代において、誰にでも起こりうる身近なものであると理解した上で、栄養バランスの良い食事の摂取、定期的な運動、適度な人付き合いや脳トレなどによる予防も心がけましょう。

ふ~みん記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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